映画【CUBE(97′)】のネタバレ・新説!レブンIQブレブレの謎、数学の矛盾はCUBEが“アレ”だから?

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cube本編シーン
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1997年の公開から20年以上経った今でもファンを増やし続けている映画『CUBE』。「密室ホラー映画といえば?」の質問には多くの方が挙げる、かなり知名度の高いタイトルではないでしょうか。

よくできた面白い映画だな〜と思っていた筆者なのですが、実は数学ファンにとっては “とてもじゃないけど無視できない矛盾” が散りばめられた作品なのだそうです。

本記事では、映画『CUBE(97′)』の不自然な設定や数学的な矛盾点をネタバレ付きで紹介していきます。

さらに後半では、本作の矛盾点を知った筆者が「CUBEってそもそもこういうことでは?」と思いついた新説を書かせていただきます……!

映画『CUBE(97′)』の“矛盾”に数学ファン錯乱!

cubeヒロイン・レブン
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カナダ発、低予算映画にもかかわらず世界的にヒットした映画『CUBE』

監督のヴィンチェンゾ・ナタリ監督は、当時アニメ制作スタジオで働きながら短編の自主制作映画を作っていました。『CUBE』はなんと、ナタリ青年の初の長編作品なのです。

「設定が粗い」「伏線が回収できていない」など未熟さを指摘する評価が散見するなか、「これを撮らなければならない」という使命的な熱量を感じるのが本作の特徴でしょう。
設定の斬新さはもちろん、この確たる情熱みたいなものが世界に散布された末の大ヒットなのではないかと思うんですね。

映画『CUBE(97′)』の作品情報

cubeの主要キャスト
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ジャンルサスペンス・ホラー
制作年1997年
監督ヴィンチェンゾ・ナタリ
キャストモーリス・ディーン・ウィン、ニコール・デ・ボア、デヴィッド・ヒューレット他

映画『CUBE』は、わずか 6人の登場人物(オープニングで切り刻まれた男を含めれば7人)のみで進行していくシチュエーション・ホラー作品。

映画『CUBE(97′)』のあらすじ

見慣れない部屋で目覚めた男女。混乱しながらも6人の登場人物が出会い、揃って CUBE” からの脱出を試みます。

CUBE” は無数の立方体の部屋で構成された巨大な建造物。ほとんどの部屋には命を奪う残忍なトラップが仕掛けられています。

「扉に刻印された数字に素数がある部屋にはトラップがある」。“CUBE”の法則に気づいた一行は快調に部屋を渡っていきます。ところが法則を覆す事態が発生し、さらに最初の部屋に戻ってきてしまったことで「部屋が移動している」のに気がついて……。

映画『CUBE(97′)』の数学、ここがおかしい

考えるカザン
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キャラクターの緻密な人格設定、そして明確な悪意を持っているかのような謎の建造物 “CUBE”。この魅せる設定に初見は「おくちポカン」状態だった筆者。

それからも「ほんとよくできているな〜」なんて、繰り返しキャッキャ観ていたわけなのですが、数学の教養がある方々からすると「とんでもない矛盾!」「設定がめちゃくちゃ」なのだそうです。もう、筆者の知らない世界過ぎて楽しくて、ものすごく調べてしまいました。

ここからは映画『CUBE』の不自然な設定、数学的な矛盾を紹介していきます。

※筆者は学生時代、数学のテストで「0点」を取ったことのある音痴ならぬ“数痴”ですので、常識的なことに超びっくりしている可能性があります。ちなみに0点を取ったテストに空欄はひとつもなく、時間いっぱい精一杯回答した結果、ひとつも合っていませんでした。
この時の衝撃は忘れられません。むしろあの瞬間に、これからの生き方が見えた気がしたものです。

レブンはなぜ素因数分解ができないのか

映画『CUBE』で「3つの数のうち素数がある部屋は罠」の法則に気付くのは、数学科の学生・レブンです。筆者以外みんな知っているのかもしれませんが、素数とは「1とその数自身でしか割り切れない数」のことです。

CUBEの扉には3桁の数字が3つ並んでいます。そのうちどれかが素数であれば危ない部屋だよ、ということですね。ところがこの方法で進むうち、全面素数に囲まれた部屋に行きあたってしまいます。

法則は間違っていた!?と、パニックに陥る一行。
実は、CUBEの法則は素数を見つけるよりもさらに細かいものでした。レブンは「因数が1種類の数あったら罠」が真の判定法という結論に辿り着きます。

さて、筆者以外みんな知っているのかもしれませんが、因数とは「数を掛け算の形にバラして、分解された要素のひとつひとつ」のことだそうです。数を “素数” の “因数” に分解することを「素因数分解」と呼びます。

567 898 545 、因数分解できない!567だけだって無理だわ!天文学的な数字よ!

————レブン 映画『CUBE』

筆者もできませんから「そりゃ大変だ!」と毎回慌てていたのですが、数学のできる方からすると「なんでできないの?」なのだそうですね。「じゃあ今まで素数をどうやって判断していたの?」。
アナタさっきまで素因数分解をして素数を割り出していたんじゃなかったの?」と。

突然 “序列組み合わせ” を閃くレブン

では「レブンの数学力は全然大したことがない」かと言えば、そうではないようです。

部屋の数字はランダムではなく “座標” であると気が付いたレブン。このとき、一度訪れた部屋に戻ってしまったことから「CUBEの部屋は移動している」と考えられていました。

数字は部屋の初期の座標であり、そこから一定の法則で移動しているというのです。そこでレブンがものすごいスピードで編み出したのが「序列組み合わせ理論」。これはレブンが考えた造語のようです。
“序列” と “組み合わせ” は数学用語ですがお互い関連は無く、交えて考えることのない概念なのだそう。しかし、レブンはこれを一瞬でひらめきました。

終盤で「3ケタの素因数分解ができない!」と取り乱しているレブンと同一人物とは思えません。

ナタリ監督「原作の監修は数学の専門家に依頼した」

数学の教養のある方からすると「序列組み合わせ理論を咄嗟に思いつける頭なのに、なんで3ケタの因数分解ができないんだよ!」と、もう我慢できんのだそうです。

ところが、映画『CUBE』には専門家の監修がついています。それも単なる数学大好きおじさんではなく、デヴィッド・W・プラヴィカという数学者がCUBEの設計、トラップの暗号も作成しました。
つまり、情熱に突き動かされたナタリ青年が「ボクの考えた最強のCUBE」を撮ったわけではないのです。

多くの不自然な設定にも「意図がある」と考えてみるのが楽しみ方というものかもしれません。

映画『CUBE(97′)』の矛盾はこう観れば解決?

cubeファーストシーン
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映画『CUBE』の不自然な設定や数学的な矛盾点を紹介してきました。

最後に、それを踏まえて映画『CUBE』を「こう観ればいいじゃん」という新説というか、文系ポエマー丸出しの筆者の思いつきを描いてみたいと思います。少しお付き合いください。

レブンは素数を “暗記” していた!?

レブンは素因数分解をせずに素数を判断していました。そこで多くの方が「レブンは素数を暗記していたのでは?」と考察しています。計算ではなくて、素数か否かがすでに彼女の頭に入っていて、それを引き出して答えていたという説ですね。

確かにこれならレブンが素数を判断して部屋を渡れたのも分かりますし、素因数分解が必要になった時に発狂したのも説明がつきます。

暗記は得意なの。

————レブン 映画『CUBE』

序盤に、これまでの罠の種類と扉の数字を暗記していたレブンはこう発言しています。筆者的にはレブンは「長期記憶を“司っている”」と考えます。だから計算はできなかった。
というより、レブンは “記憶しかできなかった” んじゃないかなと思うんですよね。

司っている” という言い方には意図があるのですが、ちょっと説明してみますね。

ワースの不思議なセリフの “真意” とは?

俺たちは全体の一部だ。各自の仕事をしてる

————ワース 映画『CUBE』

キューブの建設に携わったにも関わらず、自分の持ち場(外壁の設計)以外のことは全く知らないワースは、仲間から激しく咎められます。そこでワースは上記のセリフを放つのですが、この前後のワースの釈明が、なんていうかどうした?と聞きたくなるほどに不思議な言い回しなんですよね。

多くの技術者が関わっているけれど、誰もクライアントの正体を知らないCUBEの建設事情。

そのわりに「悪の親玉はいない」「誰にも責任はない」「ここにきたのは不可抗力だ」などと、湾曲的な表現で、しかし断言するのですよ……。知っているのか知らんのかどっちなの
本作のセリフ回しは素晴らしいですが、ここだけ何が言いたいのかよくわからん。英語の原文でも、よくわからん。

そして筆者はふと、「キューブは脳であり、登場人物はそれぞれの役割を果たす脳のモジュールの擬人化」なのではないかな、と思ったのです。レブンは陳述記憶を司る“海馬”、海馬は空間学習能力にも関わっている部位です(だから序列組み合わせを閃いたんじゃないかな…)。

【考察】「CUBE」とはなにか

ナタリ監督は『CUBE』の発案当初、「すべてが地獄に設定された世界」を作ろうとしたと語っています。登場人物につけられた名前は全て実在する刑務所の名前からつけられており、企画の段階ではそれぞれのキャラクターは犯罪者という設定でした。

しかし『CUBE』の劇中では、登場人物がそれぞれ「罪がないこと」と確認し合うシーンがあります。本質的な部分以外を取り除く作業のなかで「CUBE=刑罰」の設定は外されたのだそうです。

映画『CUBE』の続編では、普通に組織の謎について描かれていますが、監督は別人です。
CUBEの原作を発想したナタリ監督が表現した「地獄」は、何か逃れられない状況に縛り付けられた人の脳だったのかもしれません。

ちなみに作中、知的障害を持つ青年・カザンに共感し、寄り添ったホロウェイ。
筆者的には彼女は “島皮質” の擬人化ではないかと思います。

島皮質は脳の中でも「共感・道徳的直感」を司ります。中盤、ホロウェイがしきりにタバコを吸いたがるシーンがありましたが、島皮質は飢餓や渇望状態を作る役割も持っています。食べ物や薬物(ニコチンも!)への衝動を生み出すことでも知られているのです。

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