『サウナのあるところ』“ありのまま”の自分をさらけ出せる場所フィンランドサウナの今

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サウナでロウリュ(蒸気)を浴びたなら、北欧フィンランドの寡黙な男達も、ポツリポツリと思いを吐露しだす。

サウナのあるところメイン
©2010 Oktober Oy.

フィンランドで一年以上のロングラン上映を記録した映画『サウナのあるところ』がいよいよ日本に上陸!
日本のお風呂にも通じるものがあると言われるサウナは、老若男女問わずフィンランドの人たちにとってなくてはならないもの。
劇中大半が男たちのやり取りだが、冒頭は老夫婦が互いの背中を流し合う姿からはじまる。「この背中を流してもう50年以上になるよ。」そう言いながら妻の真っ白い背中にお湯をかけてあげる男。心から妻を愛する気持ちが伝わってくる。

職業も、家庭環境も、何もかもが様々なフィンランドの男たちが、身も心も裸になるのは様々な種類のサウナ。フィンランド国内最古の公衆サウナをはじめ、キャンピングカーや電話ボックスをDIYした変わり種サウナも必見だ。そのまま湖に飛び込めるサウナ小屋が雄大な自然の中に、「SAUNA」の光るネオンが街中に、フィンランドのどこにでもサウナがある。

世界幸福度ランキング2年連続1位(2018/19)となったフィンランドの人々の日常を描いた本格サウナ・ドキュメンタリー。

映画『サウナのあるところ』の作品情報

サウナのあるところ⑤
©2010 Oktober Oy.

原題:Miesten vuoro /英題:Steam of Life
監督:ヨーナス・バリヘル、ミカ・ホタカイネン
公開:2019年9月14日、アップリンク渋谷、アップリンク吉祥寺、新宿シネマカリテほか全国順次公開

映画『サウナのあるところ』のあらすじ

サウナのあるところ①
©2010 Oktober Oy.

じゅわっ、と熱熱のサウナストーンに水をかけると、ロウリュが立ち上る。
ロウリュの中、じんわりと汗をかきながら裸の男たちが語りだすのは、普段は口にしない人生の悩みや苦しみ。犯罪歴や、妻亡き余生について、子供を亡くした痛み・・・そっと胸に秘めていた思いを、サウナという場所に後押しされるかのように男たちは語りだす。
中には「もっとロウリュを足してくれ。」とまるで、ロウリュの力を借り、言葉を紡ぐ自分を励ますような者もいる。サウナには不思議と、思いを吐き出す者とそれをじっと聞く者がいるようだ。
「話すべきじゃなかったかな。」
「話していいさ。」
例え一人用サウナであったとしても、サウナはフィンランドの人々にとって心身を癒し“なにか”を感じる大切な場所だ。ロウリュに包まれ語られる劇中14のエピソードから、身も心も裸になったフィンランドの男たちのありのままの姿が垣間見える。

美味しいスープよりもサウナが一番!

サウナのあるところ②
©2010 Oktober Oy.

「先に食事をするんじゃなかったのか! せっかくスープを作ったのに。」そう嘆く男を尻目に「サウナ最高!」意気揚々とサウナに向かう小太りの男とやせ型の男。
サウナストーンに水をかけじわじわと身体が温まってくると、小太りの男が子供時代、義父から受けていた虐待について語りだす。あと一口だけあるよ、酒瓶に入った酒を小太りの男が一口、残りをやせ型の男が煽って、まるで痛みを共有するかのように飲み干す。
話をじっときき終えたやせ型の男は、娘を母とその恋人にとられたと目に涙をにじませ呟く。互いが互いの話にじっと耳を傾ける。
ただ黙って話をきいてくれる存在がいるだけで、救われる心がある。サウナは、普段なら話すことをためらうような心の奥深くにしまい込んだ気持ちを吐露できる、かけがえのない場所のようだ。

子供を愛するフィンランドの男たち

サウナのあるところ④
©2010 Oktober Oy.

サウナから出た後のクールダウンも男たちの憩いの時間だ。腰にタオルを巻きつけビール片手に座る4人の男はリラックスした様子。口元をほころばせた若い男が、スマートフォンの画面を見せると、残りの3人も破顔する。息子だという若い男に「赤ちゃんはみんな同じだ。」「笑ってる。」「かわいいね。」口々に言う。みんな同じで愛おしい、フィンランドにおいて子供が慈しまれる大切な存在だと感じさせる。若い男は、育休をとって子育てをしているという。フィンランドの子育て事情も少し伺える。
別のエピソードとして、犯罪歴を持つ男が一人、サウナに入り語る話からも子供の存在の大きさがわかる。ドラッグや犯罪に手を染めていた自分が父親になれるなんて! と、3人の男の子に恵まれた男は、しみじみと社会的にまっとうであることの幸せを語る。

日本でも増えるサウナ愛好者「サウナー」

サウナのあるところ③
©2010 Oktober Oy.

原題タイトルの『Miesten vuoro』(『男の番』の意)からもわかるように、シャイなフィンランド人男性たちの気持ちを代弁するかのような本作は、ドキュメンタリー分野で多くの記録を破った。劇中男たちが口にする、人生で大切なもの。多くを占めるのが“家族”、そして他者との“絆”だ。
日本でも、フィンランドのサウナと同じく人と人が繋がる場所としてのサウナ文化が広まりつつある。一方で、高温の中ダラダラと汗をかき水風呂につかる、苦行のようなサウナを思い浮かべる人もまだまだ多いのではないだろうか。その点、劇中のフィンランドのサウナは爽やかそのもの。
心地よいフィンランドのサウナ事情を目にして、サウナーがますます増えそうだ。映画を観て、サウナに入って、フィンランドの人々の“幸せ”に触れてみてはいかがだろうか。

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