10年の長きに渡りシリーズ化されてきた『イップ・マンシリーズ』。
実在する詠春拳の達人“イップ・マン”を主役にした本シリーズの最終章。シリーズを通して主演を務めたアクション俳優・ドニー・イェンを「宇宙最強の男」と呼ばれるまでに押し上げた、映画『イップ・マン 完結』が2020年5月8日(金)に日本で公開されます!
本記事では前半、「イップ・マン……?」という方が最新作を楽しめるように、基礎知識をご紹介。そして後半では、映画『イップ・マン 完結』のネタバレをしていきます!
カンフーファンから信望厚い、今シリーズ。しかしながら「映画『イップ・マン 完結』は蛇足では?」という声もちらほら。その意見、筆者は「ちょっと待った!」します!
映画【イップ・マン 完結】の予告 今回も熱い!!
ブルース・リーの実在した師匠である「イップ・マン」。彼の最期を描いたのが本作、『イップ・マン 完結』です。
これまでと違いストーリーは、ほぼフィクション。しかも突然舞台がアメリカに移り、これまでの人気キャラクターも登場しないということから「物足りない!」という声が上がっているようなのです。
イップ・マンって誰なの?
本作のモデルになったイップ・マンは、1893年に生まれ、中国武術の一つである「詠春拳」を会得した武術家です。300年以上の歴史がある詠春拳。今でこそハリウッドアクションに取り入れられたりと随分拓けてきていますが、イップ・マンが生きた時代は「詠春拳は中国人のもの」という保守派の主張が強く、普及は妨げられていました。
たった7歳で(!)詠春拳の師範になったイップ・マン。
詠春拳を世界的に知らしめたと言われているブルース・リーの師匠が彼、イップマンなのです。実は争いを好まない穏やかな性格で、「武術は喧嘩の道具ではない」といつも語っていたのだそう……。
映画【イップ・マン】シリーズって?
『イップ・マン』シリーズは、中国に実在した拳法家のイップ・マンを主人公にしたカンフーアクション映画。これまでに『イップ・マン 序章』、『イップ・マン 葉問』、『イップ・マン 伝承』の3作品が公開されています。
「イップマン序章」を観た。
ずっと観たくてやっと観れた!!なんというかアクションが美しい。前半は一切の無駄がない華麗なアクション、後半になって殺気がこもるとまるで見え方が変わってくる。こんなにアクションで演じ分けの出来る人初めて観た。
アクション最高峰!!— 井葉 吉伸 (@iha0130) March 27, 2020
特にシリーズ4部作の第一弾の『イップ・マン 序章』。世界的にヒットした映画ですが、それもそのはず。ドニー・イェン演じるイップ・マン、まさしく『座頭市の勝新太郎の殺陣』のような凄み。「すげえもん見ちゃったな……」と、ありきたりですが “感動”しちゃうんですよ……。
後半に詳しくネタバレしますが、今作で描かれるのは死期の近づいたイップ・マン。期待のアクションは健在なのでしょうか?
映画【イップ・マン 完結】の登場人物とキャストを紹介!
主役以外は一新された映画『イップ・マン 完結』のキャスト陣。そのほとんどが俳優兼、格闘家という武闘派揃い!そして “ブルース・リー役”は、もちろんあの人……!
イップ・マン “葉問”(ドニー・イェン)
詠春拳の達人であるイップ・マン。
シリーズ前作では最愛の妻を亡くしました。今作では、愛弟子のブルース・リーの申し出で、アメリカ・サンフランシスコに渡ります。
“ワン・ゾンホア”(ウー・ユエ)
移民3世であり、太極拳の達人。アメリカで人種差別を受け続けてきたというバックボーンから、海外に移住した中国人を助ける団体を設立し、会長を務めています。
団体には「外国人に中国武術を教えてはいけない」という掟があり、それを破っているブルース・リーと対立関係に。そして、リーの師匠であるイップ・マンとも敵対することになります。保守派ですね。でも、彼はずっと差別されてきたわけで……、物語の障害ではあるけど、決して悪人ではないようです。
“ブルース・リー”(チャン・クォックワン)
イップ・マンの愛弟子。そして中国武術をアメリカで積極的に広めているブルース・リー。
今作では、「国際空手選手権」に師匠であるイップ・マンを招待。これがイップ・マンが渡米するきっかけになります。
“ハートマン・ウー”(ヴァネス・ウー)
中国系アメリカ人の青年。海兵隊に所属し、ブルース・リーが英語で出版した本がきっかけで中国武術を始めます。ブルース・リーの弟子になった彼は、「中国武術を海兵隊の訓練にも取り入れたい」と動きます。しかしこの行動、相手にされないどころか、大きな争いの火種になってしまうのです……。
“バートン・ゲッデズ”(スコット・アドキンス)
白人至上主義者の海兵隊員。一等軍曹であり教官でもある彼は、ハートマンの奮闘を権力で妨害します。
しかも、中国の武術家を徹底的に潰すために、チャイナタウンに刺客を送り込みます。こんな喧嘩野郎、イップマンが黙って見逃すわけがありませんね……!
以下ネタバレ注意!映画【イップ・マン 完結】の出来栄えは有終の美?それとも……。
イップ・マンという、実在するカンフーレジェンドの最期を描く今作『イップ・マン 完結』。観る側のハードルがかなり上がっているのは間違い無いでしょう。そんな中、中国VSアメリカというベタな構図、イップ・マンがやっつける!というわかりやすいヒーロー展開を、「幼稚」と評するウォッチャーもちらほら。
さらに今作、イップ・マンの老い、そして病がストーリーの要になっていることから、「これまでのシリーズに比べて、アクションが軽い!」というブーイングも聞こえてきます。でも、こんな方もいるんですよ。
というわけで、
「イップマン 完結」
のプレス試写にお邪魔してきました!最高オブ最高!今年のベスト確定!5/8(金)公開予定! pic.twitter.com/fSgJALW2zV
— NZ2.0@エヌゼット (@nz20_u1) March 27, 2020
イップ・マンはね、今回文字通り「命をかけている」のです。ネタバレしていきますね!
イップ・マンいきなり渡米!今作の舞台はアメリカ
1964年、最愛の妻・ウィンシンを亡くしたイップ・マン。彼自身も癌宣告を受けます。
愛弟子であるブルース・リーに招待された「国際空手選手権」のため、イップ・マンはアメリカ・サンフランシスコに渡ることに……。
サンフランシスコにおけるカンフーの実情を知るイップ・マン
イップ・マンはサンフランシスコのチャイナタウンで、中国人の武闘家たちと交流します。しかし彼ら、ブルース・リーの師匠であるイップ・マンに強く反発するのです。
実はブルース・リー、アメリカ人にも中国武闘を広める活動をしており、ほとんどの中国人による保守派から掟破りであると批判されていました。当時ブルース・リーは、アメリカ人のためにカンフーの教室を開いたり、英語でカンフーの本を執筆していたんですね……。
中国とアメリカの深い溝。それはカンフーの発展を阻害していた!
サンフランシスコの中国人コミュニティーがいかに閉鎖的かを知ったイップ・マン。「武闘は誰にでも平等に学ぶ権利がある」と考えるイップ・マンは、愛弟子の肩を持ちます。
そして内情を知るうちに、アメリカ社会による中国人への差別を実感するイップ・マン。中国人たちがアメリカ人に中国武術を教えたく無い理由には、長い間虐げられてきたという背景があったのです。
中国人差別が根付いてしまっているんですね。さらに、サンフランシスコで武闘といえば「空手」。カンフーコミュニティーと空手コミュニティーは対立し、ますます中国武闘は閉鎖的に、武闘家界隈は喧嘩っぽい雰囲気になっていくわけです……。
癌が蝕んでいく体、残された時間で何ができるのかイップ・マンは考えます。
突然の “天下一武闘会”!? 「空手とカンフー」でデュエル!
アメリカの海兵隊に所属する、中国系アメリカ人のハートマン。彼はブルース・リーに師事していて、海兵隊の訓練にもカンフーを取り入れることを提案します。
しかし、上官のバートンは白人至上主義者。すでに海兵隊に浸透している空手に比べて「カンフーなんてフェイク」と一蹴。諦めないハートマンを疎ましく思ったバートンは、空手の師範とハートマンを戦わせます。そして、負けてしまうハートマン……。
さらにバートンは、チャイナタウンのカンフーコミュニティーも丸ごと潰そうと、カンフーのイベントで攻撃を仕掛けます。負けてもなお上層部に掛け合っていくハートマンに、バートンは完全にブチギレてしまったのです。もうただの喧嘩です。
映画【イップ・マン 完結】はカンフーアクション版『生きる』!
カンフーイベントに送り込まれた空手の達人達。バートンの隠し玉である達人達によって、カンフーマスター達は次々倒されていきます。
最後に決意したように歩み出るイップ・マン。喧嘩はダメなんです。彼は静かに怒っています。日に日に弱る、病んだ身体。もう思うようには動かないかもしれないけれど、武闘の威厳をイップマンが守る……!
筆者、これ黒澤明監督の映画『生きる』に近いものを感じました。「全盛期より鈍〜い!ダサ〜い!」って、そんなのないですよ。痛めつけられた同胞とか、自分の人生を豊かにしてくれたカンフーのためにボロボロになっても戦うわけです。もうすぐ死ぬから、自分にできることをするわけです。
ちゃんと「かっこいいの最期」まで映画にしてくれたんです。彼の勇姿を観ましょうよ……、映画『イップ・マン 完結』は、2020年5月8日公開です!