ショーシャンクの空に
映画ファンならそのタイトルを一度は聞いたことがあるのではないでしょうか?
この映画は1994年の作品で、20年以上前のものでありますが、今なお多くの人々の心に残る名作映画として現在も親しまれています。しかし、公開当時の興行収入は伸び悩み、アカデミー賞もノミネートのみで受賞した賞がないという非常に地味なものでした。
その後の映画ファンの評価で徐々に人気を博してきたという非常に稀な映画です。
今回はそんな名作映画「ショーシャンクの空に」についてあらすじと名作と言われる理由について書いていきます。
あらすじ
優秀な銀行員だったアンディは、妻とその愛人を殺害した罪で逮捕されてしまいます。
しかし、実際には殺害は試みたものの、直前で断念し銃を捨ててしまいます。何者かが殺害した冤罪だと裁判で訴えますが、判決は終身刑。
送られた先はショーシャンク刑務所でした。そこでは銀行員時代とは全く対照的な屈辱に耐える日々が続きます。
そんな日々の中で、刑務所の外から物品を非正規のルートで調達する調達屋のレッドとアンディは親友となります。
アンディはレッドに、鉱物収集の趣味のためにロックハンマーを調達してもらいます。これが後に大きな役割を果たすことになります。
その後、アンディは銀行員時代の能力を生かし、刑務官の資産運用やノートン所長から刑務所の経理などの仕事を任され、刑務官たちからも一目置かれるようになります。
次第にノートン所長が私服を肥やすために、経理上の裏金を作っていることに気づきます。
そんな折に、新しくショーシャンク刑務所に入ってきたトミーが、自分の冤罪事件の犯人を知っているということを話します。
トミーはアンディから勉強を教えてもらったりするなど、心の触れ合いを重ねていきますが、アンディがトミーの証言を元に自分の裁判の再審請求をするというと、ノートン所長が自分の不正が明るみに出ることを恐れ、トミーが脱獄を図ったという理由で射殺してしまいます。しかし実際にはトミーは脱獄など図っていません。
そんな失意のどん底にいるアンディを心配したレッドですが、ある日の点呼の時に、アンディがいなくなっていることに気づきます。
レッドに調達してもらったロックハンマーを使って、脱獄を図っていました。
同時に、匿名でノートン所長の刑務所の不正を新聞社宛に告発をしていました。不正を知られたノートン所長は拳銃による自殺を図り死亡します。
その後、アンディは脱獄し、メキシコに逃亡します。
レッドはその後、長年望んでいた仮釈放を実現し、メキシコにいるアンディのところへ向かう所で物語が終わります。
冤罪事件という人生のどん底から始まる
「冤罪事件で終身刑となる」という誰が見ても人生のどん底から物語が始まります。
若くして銀行の副頭取にまで出世しているということがその落差の激しさを物語っています。ここから始まるのは、これ以上落ちるところがないということでしょう。
レッドの語りで物語が進行する
レッド(モーガン・フリーマン)の優しい語りで物語が回想録のように進んでいきます。やはり名優の語りはついつい聞き入ってしまいます。
悲しいサイドストーリー
ショーシャンク刑務所には50年も服役している図書係のブルックスがいます。
彼に、仮釈放の許可が出たのですが、ブルックスは断ろうとします。しかしアンディに説得され仮釈放を受け入れるのですが、その後に塀の外の生活に馴染むことができずに首つり自殺をしてしまうというものです。死の間際にアンディトレッドに送られた感謝の手紙が現実の悲しさと、きちんと刑を全うした上での仮釈放なのに、なぜこのような結果にならなければならなかったのかと悔やみます。
主要キャスト
物語は、主人公のアンディと親友のレッドを軸に展開していきます。
アンディ/キャスト:ティム・ロビンズ
若くして銀行の副頭取となった優秀な銀行員。しかし、冤罪事件で終身刑を受け、ショーシャンク刑務所に収監される。
レッド/キャスト:モーガン・フリーマン
ショーシャンク刑務所で刑務所の外から刑務官に隠れて、タバコなどの刑務所内では入手できないものを調達する「調達屋」。アンディのよき理解者となり、終身刑で刑務所に40年いることから、目立ったマネはするなとアンディを咎める。
ノートン所長/キャスト:ボブ・ガントン
アンディが元銀行の副頭取で、刑務官たちの資産運用などにアドバイスをしているのを知り、刑務所の経理を任せるようになる。しかし、その本当の目的は経費を流用し、私服を肥やすためにアンディを利用するためだった。受刑者と刑務所所長という立場を利用して悪事を働く本作品の悪役。
トミー/キャスト:ギル・ベローズ
アンディが服役中に入所してくる若い受刑者。前科があり、以前の刑務所でアンディの事件の真犯人に会ったと話す。その証言を元にアンディが再審請求を行おうとするが、ノートン所長により、脱獄を理由に殺害されてしまう。
アンディが勉強を教えたりして、高卒の資格を取るなど頑張り屋の一面もあり、殺害された直後はアンディも自分の運命を恨み、自暴自棄となる。
ブルックス/キャスト:マーク・ロルストン
ショーシャンク刑務所に50年服役している模範囚。
図書係として仕事にまじめに取り組み、温厚な性格だが、仮釈放をされた後に塀の外の生活に馴染めずに首つり自殺をしてしまう。
名作映画と言われる理由を独自に検証
「ショーシャンクの空に」はよくヒューマンドラマの名作と言われることがあります。
映画ファンであれば、視聴したことはなくても一度はそのタイトルを耳にしたことがあるといわれているぐらい有名な作品です。しかし、公開当初を興行的にも成功したとは言い難いこの作品はなぜ、ここまで時を超えて人々に愛されるのでしょうか?
人生のどん底から這い上がる物語
アンディは、冤罪事件で逮捕収監される前は、若くして銀行の副頭取にまで上り詰めた出世頭でした。
しかし、突然の冤罪、終身刑と人生のどん底に突き落とされます。
その中で、アンディも今までの人生では経験しなかったであろう苦難が訪れることになります。
アンディ以外の受刑者のレッドやトミーといった最愛の仲間にも出会うことができました。どん底の人生を味わう前にはこうした人たちとの交流はまずなかったでしょう。
さらに、優秀であるがゆえにノートン所長による不正に協力させられ、自分の運命を恨むことにもなります。
しかし、アンディは希望を捨てることなく、脱獄への計画を水面下で遂行していきます。最後には、レッドも助け、とても爽快なハッピーエンドとなります。
冤罪であっても、脱獄は決して許されることではありません。しかし、これは単に刑務所という場所を超越した実生活にも通じる、どん底から這い上がる物語となっています。
人生の中で、どん底を経験することは避けては通れません。しかし、そこで逃げずに正しいことを行っていれば、必ず神は見捨てないという応援メッセージが含まれています。
実生活でも「ノートン所長」は存在する
本作品の悪役でもあるノートン所長は、受刑者を虫けらのように扱うひどい人間性の人物です。自分の利益のためにアンディを利用し、何の罪もないトミーを自分の不正が明るみに出るのを防ぐために殺害します。
ここまでひどくなくても、実生活においてノートン所長のような人物に心当たりがある人も多いのではと思います。
映画でも最終的には新聞社に不正を告発され、拳銃自殺に追い込まれてしまいますが、アンディはここに関しては正しい方法で不正を暴露しています。
実生活においてのノートン所長にも、なんなんだ、許せないと思う感情が出てくると思いますが、こうした相手にも淡々と反撃する機会を待って、機が熟した時に正しい方法で反撃をするということが正しい方法なのではということができるでしょう。
「ショーシャンクの空」には人生における指南がいくつも入っています。
塀の中の生活≒会社員、学生生活??
刑務所の中の話として展開していきますが、実際に刑務所の中だけにとどまらない普遍性を感じることがこの映画の魅力でもあります。
例えば、冤罪事件で収監されるアンディですが、望まない就職や進学で希望ではない会社や学校に入るということも同じような境遇を感じるのではないでしょうか?
映画の中でもレッドが回想します。
受刑者は最初、塀を嫌い必死に外に出ようとする。
しかし、塀の中が楽だと分かると、塀に頼るようになる。施設慣れというやつだ。
こうした心境は、最初は会社員時代に独立したい、起業したい、卒業して自由になりたいという気持ちもありますが、実際に自由になってしまうとその厳しさを実感します。
そんな状況が分かると、会社や学校を頼るようになります。
これは人間であればだれもが一度は経験する気持ちではないかと思います。
さらにブルックスのように長年、刑務所にいて仮釈放されたとしても、塀の外の生活に馴染めずに命を落としてしまうということも、定年後に会社を退職しても暇を持て余してしまうという会社員生活の末路にも思えてしまいます。
いろいろと実生活とリンクして考えさせられる内容が秀逸です。
音楽と希望は誰にも奪えないものだ
有名なワンシーンの中に、アンディが刑務所に寄付された品の中に「フィガロの結婚」のレコードがあることに気づき、所内放送で勝手に流して、懲罰房に送られるというシーンがあります。
レッドにそんな馬鹿なことをしたのはなぜか?と尋ねられたアンディは「音楽と希望は誰にも奪えないものだ」と力説します。
これは、冤罪事件で捕まっていたアンディだからこそ、重みのある言葉となります。
どんなときにも、人生における希望は他に誰も奪うことができないということが再確認できる重要なワンシーンです。また、昔聞いた歌を口ずさめば、それを聞いていた頃の記憶がよみがえったり、音楽もまたその人から誰も奪うことができません。
現在の環境が自分にとって悪いものであったとしても、希望と音楽はその環境から奪われることがありません。今の環境に絶望している皆さん、決して希望を失わないでください。
「ショーシャンクの空に」は映画史に残る名作映画
私自身のお気に入りでもありますが、他の映画サイトや雑誌でも名作映画に選出されることの多い「ショーシャンクの空に」は紛れもなく名作映画です。
また、人生のどん底における応援歌でもあるでしょう。
そんな「ショーシャンクの空に」をぜひ一度鑑賞してみてください!