『ハリー・ポッター』シリーズでおなじみのダニエル・ラドクリフがまさかの死体役を演じた映画『スイス・アーミー・マン』。
その死体をスイスアーミーナイフのごとく駆使してサバイバルする男を描く本作ですが、物騒な内容とは裏腹に、感動の友情要素や爽快感ある音楽が印象的です。
今回はかなり異色な設定の映画『スイス・アーミー・マン』の感想をネタバレありでご紹介!
さらに作中やエンドロールでも流れた曲の歌詞についても考察します。
映画『スイス・アーミー・マン』概要
死体をアーミーナイフのように駆使して無人島や森からサバイバルするという、異色かつなかなかに不謹慎な内容の『スイス・アーミー・マン』。
あらすじだけでなく、作中でも下ネタなどが何度も繰り広げられる、かなりお下品な映画ですが…。どこかエモーショナルな演出も光る、ギャップの凄まじい作品です。
監督は『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』のダニエル・シャイナートと、ダニエル・クワンの2人組「ダニエルズ」が担当しています。
ダニエル・シャイナートが手掛けた『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』も、かなりぶっ飛んだ結末かつ、常軌を逸した内容なので『スイス・アーミー・マン』が好きな人は是非チェックしてみて下さい(笑)
公開当時はインパクトの強すぎる設定が話題となり、上映される劇場には等身大の「死体役ラドクリフ」こと「メニーくん」が展示されました。
『#スイス・アーミー・マン』のメニーくん、とても仲良くなれて良かったです。#ジグソウ#6月13日BDDVD発売 pic.twitter.com/tqbhyPNn6D
— 映画『スパイラル:ソウ オールリセット』公式 (@Spiral_movie_JP) June 4, 2018
シュールすぎるコラボも…。
映画『スイス・アーミー・マン』キャスト・スタッフ
映画『スイス・アーミー・マン』のキャストは以下のとおりです。
- ポール・ダノ(ハンク役)
- ダニエル・ラドクリフ(メニー役)
- メアリー・エリザベス・ウィンステッド(サラ役)
映画のほとんどは、ポール・ダノとダニエル・ラドクリフの2人だけが出演(しかもラドクリフは死体役)している状態です。
ダニエル・ラドクリフといえば『ハリー・ポッター』シリーズでおなじみですが、シリーズ終了後はジャンルやテイストを問わず様々な作品に出演しています。
たとえば頭に角が生えた『ホーンズ 容疑者と告白の角』や、ジャングルで遭難する『ジャングル ギンズバーグ19日間の軌跡』など。
また日本公開は未定ですが、ネットで誹謗中傷のコメントばかりしてたら、運営に拉致られ強制的にデスゲームに参加させられる変な映画『Guns Akimbo(原題)』にも出演しています。
ポール・ダノも『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』でアクの強い神父役を演じたり、ポン・ジュノ監督の『オクジャ』ではヒール役を演じました。
最近は監督デビューも果たし、『ワイルドライフ』は高い評価を得た作品です。
サラ役のメアリー・エリザベス・ウィンステッドは、『10 クローバーフィールド・レーン』で主演を演じ、『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』ではハントレスを演じています。
映画『スイス・アーミー・マン』のあらすじ(ネタバレなし)
ここからは、『スイス・アーミー・マン』のあらすじをネタバレ無しでご紹介します!
遭難した男の前に現れたのは、死体でした…。
小さな無人島に長い間遭難し、自殺をしようとしていたハンク(ポール・ダノ)の前に男性の遺体(ダニエル・ラドクリフ)が流れ着く。
絶望するハンクだが、死体の肛門からはガスが噴出しており、ハンクは死体に跨ると、ガスの噴出力でボートのように海を渡ることに成功する。
無事に大陸にたどり着いたハンクは、かろうじて充電を残していたスマホの電源を入れるが、まだ圏外だった。待受は若い女性の画像になっている。
ハンクは目の前の森に入ろうとするが、死体を置き去りにできず、担いで森を横断することを決意する。
孤独なハンクが死体に愛着をもつと…死体が喋りだした!?
森に入ったハンクは人のいた痕跡は見つけられるも、人と会うことはなく、雨を凌ぐために洞穴で過ごす。
水分が確保できず途方に暮れるハンクだが、なんと死体の口から飲水が溢れ出した。
そのときに漏れる空気が「メニー」と言っているように聞こえ、ハンクは死体をメニーと名付ける。
次第にメニーに愛着をもつハンクだが、突然メニーが喋りだし、驚いたハンクは死体を殴り飛ばしてしまう。
しかしメニーはハンクに語り続ける。
なぜ故郷を出て遭難したのかハンクに尋ねると、彼は故郷から逃げ出してきたと話す。
それ以降、メニーは子供のようにハンクにあらゆることを尋ねる。
ハンクも様々な知識をメニーに教えるが、森に捨てられた成人向け雑誌にメニーが興味を示して困惑する。
ハンクは男女の関係、性についてメニーに説明すると、はしたないと恥じるメニーに反して彼の股間は反応する。
さらにハンクは、この股間が示す先に故郷があると気づく。
しかしその道中、ハンクとメニにーは崖から転落してしまう。
そのはずみでハンクのスマホが飛び出し、メニーは待ち受け画面の女性を目にし、一目惚れする。
映画『スイス・アーミー・マン』のあらすじ(ネタバレあり)
ここからは映画『スイス・アーミー・マン』のあらすじをネタバレありでご紹介します!
ご注意下さい!
ハンクのスマホに映る、待受の女性とは?
メニーは待受画像の女性について、ハンクが彼女に変装すれば何か思い出せるかも知れないと言う。
ハンクはメニーのために、初めて待受の女性と出会ったバスの車内を再現し、ハンクも女性に変装する。
ついにメニーは女性の名前「サラ・ジョンソン」を思い出す。
喜ぶ2人は、「サラと付き合えたかも知れない」人生を再現するために、あらゆるシチュエーションを再現する。
メニーも木材を腕で切断したり、口からガスを出し、銃のように弾を発射するなど、様々な「機能」を発揮する。
ある夜、メニーはハンクこそ理想の彼女だと言い出し、キスをしようとするが、ハンクは我に返って拒絶する。
翌日、ハンクとメニーはぎこちない関係のまま故郷を目指すが、古びたパイプを橋にして渡ることに失敗して川に転落してしまう。
ハンクは沈むメニーをつかみ、キスをする。
ハンクの肛門に詰まっていたコルクの栓が抜け、ガスで急浮上したことで助かった。
ついに故郷にたどり着いたハンクと、真実を知るメニー
やがて電波が入る場所までたどり着くと、ハンクはサラのSNSを確認する。
そこには彼氏の姿もあった。
ハンクはメニーに事情を説明しようとするが、そこに野生のクマが現れ、ハンクたちに襲いかかる。
ハンクはメニーの「機能」で撃退しようとするが、メニーはサラに彼氏がいることを知ってしまい絶望。「機能」が使えなくなってしまう。
さらにガスの暴発で、ハンクともども木の上まで吹き飛んでしまった。
メニーここで、自分の過去がハンクの過去だと知って絶望する。
さらにハンクに奇妙な幻覚を見せると、ハンクは木から落ちてクマに襲われてしまう。
襲われて気を失っていたハンクは、気づくとメニーに背負われていた。
森を抜けると、そこはサラの家の庭だった。
サラの娘に見つかったハンクは動揺するが、そこにサラまで登場する。
ハンクはサラに自分が遭難していたこと、そこでメニーを見つけたことを説明すると、救急車や警察、マスコミ、疎遠になっていた父が駆けつける。
ハンクはメニーが遺体として処理されることを拒み、メニーを担いで森に逃げ込んでしまう。
一同があとを追うと、ハンクとメニーが作り上げた思い出の場所を目撃する。
やがて海岸まで逃げてきたハンクだが、メニーに不思議な力があることを説明すると、メニーと同じように、お尻からガスを出す。
周囲から白い目で見られるハンクは気にする様子もなく警察に捕まるが、ガスの音はまだ止まらない。それはメニーが出している音だった。
メニーはガスの浮力によって、自力で海に入ると、そのまま沖へと去っていく。
周囲が驚愕の表情の中、ハンクはメニーが去っていく姿を愛おしそうに眺めるのだった。
映画『スイス・アーミー・マン』のあらすじを簡単にまとめてみた
映画『スイス・アーミー・マン』の結末を、分かりやすくまとめてみました。
- 遭難しているハンクが、お尻からガスを出す死体を発見。死体を使って島を脱出する。
- 故郷を目指して森に入るが遭難。死体に愛着を持つと喋りだし、メニーと名付ける
- メニーはハンクが惚れていたサラに興味を示し、ハンクはメニーの思い出として自分の思い出を教える。
- 故郷を目前にして、メニーは自分の過去がハンクの過去だと知り絶望する。
- ハンクとメニーは仲直りし、サラの家にたどり着く。ハンクはサラに思いを告げられなかったが、メニーを海に返すことで友情を守った。
死体を使ってサバイバルという、なかなか罰当たりな設定ですが、中身は男の友情と恋に奥手な青年の心境を丁寧に描いたドラマでもありました。
ラドクリフくんが屁をこく死体の役を演じる「スイス・アーミー・マン」をNetflixで鑑賞。屁のファイヤージャンプや口からシャワーのごとく水を吹き出したりするシーンに大爆笑。ポール・ダノのシリアスな演技にもひとひねりあって大満足でした。 pic.twitter.com/gmbupNibIl
— マクノスケ (@makunosuke) October 17, 2020
アマプラで『スイス・アーミー・マン』鑑賞。無人島に漂流した男が浜辺で見つけた死体を使って故郷を目指す。ほ、本当にこんな話なんです!気弱な主人公とスイスアーミーナイフみたいに万能な死体(ダニエル・ラドクリフ)の奇妙な関係性がとても良い。こんな変な話なのに最後感動するとは思わなかった pic.twitter.com/YthqoHz2yE
— ビニールタッキー (@vinyl_tackey) July 20, 2020
映画『スイス・アーミー・マン』は下品なのにエモい!
あらすじでは控えていましたが、映画『スイス・アーミー・マン』ではかなり下世話な会話が繰り広げられます。
かなり放送禁止用語が飛び交う内容となっていました…汗
あとオナラの頻度が尋常じゃないです。
オナラによってハンクは幾度となく命を救われています…。
こうやって書くと、なんて品のない映画なんだ…と思われるかも知れません。
しかし、作中ではハンクとメニーによる奇妙な絆をエモーショナルに描いており、サントラの爽快感がより本作を「アツい友情もの」の要素を強くしています。
会話は下品だけど、描いている絆は非常に感動的というギャップが最高の作品です。
ラストでオナラをしながら沖へと去っていくメニーと、それを優しい目で見送るハンクの表情が、この映画が友情を描いた作品だと証明していました。
映画『スイス・アーミー・マン』で流れる「あの曲」の意味とは?
映画『スイス・アーミー・マン』のサントラを手掛けるのは「マンチェスター・オーケストラ」のメンバーであるアンディ・ハルと ロバート・マクダウェルが手掛けました。
監督のダニエルズが「マンチェスター・オーケストラ」のファンであり、なんと本作は撮影前にサントラを収録したそうです。
特に印象的な楽曲はエンディング曲の「A Better Way」。
また、作中でポール・ダノ演じるハンクが口ずさむフレーズや歌詞も印象的です。
例えば無人島を脱出したあとも、森で遭難し、洞穴で雨を凌ぐシーンではこんな歌詞を口ずさんでいました。
助かった てっきりそう思ったんだ だけどバカだった 俺は死んでしまう
どこから来たんだ コットンアイ・ジョー
歌詞が異なりますが、これはエンディングで流れる「A Better Way」とメロディは同じです。
本編では「ハンクの母親が、眠れないときに歌ってくれた歌」として歌われました。
最後の「コットンアイ・ジョー」の一節に関しては、レッドネックスの「コットンアイ・ジョー」の歌詞をもじっていると思われます。
コットンアイ・ジョーとは?
コットンアイ・ジョーとは、二十世紀前半に北アメリカの英語圏で知られるようになった民謡で、現在は1994年にスウェーデンのユーロダンスバンド「レッドネックス」によるリミックス曲が有名です。
ハンクがサラと出会ったバスの乗車を再現する場面で、メニーが歌う曲は「コットンアイ・ジョー」のカバーとなっています。
コットンアイ・ジョーがいなかったら ずっと以前に結婚していた
この歌詞もハンクがサラと出会ったときの心境を表した一節です。
「コットンアイ・ジョー」は作中でハンクが人生でつまづいてきた、あらゆる要素に置き換えているのでは?と感じました。
父との不仲、母の不在、女性に対して異常に奥手…。
これらをコットンアイ・ジョーに置き換えているように思います。
ちなみに、Cotton-eyedには「目がとろんとした」など、一目惚れを意味するとか…。
サラに一目惚れしたハンクそのものを指しているのかも知れません。
映画『スイス・アーミー・マン』まとめ
今回ダニエル・ラドクリフが死体役を熱演?した映画『スイス・アーミー・マン』のネタバレや感想をご紹介しました!
ぶっ飛んだ設定の本作ですが、中身は男と死体の友情を描くという、奇妙だけでど感動する友情映画でもありました。
特にアンディ・ハルとロバート・マクダウェルによるサウンドトラックが最高で、さすが撮影前にサントラを収録しただけあるなと感動しました!
鑑賞する際は、ぜひ音楽にも注目してほしいです!
今回も最後まで読んで頂き、ありがとうございました!