『ゆれる人魚』と童話『人魚姫』との違いとは?人魚姉妹のファンタジーでホラーなミュージカル映画の魅力

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アンデルセンの童話『人魚姫』。人間に恋した人魚の切ない恋物語を知らない人はいないのではないでしょうか。

この物語をモチーフにして、去年とある映画が映画が公開されました。その題名は、『ゆれる人魚』。ポーランドの女性監督であるアグニェシュカ・スモチンスカ監督独自のアレンジを加えた本作は、上映当時には上映館が少なかったにも関わらず話題となりました。

今回は7月にAmazonプライムビデオに追加され、ご家庭でも手軽に視聴できるようになった本作の魅力を紹介していきます。

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子供向け童話「人魚姫」との違いは?『ゆれる人魚』は大人のためのおとぎ話

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本作は元となった童話『人魚姫』とは設定に様々な違いがあります。『人魚姫』では王子に恋し、人間の世界に上がってくる人魚の娘は1人です。しかし、本作ではシルバーとゴールデンという人魚の姉妹が主人公となります。さらに、王子ではなくナイトクラブのベーシストであるミーテクに恋をするのは姉のシルバーのみ。そして人魚たちは童話で語られるような、優しく可憐な乙女なだけではなく、人を主食とする化け物の一面も持っているのです。

汚れ一つない美しいお城が舞台となる『人魚姫』と比べ、酒とストリップを提供するナイトクラブで話が展開される『ゆれる人魚』。舞台から漂う淫靡な匂いからも、これが現代を生きる大人向けに作られているというのを嗅ぎとれるのではないでしょうか。

姉妹が歌うミュージカル、声を失わない人魚たち

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『人魚姫』では人魚の娘は陸に上がるため、海の魔女にヒレの代わりに脚を生やしてくれるよう頼みにいきます。その代償に、魔女は人魚姫の美しい声を求め、人間の姿となった人魚姫は声を失ってしまうのです。

しかし、『ゆれる人魚』の姉妹は人間の姿となっても声を失いません。それどころかその美貌と人を魅了させる歌声で、ナイトクラブで注目のスターとなります。声を失い歌えなくなった人魚姫の物語をモチーフにしながら、逆にミュージカル映画として表現するという大胆なアレンジには舌を巻くばかりです。

姉妹が大きなグラスを模したセットに入り人魚の姿で歌う姿は、幼い頃に目を輝かせたクリームソーダのような特別感、そしてさくらんぼのアクセントの愛らしさも感じます。そうかと思えば目元を黒く囲み、パンクロックバンドのような攻撃的な歌を歌い激しく踊る姿は、まるで少女の不安定で写り気の強い心情を反映したかのようです。

ギリシャ神話では、女の姿をした海の怪物セイレーンは歌で船乗りを誘惑したと言われています。少女と女性の間にいるような、そして人と異形を揺れ動くような姉妹のミュージカルは、まるで人を惑わせたセイレーンのように誰もが心を奪われてしまうのです。

グロテスクホラーとしての一面。人を食らうという抗えない本能

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人間に恋した人魚の姿を軸として展開されていく本作。これは『人魚姫』の物語と同じです。しかし、喋れず守られる存在であった人魚姫とは違い、本作の姉妹たちは陸に上がってからも人魚の本能である「人を食らう」という業から逃れられません。

そのため、人間を襲ってその肉を食らうというシーンが度々登場します。サメのように尖った歯を見せて、口元を血まみれにして人肉を食べる姿はまさに化け物そのもの。歌い、踊り、ナイトクラブで人々に笑いかける少女の姿はかけらもありません。特に妹のゴールデンは人魚の本能に忠実で、彼女が人を食らった後人魚のヒレを引きずりながら這いずる姿は、ホラー映画に出てくる海の怪物を彷彿とさせます。

愛らしく忠実な少女だと思って接していたら、全く違った姿に変貌する。これは、劇中にでてくる男たちだけではなく、スクリーンの前で見ているわたしたちにも共通する恐怖として襲いかかるものです。

美形の男子に恋をして、気を引こうとするシルバーの思春期の少女らしい一面、一緒に過ごしてきた姉妹の興味が出会って間もない男に向いて、面白くないゴールデンの気持ち。「その気持ち、わかるよ」と頷いていると、突然人食いの化け物の姿が現れるのです。油断していたところに入り込んでくるという表現は、深く私たちの心に突き刺さり本作の世界にのめり込ませます。

人魚たちをとりまく魅力的な登場人物たち

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本作では姉妹たちを中心にストーリーが動くため彼女たちの魅力に目を奪われがちですが、他の登場人物たちも脇役として片付けるにはあまりにもったいない魅力があります。

シルバーが恋をするベーシスト・ミーテクを始め、ナイトクラブのオーナー、ナイトクラブの女性シンガー、また、恋が叶わなければ泡になってしまうと姉妹に教えた魚人・トリトンなど、様々な人たちが人魚の姉妹を取り巻いているのです。

物語に深く関わってくるため彼らの中ではミーテクに注目しがちですが、筆者が推したいのは、ナイトクラブの女性シンガー・クリシャです。始めてナイトクラブが映るシーンでは彼女の美しくも妖艶な歌声から始まります。『最高の気分よ』という歌詞を歌い上げる彼女の姿は、これからどんな物語がはじまるのだろうという気分をさらに盛り上げてくれます。

また、作中では夢の中のような世界で彼女も人魚になり、姉妹2人の母親のような行動を取っています。血の繋がりはもちろんなく、しかも人外である彼女たち。クリシャもまた人魚たちの歌声に心奪われ、倒錯しているだけなのかもしれません。しかし、優しく2人を抱きかかえる姿には、人間たちの世界に2人だけで現れた人魚たちへの同情や母性のような感情を感じるのです。

ミュージカルにホラー、恋物語…少女の成長のように様々な要素が混ざった作品 

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「本作は何のジャンルに属する映画なのか?」こう問われると言葉に詰まります。何故なら本作はさまざまな要素が詰まり、その移り変わりで構成されている映画と言えるからです。

人間と人魚のラブストーリーでもあり、人を食らうというグロテスクなホラーの一面も持っている。さらに、ミュージカル作品でもあり、同性愛の要素まで秘めている。その姿は、まさに少女の成長のような移り変わりで構成されており、この映画全体が人魚たちのゆれる心情の変化を表していると言っても過言ではないのではないでしょうか。

「一味違ったファンタジーが観たいという人」にも、「子供が夢見るような純粋なラブストーリーは見飽きてしまった」という人にもおすすめできる本作。AmazonプライムビデオやU-NEXTで配信されていますので、ぜひ一度視聴してみてはいかがでしょうか。

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