“ファッションが印象的な映画”と聞いて、皆さんはどんな作品を思い浮かべますか?
「プラダを着た悪魔」(2006)や「タイピスト!」(2012)「イヴ・サンローラン」(2014)「クルエラ」(2021)などなど、登場するファッションが魅力的な映画ってたくさんありますよね。物語の展開だけでなく、美しい衣装は目の保養になり、観賞後には心が潤います。
しかし、ドレスアップしたゴージャスなファッションや劇中の時代から、「明日こんなコーディネートをしよっと!」とはなりにくく、なかなか真似しづらいもの…。
今回は、コーディネートの参考になり、明日からすぐに真似したくなるファッションが登場する映画を紹介します。
時代は60年代から2000年代と幅広いですが、どの映画も可愛いファッションが登場し気分が上がること間違いなし!
好きなジャンルや俳優で映画を選ぶだけでなく、ファッションの系統や好きな衣装デザイナーが手がけた作品を追いかけてみませんか?
女は女である
製作年 | 1961年 |
製作国 | フランス |
監督 | ジャン=リュック・ゴダール |
上映時間 | 84分 |
ストリップダンサーのアンジェラは、「24時間以内に子どもが欲しい」と恋人に唐突に頼み、困惑させてしまう。戸惑った恋人と喧嘩になり、「他の男に頼む」とアンジェラは家を飛び出してしまう。勢いで家を飛び出したアンジェラだったが、兼ねてから好意を寄せられていた青年の元に行ってしまい…?
ジャン=リュック・ゴダール監督作。赤いタイツに黒のバレエシューズ、ファーのついた青いワンピースに赤い傘、はたまた、赤いセーターに赤いタイツ…とファッションそのものはシンプルですが、パッと目を引く色の組み合わせがとても可愛い!
アンナ・カリーナのお茶目な魅力がたっぷり詰まった作品です。
衣装を手がけたのはジャクリーヌ・モロー
「女は女である」の衣装を手がけたデザイナーは、ジャクリーヌ・モロー。
「ロシュフォールの恋人たち」(1967)や、「ベルサイユのばら」(1979)など60年代を代表する名作の衣装を手がけています。クラシカルで上品な60年代ファッションが好きな方は、ジャクリーヌ・モローが衣装を手がけた他の作品もチェックしてみてくださいね。
アンビリー・バブル・トゥルース
製作年 | 1989年 |
製作国 | アメリカ |
監督 | ハル・ハートリー |
上映時間 | 97分 |
恋人の父親を殺し服役していたジョシュ(ロバート・ジョン・バーク)は刑期を終えて出所し、自動車整備工場で働くことに。街ではジョシュの噂で持ちきりになるが、工場経営者の娘オードリー(エイドリアン・シェリー)は、ジョシュのことが気になり、彼のことを知ろうと近づく。心を閉ざしたジョシュと、物事を悲観的に捉えるオードリーの2人の恋の行方は…?
ターバンをまいたり、丸いサングラスをかけてリボンで髪をまとめたり…とオードリーのファッションは小物の使い方まで見事に可愛く、甘すぎないガーリーファッションがとても魅力的です。
一方、ジュリア・マクニールが演じたパールは、より綺麗めなファッション。それぞれの性格が表れている、ファッションの違いにも注目してみてくださいね。
「シンプルメン」「トラスト・ミー」も必見!
「アンビリー・バブル・トゥルース」を手がけたのは、インディーズ映画界を代表する監督ハル・ハートリーです。シュールで心地よい独特の雰囲気や、衣装が好きになった方は、「シンプルメン」(1992)や「トラスト・ミー」(1993)も必見!
カジュアルで真似しやすい、魅力的なファッションが登場します。
グッバイ・ゴダール!
製作年 | 2017年 |
製作国 | フランス |
監督 | ミシェル・アザナヴィシウス |
上映時間 | 107分 |
映画監督ジャン=リュック・ゴダールの、妻アンヌ・ビアゼムスキーの小説を映画化。すでに世間から天才だと崇められていたゴダールと19歳で出会ったアンヌ。哲学を学ぶ学生だったはずが、プロポーズを受けたり、ゴダールの作品で女優デビューしたり…とゴダールと出会ったことで日々は目まぐるしく変化していく。パリではデモ活動が激化する中、気難しく頑固なゴダールに翻弄されながらも彼と過ごした時間が描かれる。
先ほど紹介した「女は女である」の監督ゴダールの2番目の妻目線から描かれた「グッバイ・ゴダール!」。アンヌ・ビアゼムスキーを演じたのはステイシー・マーティンです。「ニンフォマニアック」(2013)で一躍有名になり、過激な演技のイメージが強いですが、本作ではステイシー・マーティンの可愛さを存分に楽しむことができます。
作中のアンヌのファッションは、実際のゴダール作品に登場したような、シンプルで色使いが綺麗なものばかりです。再現された60年代のファッションが魅力的なのはもちろん、2人が暮らす部屋も参考になること間違いなし。
衣装を手がけたのはサブリナ・リッカルディ
「グッバイ・ゴダール!」の衣装を手がけたのは、スタイリストのサブリナ・リッカルディ。
60年代の魅力がぎゅっと詰まった衣装は、ヴィンテージの洋服と、miu miuをはじめとする現代のブランドがミックスされているそう。
「ラスト・ダイヤモンド 華麗なる罠」(2014)や「スクールズ・アウト」(2018)をはじめとする様々なフランス映画で衣装を手がけています。
ヴァージン・スーサイズ
製作年 | 1999年 |
製作国 | アメリカ |
監督 | ソフィア・コッポラ |
上映時間 | 97分 |
小説「ヘビトンボの季節に自殺した五人姉妹」を、ソフィア・コッポラがメガホンを取り映画化。
リスボン家の美しくミステリアスな5人姉妹は、少年たちからの憧れの存在。誰もが羨む容姿と恵まれた環境…だったはずが末っ子のセリシアが手首を切ったことで、彼女たちの日々は変化してゆく。
原作の小説の題名を見てギョッとした方も多いと思いますが…「どこを切り取ってもこんなに可愛いの??」と思うほど、ファッションも、彼女たちの部屋も、制服の着こなしも、ガーリーさが詰まっています。「古着のレースや花柄が好き!」という方には堪らないはず。
物語が進むにつれて少女たちの危うさや儚さはどんどん増していき、ずっと可愛い中に不穏で憂鬱な雰囲気が漂い、とても心が不安定になります…。煌びやかで美しい分、観賞後はずしりと来ますが、私個人的に”最も可愛いが詰まった映画”だと思っています。
衣装を手がけたのはナンシー・スタイナー
「ヴァージン・スーサイズ」の衣装を手がけたのは、衣装デザイナーのナンシー・スタイナーです。「リトル・ミス・サンシャイン」(2006)や「プロミシング・ヤング・ウーマン」(2020)など、長年に渡り様々な映画の衣装を手がけています。
「ヴァージン・スーサイズ」に登場するファッションが好きな方は、「ルビー・スパークス」(2012)もおすすめ!ナンシー・スタイナーが手がけた、よりカラフルでポップなファッションが登場します。
キャロル
製作年 | 2015年 |
製作国 | アメリカ・イギリス |
監督 | トッド・ヘインズ |
上映時間 | 118分 |
デパートのおもちゃ売り場で働くテレーズ。クリスマスシーズンのある日、娘へのプレゼントを探しにきたキャロルに出会う。一目で心を奪われるテレーズだったが、キャロルが手袋を売り場に忘れたことをきっかけに2人の距離は近づいてゆく。
ケイト・ブランシェットとルーニー・マーラの2人が主役を務めた「キャロル」。主役の2人をはじめ、物語、風景、紡がれる言葉…登場する全てが美しい映画です。
エレガントで存在感あるキャロルと、キュートで上品なテレーズのファッションが対照的で、映画の深みをより増しています。特にワンピースやマフラー、スカートと様々なチェック柄が登場するテレーズのファッションは寒い冬に真似したくなるはず。
クリスマスシーズンになると必ず見返したくなる映画です。
衣装を手がけたのはサンディ・パウエル
「キャロル」の衣装を手がけたのは、衣装デザイナーのサンディ・パウエル。
過去に衣装を手がけた、「恋におちたシェイクスピア」(1998)「アビエイター」(2004)「ヴィクトリア女王 世紀の愛」(2009)の3作品でアカデミー衣装デザイン賞を受賞。
受賞作品以外にも「シンデレラ」(2015)や「メリー・ポピンズ リターンズ」(2019)など、彼女が手がける作品の衣装は煌びやかで美しく、大きな話題を集めています。
スローガン
製作年 | 1969年 |
製作国 | フランス |
監督 | ピエール・グランブラ |
上映時間 | 90分 |
“鬼才”として評価され名声を手に入れた、CM監督のセルジュ。セルジュには妊娠中の妻がいたが、ある日エレベータで23歳のエブリンに一目惚れしてしまう。お互いに相手がいながらも衝動を抑えられず、2人はパリで生活を始めるが…。
実際にカップルだったセルジュ・ゲンズブールとジェーン・バーキンが出会うきっかけになった「スローガン」。フレンチシックの代表格であるジェーン・バーキンのファッションがたっぷり堪能できる作品です。ミニスカートにロングブーツ、カゴバックにシンプルなTシャツ…ガーリーなのに甘すぎない絶妙なファッションは今見ても全く違和感なく、50年以上も前の作品とは思えません。
「太陽が知っている」も必見!
ジェーン・バーキンのファッションが好きになった方は、彼女の出演作「太陽が知っている」(1969)も必見!
シンプルな白Tの着こなしや、ギンガムチェックのミニスカートとカゴバックなど…彼女のフレンチルックを堪能することができる作品です。ぜひ他の作品も追いかけてみてくださいね。
読書する女
製作年 | 1988年 |
製作国 | フランス |
監督 | ミシェル・ドヴィル |
上映時間 | 99分 |
「読書する女」をいつも読んでいる、読書好きな主人公・コンスタンス(ミュウ・ミュウ)。想像力が豊かな彼女は、本を読み聞かせる仕事をしている「読書する女」の中の主人公・マリー(ミュウ・ミュウ)と同化してしまう。
ミュウ・ミュウがコンスタンスとマリーの2役を演じている「読書する女」。原色がアクセントになっているファッションは、奇抜すぎず上品すぎず、すぐに真似したくなるものばかりです。
終始シュールでコミカルな雰囲気が漂いながら、文学を通した官能的な要素が描かれている本作。非常にフランス映画らしい作品ですが、好みが分かれやすい作品かもしれません。
衣装を手がけたのはセシル・バルム
「読書する女」の衣装を手がけたのは、衣装デザイナーのセシル・バルム。
同じくミシェル・ドヴィル監督の「真夜中の恋愛論」(1990)でも衣装を担当しています。
月曜日のユカ
製作年 | 1964年 |
製作国 | 日本 |
監督 | 中平康 |
上映時間 | 93分 |
恋人がいながら誰とでも寝る、18歳のユカ。多くの男性と関係を持つユカが本当に愛されたいのは、恋人ではなく、「パパ」と呼ぶパトロンだった。家庭を持つパパと会えるのはいつも月曜日。パパを喜ばせたいと純粋に思うユカだったが、パパからのある頼み事で、彼女の幸せなはずの月曜日は少しづつ狂っていく。
クラブで踊るドレスアップした姿から、部屋でサラリとシャツを羽織ってタバコを吸う姿まで…モノクロ映画ですが、登場するファッションにうっとり。
ヌーヴェル・ヴァーグ(「新しい波」を意味するフランスから始まった革命運動)の影響を感じさせるスタイリッシュでモダンな映像と、テンポ良く進む物語。「昔の映画って単調に感じる」となんとなく避けていた方!この作品で、イメージを大きく覆されるはずです。
筆者の世代だと、「花より団子」の道明寺司の”美しく冷酷なお母様”の印象が非常に強いですが、和製ブリジットバルドーと呼ばれていた若かりし頃の加賀まりこさんも見てぜひ見てみてくださいね。
衣装を手がけたのはルリ・落合
衣装を手がけたのはルリ・落合。
映画や舞台衣装のみならず、国内最古の女性誌「婦人画報」で衣装デザイナーを務めたり、1975年から放送されたトーク番組「ノックは無用!」内での衣装を担当したりと、幅広く活動していました。
レトロモダンなファッションが好きな方は、ルリ・落合が手がけたファッションもぜひチェックしてみてくださいね。
まとめ
思わず真似したくなるような、可愛いファッションが登場する映画を紹介しました。
ジャンルや俳優から見たい映画を選ぶだけでなく、好きな衣装デザイナーやファッションの系統から選んでみてはいかがですか?
今回紹介した作品の中には50年以上前の作品もありますが、ファッションも物語も色褪せない名作ばかりです。流行のファッションももちろん素敵ですが、映画を通して、時代に流されないベーシックで洗練されたファッションがより魅力的に映るととても嬉しいです。
気になった作品が見つかったり、「今日は可愛い映画が見たいかも!」と思ったときはぜひ鑑賞してみてくださいね。