『アルキメデスの大戦』を『永遠の0』の監督が作る意味とは?戦艦大和は何の象徴なのか!?

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「この戦艦を作ってはいけない!」世界最大の戦艦大和建造を、そして戦争を数学の力で止めようとした1人の天才がいた!

『永遠の0』で特攻兵を描いた山崎貴が戦艦大和建造の秘密に迫る戦争サスペンス『アルキメデスの大戦』

豪華キャストで贈る全日本人必見のエンタメです。

映画『アルキメデスの大戦』の概要

『ドラゴン桜』『砂の栄冠』『インベスターZ』などで知られる人気漫画家・三田紀房の同名漫画を『ALWAYS 三丁目の夕日』や『永遠の0』で日本アカデミー賞監督賞を受賞した山崎貴監督が映画化。

1933年、世界最大の戦艦・大和の建造の計画に見積上の不備を見つけた天才数学者がそれを立証するために奔走する物語。

そしてなぜ戦艦大和は作られてしまったのか、戦争が始まってしまったのかを追う歴史ミステリーでもあります。

映画『アルキメデスの大戦』のあらすじ

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1945年4月7日、沖縄に向かう戦艦大和は鹿児島沖で米軍の戦闘機の猛攻撃を受けて、なすすべもなく転覆して沈んで行きます。

その12年前、日本は国際連盟を脱退、満州に進出するも各国の反感を買って世界から孤立し始めていました。

帝国海軍少将・山本五十六はいずれ米英との戦争になるのではという予感を感じており、その当時の戦争の潮流に合わせて戦闘機に予算を注ぎ込むべきだと考えていました。

しかし予算会議で少将・嶋田と造船中将・平山は世界最大級の戦艦の模型と見積を提出してきます。

海軍大臣大角をはじめ閣僚たちはその戦艦に魅了され、これがあれば戦争に勝てると浮き足立ちますが、山本と協力者の中将・永野は平山が作った見積もりがあまりにも安いことを不審に思います。

そんな中、山本たちは偶然、東京帝大をとある理由で退学したばかりの天才数学者・櫂直(かい ただし)と出会い、彼の計算能力で平山の見積の不備をついて建造を中止させるよう協力を求めます。

軍人が嫌いな櫂は最初は断りますが、このままでは戦争になり大勢が死ぬと言われ、やむを得ず依頼を受け、山本の計いで少佐として海軍省に入省。

櫂は2週間後の予算会議までに、平山案の見積の不正を暴かねばなりませんでした。

櫂は助手として付けられた田中少尉とともにまずは資料を手に入れようとしますが、嶋田一派の妨害にあいろくな情報が見つかりません。

しかし彼は天才ぶりを発揮して、実際に軍艦を見学して巻尺で測ったり、一夜漬けで造船の知識を叩き込んで、自分で図面を作って予算を次々に算出していきます。

映画『アルキメデスの大戦』の世間の評価

菅田将暉をはじめとするキャストの演技や冒頭のド迫力の映像、会議だけでエンタメにしている演出の巧さなどを褒める声が多数。

山崎貴監督を見直したとか彼の最高傑作だと褒める映画ファンも少なくありません。

映画『アルキメデスの大戦』の見所

楔としての冒頭の沈没シーン

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本作では冒頭数分で巨大戦艦大和が完膚なきまでに破壊され沈没していく場面が大スペクタクルで描かれます。

ヒロイックさは全くなく、乗組員は逃げ惑い、次々と死亡。

大和もひっくり返って船底を晒して沈んでいってしまいます。

この場面が冒頭にあることで、その後の櫂たちが大和建造を止めようとしているドラマは失敗に終わるということがはっきりわかってしまいます。

つまり、この映画の見所はなぜ大和ができてしまったのかを追うミステリー部分にあるのです。

主人公・櫂が天才的な頭脳と行動力で戦艦大和建造阻止へ着々と近づいていけばいくほど、我々観客は「ならば何故大和は結局作られてしまったのか」という疑問を抱くことになります。

そして終盤にその真相が明らかになったとき、エンタメを超えた全日本人に向けた苦いメッセージ性が明らかになります。

そしてこの映画は2019年の今、ヒットメーカー山崎貴の手によって作られる意義のあった作品といえるのです。

山崎貴がこの映画を撮る意味

まず、原作者の三田先生が漫画『アルキメデスの大戦』を書いた発端の話をしましょう。

ちょうど3年前の2016年8月5日の日刊ゲンダイでの対談『それでも日本人はまた戦艦「大和」をつくるだろう〜この国が抱える根本的な宿痾』で戦艦ヤマト建造を止める物語を作った理由を聞かれ、彼はこう答えています。

この漫画を描こうとしたきっかけは、2020年の東京オリンピック・パラリンピックのメイン会場となる新国立競技場建設計画で、当初は1300億円だった総工費が3000億円を超えることになったことへの疑問でした。

なぜそうなったのか? を考えているうちに、ふと戦艦「大和」が思い浮かんだんですね。建造費1億4503万円、当時の国家予算の4.4%もの巨費を投じて造られた戦艦「大和」が。

それでも日本人はまた戦艦「大和」をつくるだろう〜この国が抱える根本的な宿痾(三田紀房,戸高一成) @gendai_biz
週刊ヤングマガジンにて人気連載中の『アルキメデスの大戦』。単行本第3巻発売に際して、著者の三田紀房氏と「大和ミュージアム」館長の戸高一成氏とのスペシャル対談を公開する。

この競技場の件、結構ニュースになりましたよね。

それだけでなく、オリンピックの予算は当初は7000億円と言われていたのに対し、いざ準備が始まると3兆円もの予算が必要になるとの試算まで出されています。

詳しくはこちら

本当はもっと他の大切なことにお金をかけなければならないのに、いざ始めた大事業を無謀だとわかっていてもやめられない、周りに対してやめようと言い出せない。

そんな日本人の精神性が昔と変わっていないのがよくわかります。

三田先生は上記のインタビューで下記のように日本の最大の問題点について語っています。

三田 今、日本に何が必要なのかが分かっていない。結局、グランドデザイン(明確な目的を持って遂行される大規模長期計画)が描けてない。

日本は、島国なのが影響してか、スケール感があるものは、あまり得意じゃないな、と思うんですよね。ピンポイントで小さいエリアを巧く造るのは非常に上手なんだけど、大きな設計図を描いて、そこに何が必要か、と構想するのは意外と苦手。

いろんなところで議論を始めちゃって、纏まらないまま「じゃあ、グランドデザインはいいから、ピンポイントで造り始めよう」ってなる(笑)

それでも日本人はまた戦艦「大和」をつくるだろう〜この国が抱える根本的な宿痾(三田紀房,戸高一成) @gendai_biz
週刊ヤングマガジンにて人気連載中の『アルキメデスの大戦』。単行本第3巻発売に際して、著者の三田紀房氏と「大和ミュージアム」館長の戸高一成氏とのスペシャル対談を公開する。

つまりリーダーシップを発揮してすべてを目的に向けて計画して集約しているリーダーが今も昔もいないというのが問題点でしょうか。

ただし、ここまではまだ映画の企画が始まるずっと前の原作漫画『アルキメデスの大戦』に関する情報です。

今年作られた映画版『アルキメデスの大戦』に関して重要なのはまだ完結していない漫画を換骨奪胎して独自のラストを作っていること、それを作ったのがあの山崎貴監督だというところです。

映画版『アルキメデスの大戦』のラストではとある逆転の発想で、先ほどのインタビューで言われていた「グランドデザインがされていなかった」という点にして反論をしているのです。

それは単なる「戦争の勝ち負け」というものをはるかに超えた壮大な視点。

もちろんこの映画ならではのフィクションの解釈ではありますが、「大和建造は無駄ではなかった」と納得できる理由付けをしています。

そして山崎貴監督といえば、『SPACE BATTLESHIP ヤマト』で大和を蘇らせて宇宙に飛び立たせ、『永遠の0』で無謀な戦争の無謀な作戦で死んでいった若者たちを描き、先ほど三田先生が話題に出した東京オリンピック2020の総合演出を任されている人物。

そんな彼が『永遠の0』の対比的な前日譚のように戦争に突入した原因を作った上層部の人間たちを描き、大和建造に明確な理由付けを行い、そして未だに東京オリンピックという巨大な戦いに無謀に挑もうとしている日本をある種皮肉ってもいるのです。

また大和建造推進派の嶋田を演じた橋爪功と平山役の田中泯は『永遠の0』で無謀な特攻作戦を生き残って当時を語る老人の役を演じていました。

その2人が今回は戦争の原因を作った当時の老人を演じているという対比も皮肉です。

ヒットメーカーの山崎貴監督だからこそ、この題材を潤沢な予算で作り、シネコンで大規模公開して多くの日本人の目に届けることができました。

また少し本作終盤のネタバレをすると、櫂は合理性を超えて「巨大で美しいものを作りたい」という欲求に負けてしまってもいます。

これは大規模な作品や企画を任されるクリエイターの山崎貴監督本人の気持ちの投影でもあるでしょう。

無謀なことはできないしやってはいけないけど、そこにあるロマンに憧れてしまう気持ちもあるのです。

採算も倫理も無視して自分のやりたいことをやってしまう人間の業もしっかり描いています。

日本人への警鐘と監督の個人的な思いも存分にこもった一作。

もちろん、菅田将暉やベテラン俳優陣の名演、2週間というタイムリミットで不可能を覆していくカタルシス、日本最高レベルのCGも堪能できる見事なエンタメでした。

ラスト、竣工して海原を進む大和を見て櫂がつぶやく

「僕はね、あの船が日本という国そのものに見えるんだよ」

というセリフを聞いてあなたはどう感じるでしょうか。

『アルキメデスの大戦』ぜひ大スクリーンでご覧下さい。

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