ボクシング映画と聞くと、『ロッキー』をはじめ洋画をイメージする人は多いかと思います。
しかし日本にも、洋画に負けない熱量や迫力を持った、アツいボクシング映画は存在するのです!
今回は、1989年に公開された伝説のボクシング映画『どついたるねん』の見どころを、ネタバレありで解説していきます!
主演はボクサーとして活躍した赤井英和であり、彼の半自伝をベースにした『どついたるねん』は演出もストーリーも迫力満点です!
映画『どついたるねん』概要
現在は俳優として活動する、赤井英和の半自伝を元に制作された映画『どついたるねん』。
まだ俳優経験のほとんどない赤井英和が主人公のボクサーを演じると、口コミで評判が広がっていきました。
赤井英和は1985年に行われた大和田正春との試合で、意識不明の重体に。
奇跡的に生還できたものの引退を余儀なくされました。
しかし撮影では、危険を承知の上で吹き替え無しでボクシングシーンを熱演!
相手は当時のミドル級チャンピオン・大和武士という徹底ぶりでした。
また、監督を務めた阪本順治は、映画『どついたるねん』がデビュー作。
初の監督作品でありながら、多くの映画賞も受賞しました。
近年は『一度も撃ってません』(20)や、稲垣吾郎を主演に迎えた『半世界』(19)があります。
映画『どついたるねん』キャスト・スタッフ
映画『どついたるねん』のキャストは以下のとおりです。
- 赤井英和/安達英志役
(引退を余儀なくされた人気のプロボクサー) - 相楽晴子/鴨井貴子役
(安達の幼馴染で鴨井大介の娘) - 麿赤児/鴨井大介役
(ナショナルジムのオーナー) - 原田芳雄/左島牧雄役
(安達のジムで雇われるコーチ) - 大和武士/清田さとる役
(安達の後輩ボクサー) - 笑福亭松之助/安達太郎役
(安達英志の父) - 正司照枝/安達秋子
(安達英志の母) - 大和田正春/イーグル友田
(安達が引退間際に試合をした選手) - 美川憲一/北山次郎
(バーのオーナー。ボクシング業界に強い憧れを持つ)
赤井英和は元ボクサーであり、「浪速のロッキー」として親しまれ、果敢な試合スタイルやコメントで人気を集めた選手です。
また、主人公安達が練習していたジムのオーナー・鴨井大介を演じる麿赤児は、映画監督・大森立嗣と俳優・大森南朋の父です。
他にも、美川憲一が安達の設立するボクシングジムのパトロンとなる役を演じています。
映画『どついたるねん』あらすじ(ネタバレなし)
人気プロボクサー安達英和は、イーグル友田との試合に負けると意識不明の重体となる。
緊急手術を受け一命を取り留めるも、引退を余儀なくされた。
安達が練習を積んだボクシングジム「ナショナルジム」では、安達の後輩である清田が練習に励んでいる。
テレビでは安達が記者会見を開いていおり、引退は医師が決めたことだと暴れていた。
その様子を見たジムのオーナーの娘、鴨井貴子はテレビを消した。
彼女をはじめ多くの人が、安達の見舞いに行っては「引退はしない」と殴られていたのだ。
退院した安達は自暴自棄な生活を繰り返し、自分に楯突く人間は誰でもかまわず殴ってしまう。
酔った勢いで公衆電話から、イーグル友田に電話越しで罵声を浴びせている安達を引き止める貴子。
しかし、電話口から聞こえてくるのは天気予報だった。
数日後、安達は世話になったナショナルジムでコーチをする約束を無視して、自分のジムを持つと宣言する。
パトロンとして、ボクシングの興行に憧れを持つ、ニューハーフバーのオーナー・北山次郎と共にジムを設立。
ナショナルジムから清田まで引き抜くなど、安達は自分勝手な行動ばかりをとる。
ある日、安達のジムに左島という男が現れる。
彼は元チャンピオンであり、安達のジムを聞きつけてコーチとして雇われる。
左島がコーチになったことで、清田はどんどん上達する。
しかし、テクニックの左島に対し、安達は派手に倒してこそ意味があると、2人のボクシングに対する意見が分かれてしまう。
迎えた試合で清田は勝利するも、その勝ち方が気に入らないと安達は大暴れ。
とうとう控室で意識を失ってしまう。
■映画『どついたるねん』のあらすじ(ネタバレあり)
意識を取り戻し、病院をあとにする安達。
外では貴子が待っていた。
幼い頃の話をしながら、貴子は本心では安達のことを心配していたが、安達にはボクシングを辞める選択肢はなかった。
その後、清田は突如現れた母親に連れて行かれ、安達のジムを辞める。
さらに安達の方針についていけず、殆どの選手が辞めていった。
パトロンである北山とも意見が食い違い、左島とも衝突したことで、安達はどんどん孤立する。
失うものが無くなった安達は、ついに現役復帰を決意。
しかしそれは、同時に死と隣合わせの決断だった。
安達は自分のコーチを左島に頼む。
最初は猛反対する左島だが、安達の熱意に押され、コーチングを決意。
ナショナルジムにも戻る安達だが、当然オーナーの鴨井大介はカムバックは危険だと反対。貴子は自分勝手な振る舞いばかりの安達に怒る。
それでも安達は2人を説得し、ジムでの練習を行う。
そしてカムバックの選手が決定する。相手はあの清田となった。
清田は別のジムで練習をしており、安達がこっそり様子を見ると、清田は安達の怪我を心配していた。
それを知った安達は、わざとテレビの取材で清田を挑発する。
試合が近づく中で、安達は左島にスパーリングを頼むが、怪我を恐れて左島は全力を出さない。
その様子に腹がたった安達は、試合直前にも関わらず左島を解雇。
左島は去り際に「あなたが死ぬのは、ここじゃない」と残してジムを後にした。
試合当日。カムバック戦の会場には、安達を一度は引退に追い込んだイーグル友田がいた。
彼もまた、その後の試合の怪我をして引退していたのだ。
試合が始まると、やはり清田は安達の怪我を考慮した試合運びを行なう。
安達は清田を挑発し、本気で来るよう仕向ける。
ついに清田の強烈なパンチが安達に入る。
次第に意識が朦朧とし始める安達。
これ以上は命が危ないと思った貴子は、安達に内緒で隠し持っていたタオルをリングに投げ込む。
審判が試合を止めようとする。それと同時に、安達の起死回生のパンチが清田に当たると、清田はリングに倒れこむのだった。
映画『どついたるねん』は、赤井英和に迫真のボクシングシーンに注目!
映画『どついたるねん』の見どころは、赤井英和によるボクシングシーンです。
それもそのはず。主人公を演じた赤井英和は元ボクサーなだけでなく、実際に命に関わる怪我を負っています。
にもかかわらず、試合のシーンも実際に本人が行っているのです。
引退後なのに演じた、吹き替えなしのボクシングシーンは、怪我の可能性も考えるとすごい緊張感です。
ほかにも練習シーンやスパーリングの場面など、安達の勝利に対する執念が見えるシーンも多数あります!
『どついたるねん』の監督・阪本順治とボクシング映画
映画『どついたるねん』を手掛けた阪本順治監督は、ボクシングのドキュメンタリー映画『ジョーのあした 辰吉丈一郎との20年』も撮影しています。
日本のプロボクサー・辰吉丈一郎を20年間捉えたこのドキュメンタリーには、一人の天才ボクサーによる苦悩や考え、人生観が伝わってきます。
映画『どついたるねん』にも通ずる、「ボクシング以外の選択肢がまったくない」という、研ぎ澄まされたボクサー精神は必見です。
映画『どついたるねん』まとめ
30年ほど前の映画にも関わらず、今なお邦画のボクシング映画として絶対的な地位を築いている映画『どついたるねん』。
「勝ちにこだわる」という次元を超えた「勝つ以外ない」男の生き様は、ボクシングに興味のない人にも見てほしいです。
試合や特訓のシーンはもちろん、主人公・安達やその周りの人々が抱える葛藤にも注目してみると、本作の凄みがより伝わると思います。
自分の魂を奮い立たせたいなら絶対見るべき作品です!