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『ペット・セメタリー』「ホラーの帝王」スティーヴン・キング作品中 “最恐”の小説が映画に!

『ペット・セメタリー』より、ペット霊園

© 2018 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

「モダン・ホラーの巨匠」の異名を持つ作家、スティーヴン・キング。2019年の秋、『IT/イット THE END“それ”が見えたら、終わり。』に『ドクター・スリープ』と、彼の小説の映画化作品の公開が相次ぎました。それに続くように、2020年1月17日、キングの小説の中でも最高に恐ろしいと言われている小説の映画化『ペット・セメタリー』が公開されます。2度目の映画化となるこの作品について、原作も含めてご紹介しましょう。

『ペット・セメタリー』とスティーブン・キング

『ペット・セメタリー』より、エリー

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キングの作品の多くに見られる特徴は、彼の出身地であるメイン州を舞台にしていること、日常生活の中に普通に存在している小さなきっかけからとんでもない恐怖が襲いかかってくるというパターン、といったところでしょうか。たぶんキングは、そのように自分に身近なものを題材にすることで、「リアルな恐怖」にこだわったのでしょう。『ペット・セメタリー』もまた、そういった「キングの王道」の作品の一つです。
この小説が発表されたのは1983年ですが、それ以前に仕上がっていたものをキングがなかなか出版したがらなかった、と言われています。「あまりに恐ろしい内容なのでキング自身が発表をためらった」などと噂されていました。彼や家族に実際に起こった出来事をヒントにしているため、先ほど挙げた特徴が最も色濃く出ることになり、結果的にかなり私的な作品に仕上がったようです。その意味では、キング自身にとってかなり「恐ろしい」作品かも知れませんし、いずれにしてもそのことが彼に出版を躊躇した理由の一つかも知れません。
タイトルの「ペット・セメタリー」は「ペット霊園」という意味ですが、原作とその日本語タイトル、そして映画版の原題はすべて『ペット・セマタリー』になっています。これは、物語の中に登場するペット霊園の入り口に子供が書いた看板が掛けられていて、その綴りの間違いをそのままタイトルにしたからです。映画版の邦題は正しい綴りでの発音に戻されているので、ちょっと混乱するかも知れませんね。
この小説は1989年に映画化されて大ヒット、カルト的人気を誇っています。キングが自ら脚本を執筆していて、ストーリーはかなり原作に忠実です。主題歌をラモーンズが書き下ろしで歌っていますが、これはロック好きのキングからのリクエストだったと言われています。3年後の1992年には、当時『ターミネーター2』で大ブレイクしたエドワード・ファーロングの主演で、続編『ペット・セメタリー2』が製作されました。
そして今回のこの作品は、30年ぶりのリメイクというわけですが、アメリカでは「最高のキング映画の一つ」とまで絶賛されたそうです。

今回の『ペット・セメタリ』は…

『ペット・セメタリー』より、ゲージと猫のチャーチ

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医師のルイス(ジェイソン・クラーク)は、妻のレイチェル(エイミー・サイメッツ)、8歳の娘エリー(ジェテ・ローレンス)、生後間もない息子のゲージ、そして猫のチャーチとともに、都会からメイン州の田舎町に引っ越してきました。彼らが購入した家の裏にはペットの墓地があり、その奥には異様な雰囲気が漂う森が広がっていました。
レイチェルが子供たちとともに実家に帰省していたある日、チャーチが家の近くの道路で車に轢かれて死んでしまいます。幼い子供たちにどう説明すればいいのか悩んだルイスは、エリーたちに内緒でチャーチの死骸を森の中に埋葬します。ところが翌日、外見も性格もまったく豹変したチャーチが家に戻って来ます。醜く凶暴になったチャーチは、まさに「別の生き物」になっていました。驚くルイスに、隣人のジャド(ジョン・リスゴー)は、森にまつわる恐ろしい話を聞かせます。
やがてエリーが誕生日を迎えますが、そんな日に一家をさらなる悲劇が襲います。ルイスは悲しみのあまり、森で「禁断の行為」を行ないますが、それが悲劇を恐怖へと変えてしまいます…。

愛情が暴走してホラーに…(※ネタバレなしですが、ヒントあり)

『ペット・セメタリー』より、レイチェルとゲージ

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今回の映画化もわりと原作に忠実です。特に尊重されているのが、原作のテーマです。愛する子供を失った親の悲痛な思いを描く「家族愛」と、その復活を強く願うがゆえに禁断の手段を用いてしまう「人間の愚かさや弱さ」。そして、そんな人間ドラマ的な要素が「愛情の暴走」によって結びつき、結果的にとんでもない恐怖を引き起こすという、実にキング作品らしい展開。実はこれは、日本の怪談ものにも共通するものなのです。
そもそもこの映画、最近の欧米のホラー映画にありがちな、ショッキングな描写や大きな音で脅かすような演出はほとんど使わず、ジワジワと着実に観客を怖がらせる手法が中心になっています。これはまさに日本の怪談ものの特徴でもあります。
ストーリーの基本的な部分も原作や89年版とほぼ同じですが、後半の展開は大きく違っています。もちろん、ここではこれ以上詳しくは書きませんが、この改変のおかげでクライマックスがこれまでとは違った形で盛り上がります。しかもそれはそれで「キング的」な展開と言えそうだし、何よりこれまでよりもはるかに怖い展開なので、恐らく原作のファンも納得するでしょう。この作品がアメリカで絶賛された理由は、このあたりにありそうです。

「リアルで人間的なホラー」という一見ミスマッチな組み合わせだけど、これが一番怖い。そんなスティーブン・キングの世界を代表する小説に新たな命を吹き込んだ映画『ペット・セメタリー』。この恐怖体験はぜひ劇場で!

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