映画【ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ】のネタバレ!変貌する時代に決して変わらないものとは

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ラストブラックマン・イン・サンフランシスコポスター

出典:IMBD

2019年、インディペンデント映画(独立系映画)を対象に行われる映画祭「サンダンス映画祭」で監督賞と審査員特別賞をW受賞した本作『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』。本作でA24プランB、人気スタジオが映画『ムーンライト』以来再びタッグを組んだことは日本でも話題です。

本記事では、2020年10月9日に日本公開される映画『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』のあらすじをネタバレ付きでご紹介していきます!

映画『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』の予告動画がこちら!

ジャンル 自伝的ヒューマン・ドラマ
日本公開日 2020年10月9日
監督 ジョー・タルボット
主演 ジミー・フェイルズ

ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』の監督を務めるのはジョー・タルボット。あまり聞き慣れない名前もそのはず、長編映画初挑戦の新人監督です。本作は、監督の友人である“ジミー・フェイルズ”の自伝ストーリー。脚本は友人ジミーと2人で書き上げ、さらにジミー本人が主人公としてジミー役を演じています。

ブラック・コミュニティのお話ですが、監督は黒人ではありません。映画『ムーンライト』同様、モチーフはブラックでありながらもあらゆる人種のあらゆる年代に届く作品。超鋭利、かつ深く届く……針治療ムービーがまたひとつ爆誕なのです。

映画『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』のキャストを紹介!

ラストブラックマンキャスト

出典:IMBD

本作『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』は、アメリカでジェントリフィケーションと呼ばれている“家賃高騰問題”がテーマに据えられています。

ナイーブな移民問題に切り込みながらも「自分の居場所」「環境の変化」という、いつか誰にでも降りかかる人生の課題に道標を与えんとする本作。

主要人物を演じるふたりの若者の“生きた演技”があってこそ、形になった作品に違いありません。

主人公ジミー役/ジミー・フェイルズ

ジミー・フェイルズ

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アメリカ・サンフランシスコで生まれ育ったジミー・フェイルズ

監督・ジョー・タルボットとは地元の幼なじみ。2人で作った短編映画が、冒頭にも紹介したサンダンス映画祭でプレミア上映されたことがきっかけで、本作の企画がスタートしたのだそうです。

ジミーの実体験を元にしている本作。ジミー本人役で出演する彼は紛れもない「主役」なのですが、まだかなり情報が少ない青年です。

親友モント役/ジョナサン・メジャース

ジョナサン・メジャース

出典:IMBD

大学の演技科出身で、2017年にスクリーンデビューを果たした新人ジョナサン・メジャース

すでに演技力に定評があり、映画『荒野の誓い』『ホワイト・ボーイ・リック』『囚われた国家』『ザ・ファイブ・ブラッズ』など、近年立て続けに映画出演している注目俳優です。

本作で演じたジミーの親友モント役がアメリカで評価され、その後HBOドラマ『ラブクラフト・カントリー』で主演に抜擢されています。この方、これから来そうですよ。令和のウィル・スミス(自分で考えた通り名が思いの外ダサくてびっくり)になるかもしれません……!

映画『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』のあらすじをネタバレ!

ラストブラックマン本編

出典:IMBD

本作『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』のネタバレにうつる前に、先にも少し書いた「ジェントリフィケーション」について改めて説明する必要があるかと思います。

アメリカでは、IT産業が主軸になり変わった地域にGAFAのエンジニアが移り住んでくるという現象が起きています。その都市の家賃は高騰、こうして不動産価格が上がれば先に代々住んでいた人々が住み続けることが困難になってしまう、というのがジェントリフィケーションという問題です。

貧富の差というとあっさりしたものですが、高級住宅地が増え続ければまともな中流家庭ですら住む家を探すことは難しくなってきます。そもそもアメリカは移民が開拓し築き上げた国です。こうして追いやられていくことを、諸行無常、世の中は移り変わるという風に納得できる人、そんなに多くはないでしょう。サンフランシスコ生まれの主人公ジミーもこれに抗いたい一人の青年なのです。

ジミーの故郷 “黒人居住地区”は消えた

サンフランシスコで生まれ育った青年ジミー・フェイルズは、現在親友・モントの家に居候しています。ジミーが子供時代を過ごしたフィルモア地区はもともと“西のハーレム”と呼ばれる黒人居住区でした。しかし、現在は富裕層の暮らす高級住宅地に姿を変えているのです。

モントと一緒にフィルモア地区に今もあるジミーの「元・実家」に向かいます。ヴィクトリア様式の美しい家、これがジミーが生まれ育った愛しい故郷なのです。現在の住人が居ないことを確かめ、ジミーはモントに見張りをさせて敷地内へ入っていきます。

勝手に元・実家のペンキを塗り直すジミー、そこに身なりの綺麗な白人夫婦が帰宅します。「いい加減やめて頂戴!」これまでもジミーはこの家の補修を勝手に行っているのです。「警察を呼ぶ」とブチ切れる婦人に「もう直ぐ終わるから〜」と平気で答えるジミー。物を投げつけられて、やっとジミーはペンキ塗りをやめて退散します。

ジミーとモントはスケボーに二人乗りして坂を降りていきます。船着き場についたふたり 。そこでモントはコツコツと書き進めている脚本にとりかかります。

ある日、いつものようにジミーとモントはフィルモア地区の家に向かいました。すると、そこには引っ越し業者のトラックが。業者によると、住人の親が亡くなったことで、この家の所有権を巡り遺族間で揉めているのだとか。なかなか片付く問題ではないようで、決着するまでには何年もかかること。その間、この家は無人になるということを知ります。

ということは……?この家の所有権は、今誰にも無いということ!ジミーは生まれ育った家の中へ忍び込みます。懐かしい気持ちで階段を駆け上がり、転んでしまうジミー。美しい家です。愛しい家です。今では観光客すら訪れるこの名館で、自分は育ったのだ、と……。

外では不動産バイヤーが客を引き連れ、この付近の家について説明していました。「1850年代に建てられた住宅です」という解説に、突然割って入るジミー。「この家は、1940年代に俺のじいちゃんが建てたんだ」。時代が違うと反論する不動産バイヤー。それにジミーは言い返します「じいちゃんが第二次大戦中に移住した家だ」「ここの土地を買ったんだ」「窓から屋根まで、全部俺のじいちゃんが建築したんだよ!」。

「俺のじいちゃんはサンフランシスコ初の黒人だったんだ」

ジミーはモントと一緒に伯母のワンダの元に訪れます。居候から卒業したと言い、以前使っていて預けていた家具を譲ってくれるよう頼みます。そうして家財一式をフィルモア地区の家に運び込むジミーとモント。

隣人に引っ越しの挨拶をするジミー。広い家です。部屋を使って演劇をするようにモントに声をかけます。いつも脚本を執筆しているモントは、仲間を集めて早速リハーサルを始めました。仲間の一人である青年・コフィはフィルモアの家の美しさに驚きます。「この家は“サンフランシスコに来た最初の黒人”という異名を持つジミーの祖父が建てた」と親友の家を説明するモント。

しかし、翌日モントの家にいる二人に飛び込んできたのは、コフィの訃報でした。昨夜、喧嘩の果てに銃で撃たれて命を落としてしまったのです。突然の仲間の死に失意のジミーとモント。実はモント、コフィのために脚本を作り始めていたのです。「亡くなったコフィのためにも完成させるべき」と励ますジミー。

こうして、フィルモアの家に戻った二人にさらに追い討ちをかける出来事が。ジミーとモントが叔母の家から運び込んだ家具が、全て外の歩道に出されています。いくら空き家とはいえ、ジミーは不当に住んでいたわけですから、当然といえば当然。門には“売り家”の張り紙が貼られているのでした。

故郷を買い戻したい。青年の夢は無残に……

ジミーとモントはフィルモアの家を買い戻すために奔走し始めます。ジミーは銀行に出向き、住宅ローンの問い合わせ。最低でも400万ドル、と提示された元・実家の価格にジミーは動揺します。頭金の20%も、とても支払えるような経済状況ではありません。「若い黒人で貧しいと思うだろうが、いくら高い利息でも構わない、必ず全額返済するから」とフルローンを希望するジミーを銀行は相手にしませんでした。

一方、モントは不動産屋にいました。不動産屋の広告ではフィルモアの家の建設年は1800年代となっていて、この旧館の価格を吊り上げる原因でもありました。実際はジミーの祖父が1946年に建てた家であることを主張、過剰広告だと指摘するモント。

すると不動産屋は登記書を取り出します。そこには、フィルモアの家は1800年代に建築家が建てた家であること、ジミーの家族は90年代にはフィルモアの家の所有権を失っていたことがはっきりと書かれていました。

事実を知ったモントがフィルモアの家に戻ると、ジミーは歩道に出された家具を家の中に戻していました。立ち退かなければいよいよ警察に捕まってしまう、モントは親友を説得します「またうちで居候すればいい、一緒に暮らそう」。しかし、「この家以外に自分の居場所はない」と言い切るジミー。幸せの象徴であったフィルモアの家を、どうしても手放したくないのです。

街を出たジミーは、それでもジミーか?

数日後、フィルモアの家の屋根裏には椅子が並べられ、正装した仲間たちが次々と集まってきました。モントは『ラスト・ブラック・マン・イン・サンフランシスコ』というタイトルの戯曲を書き上げ、今日ここで一人芝居を披露するのです。

チラシを配りの甲斐もあり、屋根裏は満席。コフィを悼む芝居のあと、マイクを向けられたジミーは「人間は一側面だけじゃない」と語ります。この言葉を聞いたモント、この家がジミーの祖父が建てたものではないことを暴露します。

実はジミー、自分の主張「祖父がこの家をたてた」が嘘だということに自分でも気づいていたのです。幼いジミーが祖父や父から英雄譚を聞かされ、それを膨らめて話しているうちに、まるで真実のように語られていたのです。ジミーがあまりにも長い間、この主張をしてきたため血縁者でさえも嘘であることを忘れていたのでした。

ただ、ジミーの家族は一度はフィルモアの家を所有したのです。ジミーはここに住み、育ちました。ジミーは「フィルモアの家にいると自分が特別だったような気がする」と言います。この家に居たい、と訴えるジミー。叔母のワンダは諭します。「本気で仕事をすれば、この家を自分の物にできる可能性もあるのよ」「街を出ても、あんたが負けたということじゃ無いの」。

映画『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』の結末は……

ラストブラックマンラスト

出典:IMBD

大波乱の翌日、ジミーはモントに会いにいつもの船着場に向かいます。昨夜の暴露について謝るモント。フィルモアの家に固執するジミーのことを案じての行動だったとはいえ……。ジミーもモントに謝ります。「嘘が事実であって欲しかったんだ」。仲直りした2人はモントの家へ戻り、テレビを見て過ごしました。いつもの夜です。

翌朝、起きたモントはジミーからの置き手紙を見つけます。「直接お別れを言わなくてごめん」「親友でいてくれてありがとう」。突然の別れに唖然とするモント。そのままフィルモアの家に自然と足を運び、思い出を反芻させます。

フラフラと船着き場に辿り着き、波が打つのを見つめるモント。小さく小さく見えるのは、小舟に乗り、オールを漕ぐジミーの姿です。サンフランシスコの橋、ゴールデンゲートブリッジから小舟は離れ、どんどん小さく消えていきます。

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