“エジソンはエライ人、そんなの常識” ですよね。しかし当時、世紀の発明の裏に熾烈なビジネスバトルが繰り広げられていたことはご存知でしょうか。今回紹介する映画『エジソンズ・ゲーム』は、偉大な発明家・エジソンとライバル実業家・ジョージによって、実際に起きた闘争 泥仕合を描いた実録映画。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で日本での公開が延期、延期後の公開も見合わせになってしまった今作。
本記事では、すでに海外からのレビューが続々寄せられている、映画『エジソンズ・ゲーム』のストーリーをネタバレ付きで解説、さらに作品の見どころも紹介していきます!
非凡な発明家の「あまりにも人っぽい姿」に、あなたも心臓をキュッと掴まれる……?
映画『エジソンズ・ゲーム』の予告動画がこちら!
映画『エジソンズ・ゲーム』で繰り広げられる、電力送電システムをめぐる熾烈な戦い。これまで社会に存在しなかったシステムを新たに創設するわけですから、特許権を手に入れれば莫大な報酬が手に入ります。
ただ彼らの場合、心底求めているのは金銭ではなく、「俺の発明の方がみんな喜ぶもん!」という、発明家の誇りだったりもするわけで……!
発明家VS実業家!! 新時代を賭けたビジネスバトル!
本作の原題は、『The Current War(電流戦争)』。邦題を見るとエジソンの伝記のような印象ですが、蓋を開けてみるとまさしく戦争。
天才発明家であるエジソンが提唱する「直流方式」。対して「交流方式」で電力を供給するべきだと主張するのは、発明家兼、優秀な実業家でもあるジョージ・ウェスティングハウス。両陣営ともに、「電気を世に広めたい」という願いは同じなのですが、過程が異なるために大喧嘩。
「さすがに演出だろ」と思うような展開も、史実に基づいている今作。天才たちによる過激な足の引っ張り合いに、もう目が離せないのです。
映画『エジソンズ・ゲーム』の登場人物を予習!
『 #エジソンズゲーム 』試写。ついに4/3に日本公開。エジソンはあまりにも有名だけど彼のこともウェスティングハウスやテスラについても知らない事が多く勉強になった。何よりベネディクト・カンバーバッチ、マイケル・シャノン、ニコラス・ホルト、トム・ホランドと大好きな俳優たちの出演が嬉しい!
— 清水久美子 (@KumikoShimizuWP) February 17, 2020
今作『エジソンズ・ゲーム』が堅い伝記映画ではないこと、薄々勘付いてきた方も多いのではないでしょうか。ストーリーのネタバレに移る前に、今作のメインキャストを紹介していきます!
トーマス・エジソン(ベネディクト・カンバーバッチ)
子供でも知っている天才発明家、トーマス・エジソン。“天才” と呼ばれ知られていますが、実際の彼は「何千、何万回も実験して必ず成功させる」いわば「努力の天才タイプ」の発明家。ちょっと人格に問題があったと言われていますが、はてさて……。
電気の送電方式として、自ら考案した「直流方式」をゴリ押しし、もう一方の「交流方式」を徹底的に否定します。
演じるのは俳優ベネディクト・カンバーバッチ。彼、大得意の理屈っぽい役どころ。
ジョージ・ウェスティングハウス(マイケル・シャノン)
エジソンと送電システムを巡って対立することになるのが、実業家でもあるジョージ・ウェスティングハウス。彼は優秀な発明家でもあり、当時の鉄道に採用された“空気ブレーキ” の生みの親でもあります。
演じるのは、マイケル・シャノン。悪役が得意な俳優さんで、今回も主人公と対立する役どころ。では悪いやつなのかと思えば、そういうわけでもないようで……?
ニコラ・テスラ(ニコラス・ホルト)
天才数学者、ニコラ・テスラ!実際のテスラは、頭の中の計算で理論を作り上げてしまえる「脳が天才タイプ」。粘り勝ちのエジソンとは対照的で、「自分の頭の中で出来たから、実際できるはずだよ」という感じで、多くの発明を打ち立てた人物。
送電システムの闘争では、ジョージが提唱する「交流方式」側を支持。ジョージと手を組んで、交流方式の利点をアピールします。はい、すでに2対1!これは、手強い!
映画『エジソンズ・ゲーム』のストーリーをネタバレ!
登場人物の紹介が済んだところで、いよいよ映画『エジソンズ・ゲーム』のストーリーをネタバレ付きで解説していきます!
日本での公開が延期された今作。アクション要素は全くありませんが、ぜひスクリーンで観たい「ド迫力バトル」なのです!
電気が生まれて世の中が変わり始めた19世紀
舞台は19世紀のアメリカ。すでに白熱電球を事業化させたエジソンは、社会に最も認められている発明家でした。
効率的な送電方法を提唱するジョージ。「横槍入れんな!」とエジソンが激怒
電気の便利さを知った世の中の、次の課題は「電力を送電する為のシステム」。エジソンは直流によって送電する方法がベストと考えていました。ところが、そんなエジソンにライバルが……。
発明家であり、優秀な実業家でもあるジョージ・ウェスティングハウス。彼は器の大きな人格者として知られていて、実際そうでした。ジョージは、「交流による送電の方が明らかに効率的で経済的」と提唱します。そしてこの方式、実際直流よりも優れた方式だったのです……。
ニコラ・テスラも反論!実はエジソンとは因縁が……
中心人物たちと同時期を生きた発明家、ニコラ・テスラ。彼も、ジョージが提唱する「交流送電」を支持します。
実はテスラ、かつてエジソンに憧れてエジソンの会社に入社した経緯がありました。エジソンはテスラに、交流の電源で直流を稼働させることができたら報酬を払うと持ちかけます。そこで、天才テスラ。交流送電が優位であることを、エジソンの目の前で証明してしまいます。それを見たエジソン、「さっきのは冗談だった」と報酬を支払わず、その対応に不信感を抱いたテスラは、エジソンの会社を退社していたのです。
あれ……エジソン?そうなんです、エジソンは偉大な発明家。しかし彼の性格は、かなり難ありだったのです!基本的に、誰に対しても態度が悪いエジソン。人格者のジョージと、若き天才テスラと戦うには少々 分が悪い……!
送電コストを抑えようとするエジソン。でもうまくいかない!
直流送電よりも交流送電の方が、コストがかからないことをアピールするジョージ。「電気を普及させる」という目的において、低コストな方が良いに決まっていますよね。追い詰められたエジソンは、自分の提唱した直流式のコストも抑えようと奮闘します。
しかし、うまくいかない……。ジョージは、同じ発明家であるエジソンに歩み寄ります。しかしエジソン、断固拒否!すっかり「オマエ、テキ」状態です。
「交流送電をこき下ろす」方向にシフトするエジソン!
着々と市民の理解を得ていくジョージ。彼は交流送電の実演会を成功させます。そのニュースを見たエジソン、激怒!
それで何をしたかと思えばエジソン、「交流送電は危険、人を殺す」とネガティブキャンペーンを始めたのです!さらになんと、実際に交流で人が亡くなったという事実は無いというのですから、呆れます。まさか、エジソンに呆れる日が来るとは…。
両者を襲う悲劇!それでもネガキャンは止まらない……
エジソンによる激しいネガキャンに耐えてきた、理性の男・ジョージ。彼は実験中の事故によって、親友を亡くしてしまいます。それをネタに、エジソンのネガキャンはさらにエスカレート!今のところ、エジソン最低です!
しかし、同時期にエジソンは最愛の妻と死別。さらに送電システムの開発資金が底をつきます。彼は資金を集めるために、望んでいない発明を手がけるという苦渋の選択をすることになるのです。エジソンが開発したのは、死刑執行用の電気椅子でした。
「でもおまえ、電気椅子作ったよな」ジョージ、堪え兼ねて反撃!
これまで、根も葉もないネガキャンに耐え続けてきたジョージも、この事実は見逃しませんでした。エジソンが電気椅子を発明したことをマスコミに暴露。エジソンからの攻撃にも「よりよい世の中を作りたい」と落ち着いた対応をしてきたジョージの初めての、そして会心の一撃でした。
映画『エジソンズ・ゲーム』は登場人物、全員善人!?
これまでのあらすじ、皆さんはどう読んだでしょうか。発明家たちの「足の引っ張り合い」「粗探し」「ドロ仕合」。
しかしエジソン、直流送電が安全だと信じて、この方法を推奨していました。電気椅子の開発に多額の報酬を提示されても、崖っぷちに陥るまでは断固拒否しています。
試写会で『 #エジソンズゲーム 』観てきました。誰もが知るエジソンのあまり知られていない姿が描かれていて面白かった。130年前に起きた、今当たり前に享受している電気が世の中に広まる事になる10年間の電流戦争。モノづくりをする者としての信念と信念のぶつかり合いカッコ良かった!@FansVoiceJP pic.twitter.com/sqNW5jwiDH
— れんこんメリケンサック (@Renc_on) March 9, 2020
さらに、エジソンに子供が懐いているシーンなんかで、彼の違った側面を見たという方もちらほら。
『#エジソンズ・ゲーム』試写会。直流のエジソン・交流のウェスティングハウスによるドロドロの電流戦争を想像してたら、人間味のある描写もされてて嫌いになれないこの二人。
もしテスラも含めた天才三人が、共に電力システムの構築してたら今の社会は全然違ってたかもしれない#エジソンズゲーム pic.twitter.com/oxDkOnhTyh— いちごま (@ichigoma0226) March 9, 2020
一方のジョージの理論は優秀で、多くの人に支持されましたが「勝つぜ!」というマインドで発明に携わっていたわけでは無い様子。だからこそ、途中エジソンに歩み寄る姿勢を見せます。
そして決戦の地、シカゴ万博へ……
送電システムを巡って争う二人に訪れた機会、それはシカゴ万博でのプレゼンでした。もしここで支持を得られれば、採用、さらに世界中に「電気の父」として名を知らしめることができます。まさに「決戦」です。
結果を知らせる電話がお互いの元にかかってきます。結果を見守る万博会場の民衆たち……。長きに渡る電流戦争が終わり、「勝者」と「敗者」に分けられるのです。
電流戦争に勝利したのは、ジョージの提唱する交流送電!!そして、結果発表後、万博の会場でエジソンとジョージは会話を交わします……。電流戦争を締めくくる二人の天才の会話。一体どんな内容なのか、気になりますね!
ちなみにこの後、映写機を開発したのはエジソン。現在でも使用されている35mmフィルムを確立させた彼は、「映画の父」と呼ばれています。