ハリウッドの第一線で活躍し “北欧の至宝” の異名を取る俳優、マッツ・ミケルセンが主演を務める、映画『ライダース・オブ・ジャスティス』が2022年1月21日に日本で公開されます。
2020年制作の本作は、海外からやたらの高レビューが届いていたこと、本国デンマークでのアカデミー賞総なめの成績から日本の映画ファンから国内公開が熱望されていました。
そして今年、上映館は少ないものの、主演マッツ・ミケルセンとアナス・トマス・イェンセン監督の “北欧最強タッグ” の日本上陸が決まり話題になっています。
映画『ライダーズ・オブ・ジャスティス』の予告動画
予告動画の随所に散りばめられる「復讐」というキーワード。
本作『ライダーズ・オブ・ジャスティス』の全体的なノリは、妻を失った軍人の復讐劇。凄惨ですよね。ところが作中チョイチョイ挟まれるおじさんたちのコミカルシーンが ”謎のうま味調味料” の役割をした結果、「ほっこり殺戮映画」という奇跡の併存が起こっているのです。
「は?」と思われた方、予告映像のテンポの良さをどうぞご確認ください……!
映画『ライダーズ・オブ・ジャスティス』の作品情報
ジャンル | アクション? |
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制作年 | 2020年 |
監督 | アナス・トマス・イェンセン |
キャスト | マッツ・ミケルセン、ニコライ・リー・コス、アンドレア・ハイク・ガデベルグ他 |
アナス・トマス・イェンセンとマッツ・ミケルセンのタッグは本作『ライダーズ・オブ・ジャスティス』で5作目。
助演は『特捜部Q』シリーズでお馴染みのニコライ・リー・コスと、知名度は低いですがクセになるデンマーク屈指の粒俳優が集められた本作。今年の推しが見つかるかもしれませんね……!
映画『ライダーズ・オブ・ジャスティス』のあらすじ
映画『アナザーラウンド』で注目を浴びたマッツ・ミケルセン主演。妻を列車事故で失った軍人の復讐物語。
アフガニスタンで任務に就いていた主人公・マークスは、妻の突然の訃報を受け帰国する。
落胆する娘を慰めながらマークス自身も失意の底に落ちていたところに、数学者のオットーが訪ねてくる。なんとオットーは、妻が亡くなった事故列車に乗り合わせていたと言う。
さらにオットーは、今回の事件が犯罪組織 “ライダーズ・オブ・ジャスティス” による暗殺行為であると話す。
理不尽な犯罪組織の隠蔽に巻き込まれて亡くなった妻を思い、怒りに震えるマークスの復讐が始まる。
新ジャンル “北欧アクション” に注目!
映画『ライダース・オブ・ジャスティス』は、デンマーク産のいわゆる北欧映画。
デンマークやスウェーデンなど、北欧の映画作品には名作が多く眠っています。おしゃれでフォトジェニックな画面ばかりが注目される傾向にありますが、『シンプル・シモン』など、ハッとするヒューマンドラマがかなり豊富です。
もちろん北欧にアクション映画がないというわけではありません。しかしデンマークで1995年に起きた映画運動「ドグマ95」の影響、というか雰囲気によりバイオレンスな映画を作りにくい風潮なんですよね。
ドグマ95は、純潔の誓いと呼ばれる「映画を制作する上で重要な10個のルール」で、デンマークの映画監督らによって始められた運動です(ヨーロッパの映画界に貢献したと表彰までされています)。
ここに “表面的なアクションは許されない。殺人、武器の使用などは起きてはならない” という項目があるのですよ。
つまり北欧映画では、いまだ無意味なドンパチが敬遠されがちな傾向にあるのです。
いや、意味のあるドンパチってあまりないですよね。映画においてほとんどのドンパチは無意味と言えるのではないでしょうか。しかも、だがそれがいい的な側面は否めないはず。
本作ではドグマ95が意識されているかは分かりませんが(意味のあるドンパチ…)、アナス・トマス・イェンセン監督のブラックユーモアが通常運行、全開です。
語彙消失レビュー続出!とにかく「めっちゃ面白い」らしい
本作『ライダース・オブ・ジャスティス』でマッツ・ミケルセン演じる軍人がチームを組むのは、まさかの数学者とハッカー(おなかポヨポヨ!)。
主人公は、銃どころか米5kg 抱えるのも怪しいギークたちと人生を懸けた復讐に挑みます。
画面いっぱいにうろたえるおじさんたちに心癒されたかと思えば、アナス・トマス・イェンセン監督得意の強烈なバイオレンスシーン!
レビューサイトでは、この独特な緩急に夢中になった方の「ただの復讐モノではない!」という絶賛が目立ちました。
映画『ライダーズ・オブ・ジャスティス』のほんのりネタバレ
本作『ライダーズ・オブ・ジャスティス』、特別アクション好きでなければスルーする確率が高い作品だと思います。ややムサい画面や軍人の復讐劇といういかにもな設定に「ま、これはいいか……」となる方が多いかもしれません。
ところがよくある復讐アクションものとは一線を画する本作。ネタバレしないと伝わらない魅力もありますので、ここからほんのり内容にも触れていきたいと思います。
陰惨バイオレンスにシットコムを少々?
復讐チームの団結とは裏腹に、ストーリーが進むにつれ後味の悪い雰囲気になっていきます。とくに復讐のきっかけとなった列車事故の真実は凄惨なもの……。
はっきり言ってかなり重い救いのない展開なのですが、そこで主人公も、観ているわたしたちも復讐チームの数学者とハッカー(おなかポヨポヨ!)のキャラクターに救われます。
傷ついた父親と娘の間には大きな溝がありましたが、ギークたちの不器用ながらもハートフルな気遣いにより、最終的に絆深まる展開。しかもまったく無理なく。完璧なシットコムを観たような気持ちになるのは筆者だけではないはず。
ジャンルを括れない多面性が魅力!
このおふざけとバイオレンスのブレンドが、訳のわからない絶妙さ。生まれて初めて「柿の種チョコ」を食べた日の幸せな混乱を思い出しました。
妻を失った主人公と母親を失った娘。突然失われた最もかけがえのない人間関係を、突如現れた奇怪なおっさんたちによる “新しい人間関係” が自然に癒していくのです。これほんと、ものすごく不思議な気持ちになります。
ラストはクリスマスのシーン。「生きているかぎり明日は来るから」とでも言いたそうな、日はまた登る展開。陰惨なバイオレンスを見せられたのに、後感はむちゃくちゃ爽快サッパリです。
呆然。人間にDNAレベルで刷り込まれている、生まれながらの前向きさを見せられたような、いや、呼び覚まされたような……。