映画『ブレスレット 鏡の中の私』徹底解説!親友殺しの容疑者の少女は有罪か無罪か?

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2019年ヨーロピアン・フィルム・マーケットやロカルノ映画祭で話題になった映画『ブレスレット 鏡の中の私』(2020年7月31日公開)。親友殺しの容疑者となった16歳の少女の裁判を描いた問題作です。「少女は本当に親友を惨殺したのか……」。彼女のクラスメイトや周辺の人々の証言には、家族の知らない少女の姿がありました……。社会問題も含んだ実に見応えある法廷ミステリ―をご紹介します。

映画『ブレスレット 鏡の中の私』作品DATA

監督・脚本:ステファン・ドゥムースティエ
出演:ロシュディ・ゼム メリッサ・ゲール アナイス・ドゥムースティエ キアラ・マストロヤンニ(特別出演)
原題:LA FILLE AU BRACELET / 2019 / フランス・ベルギー / フランス語 / 95分 / カラー / ヨーロッパビスタ
字幕:齋藤敦⼦
配給:イオンエンターテイメント
https://bracelet-movie.com

映画『ブレスレット 鏡の中の私』あらすじ

ブレスレット鏡の中の私

(c)MMXIX -‒ tous droits réservés – PETIT FILM ‒ FRAKAS PRODUCTIONS ‒ FRANCE 3 CINÉMA – RTBF

16歳のリーズ(メリッサ・ゲール)は、家族と海水浴の最中に警察に連行されます。彼女は幼馴染の親友フローラを殺した罪に問われていました。リーズは無罪を主張しますが、フローラが亡くなった日、彼女はフローラの家にいました。でも彼女が寝ている間に家を出て、弟を迎えに行っていたので、フローラが亡くなったことは知らないと答えます。
検察側はフローラの家で何があったのかを追及していき、リーズはクラスメートたちに私生活を暴かれていきます。それは両親も知らない性に奔放な娘の秘密でした。父(ロシュデイ・ゼム)と母(キアラ・マストロヤンニ)はリーズの無罪を信じていますが、自分たちの知らない娘の姿に不安を感じていくのです。

映画『ブレスレット 鏡の中の私』徹底解説

16歳のリーズという容疑者について

ブレスレット鏡の中の私

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少女の親友殺しというスキャンダラスな内容ですが、ドロドロした女の友情が描かれるわけではありません。本作は法廷劇であり、リアルな裁判を傍聴している気持ちにさせられる映画です。しかし、何より目を引くのはリーズの圧倒的な存在感です。
冒頭、海水浴場から連行されるリーズ。それを見つめる家族を引きの映像で見せていくのですが、リーズは取り乱すことなく水着の上にシャツとショートパンツをはいて素直に連れて行かれます。そんな彼女を呆然と見送る家族。「どうして!」なんて叫んだり、娘を連行する者に食って掛かるようなこともしません。「意外に冷静だな」と思いましたが、現実、自分の子供が同じ状況になったら、ここで暴れても阻止できるものでもないし、メリットはないので、不安な気持ちを抱えつつ、警察に連れていかれる子供を見送るしかないのではないかと思います。親は子供を信じているので「絶対に大丈夫」「誤解に違いない」「冤罪だ」と思いつつ……。リーズの両親も心中は心臓がバクバクしているでしょう。
この映画の凄みは、このファーストシーンだけで、リーズが16歳にもかかわらず、肉感的な体に成長している大人びた16歳であること。落ち着いた態度から、おそらく大変肝が据わっている少女であることがわかります。ここでフローラが亡くなったことを告げられたのかどうかは描かれていませんが、事情を聴くために連行しているので話しているはず。親友を死を取り乱すことなく受け入れるリーズのこの態度は、裁判の間もずっと続いていくのです。

次々と明らかになるリーズの性に奔放な素顔

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裁判が始まると、リーズと殺されたフローラの関係性が明らかにされ、リーズがクラスメイトにどのように思われていたかという証言が次々と語れます。フローラは幼い頃から一緒の親友であり、ひとりの同世代の男性が二人にからんでいたことがわかります。そしてリーズとフローラが親友を超えた性的な関係があったこと、リーズが遊び気分で男性と性関係も持っていたこと、その映像も流れます。あまりの衝撃的な内容に両親は言葉もありませんが、それでも家族はリーズを信じます。彼女がどんなに性に奔放でも、それが殺人の証拠にはならないからです。
裁判でフローラの遺体の写真を見ても、クラスメイトが自分を追い詰めるような証言をしても、彼女は表情を変えずに無罪を主張し続けます。自分の秘密が次々と暴かれても全く動揺しないのです。類まれな最強メンタルの持ち主! この子は絶対に真実を語らない。強い決心をしていると感じました。

法廷劇の醍醐味をひっくり返すリアリティ

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法廷劇は容疑者が有罪か無罪か、検察VS弁護士の闘いが見もののひとつではあります。どんでん返しが起こり、有罪が無罪になったりする映画は多いです。しかし、本作はことさら検察VS弁護士を派手に描写することなく、驚くようなドラマチックな展開もありません。でもその分、本当に裁判を見ているような気持ちになるのです。そしてフランスの裁判は、被害者の全裸の遺体も、容疑者の性の映像もオープンに見せていくのだというのに驚きました。自分が被害者の親だったら怒りでその場にいられなくなるか、気を失ってしまいそうです。

リーズが犯人である決定的な証拠は?

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常に冷静なリーズですが、唯一、凶器と思われるナイフについて検察に追及されたときの彼女の表情が印象深いです。このナイフの存在に加えて、リーズと弟の会話にひっかかりがありました。弟から「もしも逮捕されて家に帰れなくなったら、この部屋がほしい」と言われ、リーズは了解します。幼い弟はお姉ちゃんの広い部屋がほしい。そのためなら何でもするかもしれない。まだ幼いからわからないままに……。弟は事件と関係ないにもかかわらず、リーズと弟の描写はどこか気になりますし、弟の証言は注目のポイントでもあります。

最後に熱く語る容疑者リーズの視線の先にあるもの

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リーズが親友を殺したのか否かについては、映画を観ていただきたいのですが、映画の後半、リーズがある人物に向かって熱く語り続けるシーンや最後の行動が意味深で、いろいろ想像してしまいました。ちなみにタイトルの”ブレスレット”は、容疑者リーズが逃亡しないように足に装着する電子ブレスレットのこと。これが最後に別な意味を持つものに変わっていくのです。

ブレスレット鏡の中の私

アメリカ映画の激しい法廷劇とはまったく異なる『ブレスレット 鏡の中の私』のリアル。ぜひ陪審員になった気持ちで鑑賞してみてください。

https://twitter.com/AEON_CINEMA/status/1289743125703823361

 

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