女性コミック誌『NIGHTY Judy』に連載され、話題を呼んだ人気漫画『窮鼠はチーズの夢を見る』。「恋の苦しさと嬉しさ」をリアルに描き切った本作は、ボーイズラブ作品を敬遠する層からも支持を得ました。
異性愛者(いわゆるノンケ)の主人公と、ゲイの後輩の恋愛という衝撃的な設定。はっきり言って「それ、どうにかなるの!?」と思わざる得ない展開なのですが、繊細に揺れ動く心理描写にたちまち引き込まれ、ストン、と納得してしまうのです。
本記事では、実写映画版『窮鼠はチーズの夢を見る』のストーリーを結末のネタバレ付きで解説。さらに、登場人物の紹介もしていきます!
学生時代に原作を読んだことのある筆者。友人宅でテッシュの箱を抱えて読破した時の感動を、今まさに思い出しています……!
映画『窮鼠はチーズの夢を見る』の60秒予告がこちら!
本作『窮鼠はチーズの夢を見る』実写映画化決定の情報は、原作を知っている方には衝撃を与えたのではないでしょうか。結構具体的なシーンが多いため、再現が難しそうな点。また、膨大な量の心理描写どれ一つ欠けても不自然になってしまうであろうことが予想されます。
人気俳優・成田凌、関ジャニ∞・大倉忠義をW主演に据えた本作。ぜひ、振り切って演じていただきたいものです!
原作漫画は水城せとなの傑作コミック!
水城せとなといえば、松本潤・石原さとみ主演でドラマ化した『失恋ショコラティエ』の原作者。
「ヒロインのことが大好きなパティシエ男子」という、女性が喜びそうな設定を押さえつつ、ドラマティックな展開と緻密な心理描写から、傑作コミックと評されています。ドラマでの石原さとみのあまりの可愛さに当時、石原さとみを模した女子が街に溢れたのは記憶に新しいところ。
本原作『窮鼠はチーズの夢を見る』は、ボーイズラブ作品を取り扱うBLレーベルではなく、女性向けコミック誌『NIGHTY Judy』に連載されました。リアリティあふれるゲイコミュニティの描写に加え、異性愛者層にも共感を呼ぶ心理描写。一歩間違えばとんでもエロ漫画になりかねないのに「なぜこんなにも深い心情を描けるんだ?」と、調べると、原作者の水城せとなはもともとBL作家とのこと。
彼女の探求と哲学の結晶と言える傑作コミックの実写化!期待が高まります……!
映画『窮鼠はチーズの夢を見る』の登場人物を紹介!
映画『窮鼠はチーズの夢を見る』のネタバレに移る前に、登場人物の紹介をしていきます!
諦めないゲイと、流されまくりの主人公。それを取り巻く女性たちの愛想劇で、本作は進行していきます。
大伴恭一(大倉忠義)
29歳、既婚者のサラリーマン。もちろんノンケで、子供はいません。とんでもない優柔不断で、女性から好意を寄せられると拒めない性格。流されるまま、不倫を繰り返しています。うわあ。
表向きには、優しくて高給取り。「非の打ち所のない旦那」であるものの、あまりの執着心のなさ、受動的すぎる態度のせいで、妻とはやや険悪。
今ヶ瀬渉(成田凌)
主人公・恭一と同じ大学の後輩。ゲイであり、サークルも一緒だった恭一に、当時からずっと想いを寄せています。
現職は、興信所の調査員。恭一の妻である知佳子から浮気調査の依頼を受け、ストーリーが展開していきます。性格は粘着質でストーカー気味。探偵向きには間違いありませんが、こと恋愛においてもストーカー気質を発揮!
岡村たまき(吉田志織)
恭一の会社の部下。恭一に想いを寄せており、恭一も満更でもない様子。
たまきの父親は同社の常務。ただ彼女は妾の子であり、公には秘密。コネ入社ではなく、実力で恭一も働く一流企業に入社した可愛いだけでなくガッツもある女性。
本作には、主人公の二人を取り巻く女性たちが他にも登場します。いずれも、ゲスの極み乙女。のさとうほなみ、元宝塚雪組トップの咲妃みゆ、グラビアアイドル出身の小原徳子など、タイプの違う女性たち。「ゲイへの世論」「風当たりの強さ」を代弁するような役どころ。手強い!
映画『窮鼠はチーズの夢を見る』のあらすじをネタバレ!
映画『窮鼠はチーズの夢を見る』のキャストの紹介が済んだところで、いよいよストーリーのネタバレに移っていきます!予告動画の様子から、原作にほぼ忠実な仕上がりが予想される本作。
本作、激動の展開です。しかしそれ以上に、くどいようですが心理描写!一時の恋愛感情だけでなく「これからゲイとしていきていく?」「自分の好きな人にとって幸せって何?」人生をかけた恋ならではの思い合いが見どころなのです……!
2020年6月5日に公開予定だった今作。残念ながら公開延期。しかし「近日公開」とのことで、続報が待たれます!
大学の後輩・今ヶ瀬との7年ぶりの再会
一流偉業で働くサラリーマンの恭一。彼は、7年ぶりに再会した大学時代の後輩・今ヶ瀬に強請られていました。今ヶ瀬は興信所の調査員。妻・知佳子が依頼した、恭一の不倫調査を請け負ったのが今ヶ瀬だったのです。
流されやすい性格の恭一。これまで女性に言い寄られるままに不倫を繰り返していました。バレたらやばすぎます。今ヶ瀬、このことを知佳子に報告しない代わりに「見返り」を求めるというのです。
不倫の口止めにとんでもない条件!どうする流され侍
サークルの後輩関係であった大学時代から、恭一のことが好きだったと告白する今ヶ瀬。彼の求める見返りは、「カラダが欲しい」いうものでした。
流されやすいとはいえ、さすがに同性同士の経験はない恭一。一旦は拒否しますが、背に腹は変えられません。挿入無しの条件で交渉に応じ、不倫調査をなんとか誤魔化してもらいます。よっ、流され侍!
ただ、不倫以前に恭一の受動的すぎる性格にうんざりしていた知佳子。結局彼女は離婚を望み、恭一と知佳子は離婚します。
恭一の離婚。今ヶ瀬は押しかけ妻に?
今ヶ瀬は、独身になった恭一の部屋に押しかけては入り浸るようになりました。流されやすい恭一、強請られているわけでもないのに、今ヶ瀬との関係をズルズル続けます。ただ「好き勝手されている」というスタンスを貫く恭一。同性愛者に付き合ってあげているだけという、往生際の悪さ。
ところが次第に、言いよる女性を断るようになる恭一。家に帰ると待っている今ヶ瀬が特別な存在になりつつありました。やがて、恭一が「受け」になる形でふたりは完全に結ばれます。
2年後。相変わらずズルズルの恭一
離婚から2年。恭一は相変わらず今ヶ瀬と関係を続けていました。ただ、ノンケとして女性に興味を持つのが日常でした。会社の部下・たまきに惹かれた恭一は、彼女が妾の子であるということ、父親は会社の常務であることを知ります。複雑な事情を抱えるたまきに、ますます愛情を抱くようになる恭一。いますね、こういう男。
そんな一方、「攻め」の形でも今ヶ瀬と関係を持つようになる恭一。「好き勝手されている」というスタンスは、もう言い訳として通用しない状態です。
今ヶ瀬は、恭一とたまきの恋愛が進展していることを見抜きます。そこで、今ヶ瀬は別れを切り出し身を引く選択をするのです。引きとめない恭一。同性愛者としていきていく覚悟が、恭一にはありませんでした。恭一は、たまきと交際を始めます。
自分がしていたのは「同性愛者の真似ごと」
恭一が今ヶ瀬と別れてから半年。恭一は、たまきの親に挨拶を済ませ、使いうちに結婚する予定でした。ただ、恭一の部屋には灰皿が一つ……。たまきも恭一も、タバコは吸いません。半年前に、今ヶ瀬が残していった灰皿。捨てられないのです。こいつ……!
恭一はいまだに今ヶ瀬への思いを燻らせていました。ただ、引きとめられなかったという事実。自分は結局、流されるままに「同性愛者のまねごと」をしていたのだと思い直し、たまきとの平穏な日々に戻るのでした。
今ヶ瀬、再来!怒涛の結末へ!
結婚を目前に、たまきは知人男性からのストーキングに悩まされていました。たまきは、今ヶ瀬に調査依頼。恭一と今ヶ瀬は、また再会することになります。
大きく揺れる恭一の心。今度は流されて、ではありません。3年近い葛藤の末、恭一は「次に今ヶ瀬と会ったら完全に落ちる」と自覚していたのです。
映画『窮鼠はチーズの夢を見る』の結末は甘くない!
過酷な境遇にありながら、さっぱりとした性格のたまき。あざとさがなく、魅力的な女性です。しかし、恭一は結局たまきと別れることを選びます。その選択は同時に、今ヶ瀬と生きていくということでもあり……。
「結婚して家庭を築く」というレールから外れ、流され侍がはじめてあんよするのです。「なんでもいいから自分との絆が欲しい」と言う今ヶ瀬。「それでどうなるってわけじゃないけど、何かの証にはなるだろう」と、ふたりはお互いに指輪を買うことに決めます。