映画【ばるぼら】のネタバレ!原作者・手塚治虫の“生き血的 傑作”、憑依型キャストで実写化

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ばるぼらポスター

出典:映画.com

漫画家・手塚治虫の生誕90周年企画、衝撃作『ばるぼら』の実写映画化。手塚治虫の実子である手塚眞監督がメガホンを取り、撮影監督にはクリストファー・ドイルを召喚、製作陣の気合の入りぶりが伝わってきます。

“黒手塚作品”と俗に言われる、ダークサイド漫画の中でも『アラバスター』でもなく『奇子』でもなく『ばるぼら』というチョイス……。嬉しい反面「異常性欲の男が主役の過激作がついに映画化!!」みたいなちょっと的外れな煽り、よく見かけます。

本記事では、映画『ばるぼら』の原作をネタバレ、さらに本作をよりディープに鑑賞するために……解説も混ぜつつご紹介していきます!

映画『ばるぼら』の予告動画がこちら!

映画ばるぼら』の予告の衝撃、「また、二階堂ふみが新キャラクターを確立している……!」。二階堂ふみさんといえば、映画『飛んで埼玉』での白鵬堂 百美役が記憶に新しいですよね。

ギャグ漫画の浮世離れしたオトコの娘役なんて、普通生身の人間が演じたら痛々しくなるところを、サラリラ〜と憑依してしまう……。本作『ばるぼら』でも役に憑依した彼女。もう、原作のばるぼらそのまんまですよ。一度生まれ変わったのでしょうか。

手塚治虫の“大人向け漫画”とは?

ここ数年、電子書籍でも手塚治虫作品が読めるようになり、若い層にも手塚漫画は浸透してきたのではないでしょうか。筆者の友人の令和ギャルも「待って、“ブッダ” ガチで面白い」と血相を変えていました。

手塚治虫といえば『鉄腕アトム』や『ジャングル大帝』。“子供に夢を与える系”の漫画として広く知られています。しかし実際は、アトムは生みの親の天馬博士に捨てられていたり、レオの父は人間によって殺されていたりと負の要素がストーリーを大きく動かしているパターンが大半なのです。

近年再び注目を集めているのは、手塚治虫漫画の中でもダーク要素が濃厚な大人向け漫画。そこには「これが人間の本質だ!」というような正義感はありません。そこそこの年齢の人間なら誰しも気がついている、“ヒトの醜い側面”を抽出し、丁寧に丁寧にデッサンしたような……。「もうこれ以上はやめてくれ!」と、繊細な方が読んだら胸が悪くなるような……。

映画『ばるぼら』のキャストを紹介!

ばるぼらキャスト

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「本当の実力派を連れてきたな……」という印象の、映画ばるぼら』のキャスティング。

原作のあらすじをネタバレしていく前に、なるべく鮮明に想像できるよう主要キャストをおさらいしていきましょう……!

“芸術の重圧に耐えられない男”美倉洋介/稲垣吾郎

稲垣吾郎

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本作の主人公・美倉洋介を演じるのは、稲垣吾郎。もともと表現力の高い役者さん、今回の役は新境地になり得るのではと期待されています。大手事務所に所属していた頃は、恋愛モノメインで出演していましたが……、映画『十三人の刺客(2010)』での鬼畜殿様役が上手すぎて、筆者ちょっと吐きそうになったのを思い出しました。

「こういうのもっとやればいいのに!」と思った記憶があります。とっても楽しみ。

美倉は“耽美派”の小説家で、そこそこの売れっ子として名を馳せていました。「そろそろ馬鹿でかいヒット作なんて欲しいよなあ」と贅沢な悩み、外からは順風満帆に見えます。ところが彼、異常性欲の癖に人知れず悩まされていました。

ある日、新宿で拾ったホームレス風の少女<ばるぼら>をなんとなく家に入れたことから本作のストーリーは動き始めるのです。

美倉の“異常性欲”はアクセサリーではない

表の顔は流行小説家、裏の顔は異常性欲に苦しむ壮年。美倉はこっそりマネキン人形や獣と行為に及び、健康な女性には全く反応しないのです。「それはそれは、おエロいことで……」と、いかにも成人漫画的な淫靡な設定ですが、そういうんじゃない。

外では耽美派・期待の流行作家。ところが家ではマネキンと、こそこそセックスですから。この異常性欲こそが、美倉の精神をバラバラに引き裂く要因であり、思わず連れ帰ったばるぼらに美倉が異常に執着していくきっかけでもあるのです。

“異常性欲”というと広範囲ですがよく知られて原因は、認知症や手術、事故のダメージなど脳の影響を受けて起きるパターン。さらに、自信や自己像の欠如、孤独を癒したいなど【強い願望】が引き起こすケースもあるのだそうです。中堅流行作家の強い願望……。

美倉の異常性欲は単なるダークな設定ではなく、流行作家をがんじがらめにする唯一の枷なのです。

“排泄物のような女”ばるぼら/二階堂ふみ

二階堂ふみ

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本作のヒロイン“ばるぼら”を演じるのは、二階堂ふみ。「あれは幻だったのだろうか」と予告でも語られていました。彼女は実体がある人間なのか……、それとも美倉が携えていた【強い願望】(異常性欲を引き起こすほどの!)が作り上げた幻覚なのでしょうか。

新宿の片隅に転がっていたアル中少女、ばるぼら。原作では“都会が何千万という人間をのみ込んで消化し、たれ流した排泄物のような女”と評されています。それを美倉はなんとなく気に入ってしまって、彼女を居候としてそばに置くようになるんですね。

ばるぼらは大酒飲み、不潔、平気で人前で素っ裸になります。さらに美倉の金を使い込んだりと、とにかくめちゃくちゃな少女なのですが、ついには美倉のタブーである異常性欲癖を邪魔するようになります。美倉は怒りますが、見かたを変えれば「邪魔してくれている」とも捉えられそうな“ばるぼら”のこの行為……。

“ばるぼら”とは何者だったのか

ばるぼらを手元に置くことで、美倉は小説のインスピレーションを得られるようになります。そして、ばるぼらに触発されて執筆した作品がベストセラー。ばるぼらは美倉のミューズになるのです。

この頃から、ばるぼらに異常に執着するようになる美倉。それは愛情か、それとも「彼女さえいれば傑作が書ける!」という功名心でしょうか。

本作で語られるばるぼらの正体は、まさしく“ミューズ”。ミューズとは芸術家を守りインスピレーションを与える女神のことで、ギリシャ神話に出てきます。ばるぼらはミューズの姉妹の末っ子で、美倉の元に現れた魔性の神だったのです。

「彼女は僕のミューズだ」。ばるぼらは本物のミューズ(神)だったのですね。

映画『ばるぼら』の原作あらすじをネタバレ!

ばるぼら本編

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原作『ばるぼら』で描かれたのは、ミューズを手に入れた小説家の栄光、そして転落。映画でも原作の終盤と同じシチュエーションのシーンが公開されていることから、結末も原作通りに演出するのではと予想されます。

ばるぼらがミューズ神、魔性の神……魔女であることを中盤では美倉に明かします。すると美倉は、これまでのばるぼらの言動を振り返り納得。現在のヒット作の誕生も、ミューズであるばるぼらの加護があってのことだったのだと……。

「芸術の女神と結婚する」。

魔性の神の姿になって美倉の元に再び現れた<ばるぼら>。浮浪者の少女だったとは思えないほど見違えた女の姿です。そして、美倉は自分がばるぼらを愛していることに気がつきます。

この愛情も、ばるぼらが魔性の神(魔女)だからこそ錯覚させられているのか……。そんな思いを振り切るように、美倉はばるぼらに「結婚したい」と申し出ます。

ばるぼらと過ごしていると次々と浮かび上がる小説のインスピレーション。美倉はばるぼらに夢中です。そんな中ばるぼらは、魔女である自分のために結婚式を“黒ミサ式”でやりたいと言いだします。黒ミサ式の挙式は秘密裏に行い、後日披露宴をしよう。という美倉の提案で、話はまとまります。

マリファナが回ってくる黒ミサ挙式で……

式当日、美倉は全裸にホウキを携えた黒ミサスタイルで式場にいました。この黒ミサ挙式を仕切る、美しい花嫁<ばるぼら>。美倉側の証人はほんの数名、もちろん全裸にホウキ姿です。生贄の獣を囲んだ異様な結婚式がついに始まります。

参列者総出で呪文を唱える中、マリファナが一服ずつ回されます。そこに「服を着ろ!」「式は取りやめだ!」と叫ぶ何者かの声。途端に警察が雪崩れ込み、参列者を逮捕し始めます。どうやら誰かがこの挙式のことを密告していたようなのです。

式場は大パニック。逃げ惑う参列者の向こう側に美倉が見たのは、泣き叫ぶばるぼらの姿でした。美倉は逮捕されましたが、ばるぼらと彼女の母代わりの女・ムネーモシュネーは、この場を逃げのびます。

黒ミサスキャンダルによって、美倉の社会的地位は窮地に追い込まれます。しかも、ばるぼらとはあれっきり。酒場も裏路地も、探せる場所は全て探しました。しかし結局、ばるぼらは見つかりませんでした。

「あれは、幻だったのだろうか」。

ばるぼらを失い落ちぶれた美倉は……

ばるぼらと引き裂かれた恐ろしい挙式から、6年が過ぎました。美倉はスキャンダル以降這い上がれず、流行作家の地位をとっくに手放していました。事件の1年後には得意の社長の娘・志賀子と結婚し、人から金を借りたり手持ちの本を売って自分の酒代を作る日々。

見かねた志賀子が父親のコネを使い、美倉にライターの仕事を紹介します。そして美倉は渋々出かけた取材先で、ばるぼらそっくりの女に出会うのです。

「一緒にやり直そう」と必死の説得も虚しく、自分のことを“ドルメン”だと名乗るばるぼら似の女。彼女を執拗に追い回した美倉は、ついにドルメンの首を締め殺してしまいます。そして自殺を図る美倉……。

ドルメンこそばるぼらだった!ミューズを連れ去る美倉

美倉は病院に搬送され、一命を取り留めていました。後から新聞を調べても、女の絞殺死体のことは載っていません。まるで、何事もなかったかのように。周りからは、美倉がただ一人で自殺を図ったように見えました。

ばるぼら無しでも小説を書くことだ」。美倉はこのどん底から立ち直る方法を模索していました。ところが、努力するほどばるぼらの存在は美倉の中で膨らんでいきます。ついには呪いの人形の幻覚まで見るようになってしまった美倉。夫の頭がおかしくなったと思った妻・志賀子は美倉を精神病院に入院させます。

入院先の精神病院で美倉が出会ったのが、ムネーモシュネー。黒ミサ挙式の時に、ばるぼらと逃げた母親代わりの女です。「もう一度ばるぼらに会いたい」と懇願する美倉。ムネーモシュネーは美倉をばるぼらに引き合わせます。

実はムネーモシュネーも魔性の神であり、あの事件の後ばるぼらの記憶を一時的に消していたのでした。だからばるぼらは、全て忘れて<ドルメン>として生活していました。

では、やっぱりあのとき自分が首を絞めて殺した女は……。いや、どうでもいい。いいのです、そんなことは。目の前のばるぼらを連れ去る美倉。ムネーモシュネーの制止を振り切ります。

映画『ばるぼら』のあらすじまとめ

  • 主人公・美倉は制作のプレッシャーから異常性欲癖を抱えていた
  • 外では流行作家というギャップが美倉をさらに苦しめていた
  • 新宿で拾ったフーテン娘<ばるぼら>に心を救われた美倉
  • ばるぼらがそばにいるとなぜか創作が捗る。彼女はミューズだった
  • 黒ミサ挙式に邪魔が入り二人は引き裂かれる
  • 6年のどん底を経験した美倉。ついに再会したばるぼらを誘拐する!

映画『ばるぼら』の結末の演出に注目!

ばるぼらラストシーン

出典:映画.com

魔性の神ムネーモシュネーに背いた美倉。彼はあと5時間で死ぬ運命を課せられます。この5時間、このままばるぼらと過ごしたい。するとばるぼらは「酒をのんで寝転んでいれば5時間くらいすぐだよ」と……。

二人は酒を飲みながら話をします。「そろそろ時間だ」というばるぼらの言葉に合わせたようにトラックが2台、ふたり目掛けて突っ込みます。トラックは横転、ばるぼらは跳ね飛ばされます。

美倉は瀕死のばるぼらを抱え、知り合いの別荘に身を隠します。なぜか美倉は助かりました。行方をムネーモシュネーに知られないようこっそりと食料を集めて帰ると、すでにばるぼらは息絶えていました。

翌日、別荘の外は深い霧に覆われて脱出できない状態になっていました。まるで何者かの意思によりばるぼらとふたり、この別荘に閉じ込められたようでした。この霧は6日続き、食料も尽き、美倉もばるぼらの後を追いゆっくり死んでいくものと思っていました。

ところが、美倉。椅子にかけたばるぼらの亡骸を見ていると……書きたくなってきたのでした。飢えと渇きの極限状態の中、遺作のつもりで長編小説を書き上げた美倉。

ムネーモシュネーは美倉を助けます。ムネーモシュネーも芸術の神ミューズですから、人生の最期を創作に費やした美倉の作家根性に打たれたのです。

しかし、美倉が生き続けるには条件があります。ばるぼらに関する記憶は全て消され、ただの年寄りとして余生を生きることです。何も分からなくなった美倉、後に残ったのは彼が霧の中で書き上げた小説ただひとつ。その小説のタイトルこそが『ばるぼら』。

つまりこれが、手塚治虫の『ばるぼら』。美倉洋介『ばるぼら』=手塚治虫『ばるぼら』。……さて、本当のばるぼらとは何者だったのでしょう。この作品の通り、魔性の神?それとも、新宿で見たままのフーテン娘か、美倉の幻だったのでしょうか。

ばるぼら』を書き上げた美倉でさえ、本当のところは分からないのです。

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