累計発行部数95万部を超えた桜木紫乃のベストセラー小説『ホテルローヤル』。直木賞を受賞した本作の実写映画『ホテルローヤル』が、2020年11月13日に公開されます。
現在から過去に遡る7篇の連作からなる原作を、ひとつの物語に大胆に組み上げた映画版は、映画『百円の恋』『全裸監督』を手掛けた武正晴監督がメガホンを取ります。おお……。
本記事では、公開前の予習を兼ねて『ホテルローヤル』のあらすじをネタバレ付きで解説していきます!映画版に組み込まれた“大事件”についてもわかる範囲でお知らせしていきますので、お楽しみに……!
映画『ホテルローヤル』の予告動画がこちら!
ジャンル | ヒューマン・ドラマ |
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日本公開日 | 2020年11月13日 |
監督 | 武正晴 |
主演 | 波瑠 |
主演女優に波瑠を迎えた今作『ホテルローヤル』。やや冷めた印象の主人公が、ラブホテルで起きる様々な人間模様を傍観するスタイルで映画のストーリーは進行していくようです。
ところがそんな傍観者の主人公にも、映画の終盤には乗り越えがたい試練が降りかかります……。
映画『ホテルローヤル』のキャストを紹介!
映画『ホテルローヤル』のネタバレにうつる前に、本作のキャストを紹介していきます。かなり登場人物が多い本作。実力派俳優を揃え、キャラクターのひとりひとりに強烈なバックボーンが隠されています。
原作では、この濃厚な登場人物が紡ぎ出す日常に丁寧にスポットが当てられていましたが、2時間前後の映画版ではどのようにまとめ上げているのでしょうか。ここがかなり気になります……。
波瑠/ホテルの経営者家族の一人娘・雅代
美大受験に失敗し、進学を諦めた雅代。父親の家業“ラブホテル”を嫌々ながら引き継ぐことになってしまいます。
黙々と仕事するタイプの青い炎系女子を演じるのは波瑠。2015年のNHK連続テレビ小説「あさが来た」でヒロインを務めてから大躍進をしている女優さんですね。ドラマ出演が多い彼女ですが、とにかくアップの顔演技(表情)が素敵で、映画『流れ星が消えないうちに』『コーヒーが冷めないうちに』など主演映画にも定評があります。
松山ケンイチ/“えっち屋さん”・聡史
アダルトグッズの営業職、聡史。主人公を含めたホテルローヤルの従業員たちからは“えっち屋さん”と呼ばれています。こんなアタッシュケースにアダルトグッズをギチギチに詰め込んで売り歩く営業が本当にあるのかと筆者調べましたが、一昔前はスタンダードで、今も普通にされているようです。へえ。
物腰が柔らかい既婚者のサラリーマンを演じるのは、松山ケンイチ。モデル出身ですが、今やすっかり日本を代表するカメレオン俳優ですよね。映画『デスノート』『聖の青春』『関ヶ原』などが代表作。個人的には2009年に主演したドラマ『銭ゲバ』が好きでした。
脇というか主役達というか…映画のリトマスになる実力派俳優達
ホテルローヤルを起業した雅代の⽗親・⼤吉役には安⽥顕、妻・るり⼦役は夏川結⾐が演じます。さらにホテルローヤルのパート従業員には余貴美⼦、原扶貴⼦をキャスティング。親に⾒捨てられた⼥⼦⾼⽣には伊藤沙莉、連れ立ってホテルに現れる⾼校教師役は岡⼭天⾳……などなどバイプレイヤーが勢揃いです。
しれっと友近も出演しています。ほっかむりをして。
映画『ホテルローヤル』のあらすじをネタバレ!
さて、キャストの紹介を終えたところで映画『ホテルローヤル』のネタバレにうつっていきましょう。
すでにベストセラーになっている原作を未読の方のために、原作のあらすじを。さらに「映画で起きる“事件”が気になる!」という方のために映画版の山場をネタバレしていきます……!
生きがいを見い出した男と支えたい女
スーパーの裏方として働く美幸は、勤続13年。短大を出てからずっとこのスーパーに勤めています。そこに中途入社してきた同い年の男性・貴史。彼はもともとアイスホッケーのスター選手でしたが怪我で引退、何をしたいかも分からず仕事を転々としていたのでした。
美幸と貴史は話すうち自分たちが中学生時代の同級生であることに気付きます。とんとん拍子で付き合いはじめた二人。選手引退からあらゆる人間関係を断絶していた貴史。ある日、自分の唯一の趣味であったカメラの存在に目がとまります。
彼女である美幸に「ヌードモデルになって欲しい」と頼む貴史。裸の写真に抵抗はありつつも、彼が新しい道を切り開くきっかけになればと美幸はこのオファーを承諾するのでした。
二人が選んだ撮影場所は“廃墟”のラブホテル。看板も剥げ落ち“ホテルローヤ”までしか読み取れません。人知れず歴史を終えたこのホテルで、二人は将来の話をはじめました。
家業のラブホテルを渋々継ぐことになった娘
“ホテルローヤル”は、田中大吉という男が愛人と共に立ち上げたラブホテルでした。
家業がラブホテルという境遇を恨んでいた一人娘・雅代は、美大受験に失敗し途方に暮れていました。父・大吉の代わりに、雅代がこのラブホテルの管理と経営を任されたのもちょうど同じ頃。
若い雅代は嫌々ながらも他にしたいこともなく、ホテルローヤルの事務室で寝泊まりしながら、受け付けから後片付けまでをパート従業員と共にこなすのが日課になっていました。
そんなある日、ホテルローヤルの一室で心中事件が起こります。世間から注目を浴びせられ、ホテルはマスコミの標的になってしまいます。そこに父・大吉が病に倒れ、雅代は後ろ盾をなくしてしまうのです。
この事件をきっかけに父に代わって嫌々維持していたホテル、自分の人生、雅代はこれらに初めて向き合っていくことになるのですが……。どうなる……!
ホテルローヤル従業員“ミコ”のドラマ
“ホテルローヤル”で、パートの清掃員として雅代と一緒に働いている・山田ミコ。午前9時には出勤し退勤するのは夜中の12時と、還暦ながらかなりハードなフルタイム勤務を日々こなしています。
ミコには10歳年下の夫と、ここ5年ほど盆にも正月にも帰ってこない息子がいます。夫はもともと漁師だったのですが、仕事で足を悪くしてから一切働かなくなりました。
ある日、ミコはホテルでの休憩時間中に事務室でテレビを見ていました。流れているのはニュース番組、死体遺棄事件の容疑者が逮捕されたと報道されています。
容疑者の名前は、ミコの息子の名前でした。混乱するミコ。しかし、一緒にニュースを見ていたホテルローヤルの従業員達はミコを非難することもなく、また過剰に励ますこともありませんでした。
動揺しながらもここでは何も変わらないのだ、と小さく安堵するミコ。息子が逮捕されても、明日からも皆と一緒に働けるようです。家では夫・正太郎がひとり、ミコの帰りを待っています。
「父はどんな気持ちでラブホテルを起業したのだろう……」
雅代が家業・ホテルローヤルを継いでから10年近くが経ちました。北海道の田舎にあるホテルの客足は伸び悩み、ついに9月に閉業することに決まりました。酒屋からアダルトグッズ販売会社まで、これまで取引していた業者に連絡して、引き取ってもらえるものを処分しはじめる雅代。
父・大吉が42歳で起業したホテルローヤル。それまでは看板屋として生計を立てていた彼が、愛人と一緒にラブホテルを始めたきっかけに、雅代は思いを馳せ始めます。
「人生を賭けた一発勝負」としてホテルローヤルを発起した大吉。妻や義父からは猛反対される中、唯一応援してくれたのが当時団子屋の看板娘だったるり子でした。
当時はバブル期でしたから、あちこちに真新しいビルが次々と建設されていたんですよね。無担保、無保証でもオーナーになれた夢みたいな時代です。ただし事業に失敗すれば、全財産を没収されても届かないほどの負債を抱えるという大勝負。大吉もこれに賭けたのです。
愛人となったるり子の妊娠が分かり、ホテルの契約書と離婚届に同時に捺印する大吉。つわりで苦しむるり子に、6000円もするローヤルみかんを買って帰る大吉。彼は当時、一体何を思っていたのでしょう。
そして今、娘・雅代は税理士の元に向かい車を運転しています。ホテルローヤルの鍵を手放しに行くために。
映画『ホテルローヤル』の時系列まとめ
原作『ホテルローヤル』では、時系列が現在から遡っていく形になっています。この構成が既に映画的で素敵なのですが、実際の映画版ではどうなるのか気になりますね。
映画版では、ホテルローヤルで起きた心中事件が大きな山場になるようですが……。ここでは原作『ホテルローヤル』のあらすじを時系列にまとめてみましょう!
- 廃墟になったホテルローヤルで生き方を模索するカップル
- 主人公・雅代が受験に敗れホテルローヤルを継ぐことに
- ホテルローヤルで起きる出来事を雅代を通して描く
- ホテルローヤルの衰退。ついに閉業へ…
- 父・大吉がホテルローヤルを興したストーリー
映画『ホテルローヤル』の結末は……
時間の流れをあえて遡ることで、ホテルローヤルの歴史が丁寧に織り成されていく様が伝わる本作。バブルの産物が時を経て、結局廃墟になっていくわけです。まさに、“行く川のながれは絶えずして、しかも本の水にあらず”。この過程が纏う哀愁は、ぜひ映画でも再現していただきたいポイントですよね。
原作ファンも監督ファンも、首を長くして2020年11月13日の公開を待ちましょうか……!