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映画【37セカンズ】のあらすじ!期待の新星HIKARIは障がいモノをどう描く?NHK版との違いは?

『37セカンズ』 ユマ

©37Seconds filmpartners

2月7日に公開される『37セカンズ』は、生まれた時にたった37秒間仮死状態になったことで重い病気になり、体が不自由になった女性が主人公の映画です。しかし、障がい者とその周囲の人々をリアルに描きながらも、基本的には自立を目指してさまざまな挑戦を続けるヒロインの姿を生き生きと描いているので、観終わった時にはすがすがしい気分になれる作品です。優しさと温かさに満ちたこの映画の魅力をご紹介します!

『37セカンズ』あらすじ紹介(ネタバレなし)

『37セカンズ』 ユマ

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いろいろな悩み

生まれた時の状況から重い病気になったことで体に障がいを持ち、車椅子生活を送る23歳のユマ(佳山明)。一緒に暮らしているシングルマザーの恭子(神野三鈴)は過保護で過干渉気味です。親友の売れっ子漫画家SAYAKA(萩原みのり)のゴーストライターとして毎日働いているユマは、いずれは自分の名前で作品を発表したいと思っています。しかし、それでは「SAYAKAが2人になってしまう」ため、SAYAKAはいい顔をしません。

自立したい!

偶然目にしたアダルトコミックに創作意欲をそそられたユマは、作品を描いてコミック誌の編集長・藤本(板谷由夏)に見てもらいますが、作品の質の高さは認められたものの、リアルさがないと指摘されます。確かにユマには性体験がないため、風俗産業を利用して経験しようとしますがうまくいきませい。失意の中にいた彼女ですが、障がい者をメインに営業するデリヘル嬢の舞(渡辺真起子)や介護福祉士の俊哉(大東駿介)らと偶然出会い、彼らとの交流を通して自分の世界を徐々に広げていきます。

実力行使、そして…

ところが、そのことを知った恭子は誤解して激怒してしまい、ユマとの間にの決定的な亀裂が生まれてしまいます。ユマはついに決心して家出を実行し、舞のとりなしで俊哉の家に世話になります。SAYAKAの仕事も放棄し、呪縛に近い母親の保護からも逃れたユマは、今まではできなかったさまざまなことに挑戦し、自立への道を着々と歩み始めます。そんな中ユマは、遠い昔に家を出て行ったきり会ったこともない父親に、母への郵便を手がかりにして会いに行きます。そこで彼女は、今までまったく知らなかった衝撃の事実を知ります。そしてそのことで、彼女はさらに大胆な行動に出ることになります…。

重いテーマを明るく温かく描き、見る人にも希望を与える

『37セカンズ』 俊哉とユマ

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(※ネタバレはありませんが、かなり突っ込んだところまで触れています)

主演者へのこだわり

この映画の主演には実際の障がい者をキャスティングしたい、というHIKARI監督のこだわりがあったそうです。主演の佳山さんはその一般オーディションで選ばれ、演技は未経験でした。ユマと同じ病気を抱えていますが、実はオーディションで選ばれた彼女に合わせて当初の脚本が大幅に書き換えられたということです。これは、演技未経験の“新人”である佳山さんが少しでも演じやすいようにという配慮でもあったのかも知れません。通勤や入浴などユマの日常生活が丹念に描かれているシーンなどは、ある意味佳山さんのドキュメンタリーのような作りにもなっています。

良いこともそうでないことも、リアルに描く

障がい者やその周囲が直面する問題をきちんと描いていることも、この映画のそんな「リアル志向」の一つと言えます。仕事や“性”の問題などは本人たちも避けて通れないものですが、周囲の人たちも「こんな時、どう対処するべきか?」という、常に心がけなければいけないことです。まさに、障がい者やその関係者も直面する“現実”の問題と言えそうです。特に、性に関する描写や展開は、これまでの日本映画ではほとんど描くのを避けていたことですが、これもまた本人たちには切実な問題。それを真摯な姿勢で描いているのは、新鮮さと同時に製作者たちの誠実さも感じさせます。

逃げないヒロイン

その一方で、健常者に対するものと比較的近い感じでユマ“を特別扱い”しない舞や藤本の描写も印象的です。厳しくも優しい彼女たちの存在は、ユマが自立への想いを強くする原動力になります。そして(映画を観る)健常者にとっては、障がい者にどう接していけばいいのか?という疑問への一つの答えにもなっていると言えそうです。
ユマの才能をいいように利用しているようにも見えるSAYAKAのような存在も、恐らく現実にたくさんあるものかも知れません。でも、そんな問題にもユマは果敢に向き合うし、自分の現状を嘆くわけでもありません。彼女のそんな積極性や前向きさが、この物語をどんどん引っ張っていきます。こんなところも、これまでの日本映画ではあまり見られなかったものです。
とは言え、このような展開を健常者の俳優が演じると、観ていて違和感が出てきたかも知れません。だからこそ結末にも説得力があるし、観終わった時は私たちも実に清々しい気分になります。実際の障がい者を主演に、という監督のこだわりは、この点でも正解だったようです。

期待の新星監督HIKARIの才能には世界が注目!NHK版とは違いが!

『37セカンズ』 藤本とユマ

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そのHIKARI監督ですが、アメリカで大学に通いながら女優やフォトグラファーなどとして活動してこの業界でのキャリアを始めました。大学で発表した短編映画が数々の賞に輝いたことで国内外で注目され、長編映画デビュー作となったこの作品も、ベルリン国際映画祭で観客賞などを獲得しました。まさに、期待の新進国際派アーティストなのです。

ちなみにこの作品は、すでにNHK-BSなどで特別編集版が放送されましたが、そのラストシーン以降の展開が映画では描かれています。すでにテレビ放送時にかなりの反響があったようですが、それを上回る感動がこの劇場版(?)で味わえることでしょう。

デリケートな題材なので重くなってしまいそうなところを、誰にでも共感を得やすい作りにしてあります。そんなところからも、HIKARI監督の柔軟で優れた才覚が窺えます。観る人に元気と前向きな気持ちを与えてくれる傑作です。

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