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黒澤明監督作品「夢~Dreams~」原発事故を予言した内容も含まれるオムニバス作品!

日本映画界のレジェンドとして、説明不要の巨匠でもある黒澤明監督。その功績は誰もが知るものではありますが、晩年のオムニバス作品1990年公開の「夢~dreams~」の中で、東日本大震災時に発生した原発事故を予言した内容があり、大きな話題となりました。黒澤明監督作品の「夢~dreams~」について紹介します。

「夢~dreams~」のあらすじ

本作品はオムニバス作品となっております。そのため、「日照り雨」「桃畑」「雪あらし」「トンネル」「鴉」「赤冨士」「鬼哭」「水車のある村」の8話のショートストーリーが入った構成となっています。各ストーリーの冒頭で、「こんな夢を見た」という文字が出てきて物語が始まります。

「日照り雨」あらすじ

晴れた日に雨が降るという日は、山では狐の嫁入りが行われるということを少年が母から聞かされる。こんな日は山に行ってはいけないと言われるが、興味本位で少年は山に行ってしまう。そこで行われていたものは……

「桃畑」あらすじ

ひな祭りが行われている旧家で少年が、6人の女の子が来たのに5人しかいないということを親に言うが、見間違いだと言われる。いなくなった一人の女の子を追って桃畑まで来ると、そこには桃の木を切られた精霊たちが怒っていた。

桃畑

出典元:https://www.rbbtoday.com/article/2007/11/02/46136.html

「雪あらし」あらすじ

雪山で遭難しかけた大学生たちが、3日間雪山をさまよった中で、雪女に遭遇する。彼らを「雪は暖かい。氷は熱い」と言って眠るように誘惑してくるが間一髪のところで目覚め、山小屋を目指す。

「トンネル」あらすじ

敗戦後、陸軍将校が部下たちの遺族を訪ねるべく歩いていると、犬に威嚇されながらトンネルに迷い込んだ。そこには戦地で亡くなった部下の亡霊に遭遇することになる。

トンネル

出典元:https://www.pinterest.ca/pin/462744930438773540/

「鴉」あらすじ

ゴッホのアルルの跳ね橋を美術館で見ていると、いつの間にか絵の中に入っていた。その中で、その中でゴッホが自作を描くのに苦悩する姿を目の当たりにする。

「赤冨士」あらすじ

富士山が赤くなっていて逃げ惑う人の群れの中に一人いる。富士山が噴火したのかと理解できずに周りの人に聞くと、富士山の麓に建てられた原子力発電所が次々と爆発しているという。技術者は放射能を目で見えるようにしても爆発してしまえば意味がなかったと後悔の言葉を語る。

赤富士

出典元:https://ameblo.jp/p1i9a8n2o/entry-12137448057.html

「鬼哭」あらすじ

核戦争後の放射能汚染で世界が荒廃してしまっている中、生き残った人間には角が生えて鬼のような見た目になっていた。鬼になった一人の人間は、酪農をしていて価格が安いからということで牛乳を川に捨てたりしていたことを、食べ物がない今の状況になってひどく後悔する。

鬼哭

出典元:http://trynext.com/review/page/b000xg9p66.php

「水車のある村」あらすじ

水車のある水のきれいな村で老人に出会う。彼は近代技術には頼らない生活を心がけていた。
これから村の葬儀があるというが、非常に賑やかだという。葬儀を行う人が天寿を全うしたのであれば、めでたいことで盛大にあの世に送り出すのが正しいやり方だと老人は誇らしげに話した。

水車

出典元:http://azuminolocation.com/work/yume

水車のある村のロケ地として有名となった長野県安曇野市にある大王わさび農場です。映画の中に入ったようなきれいな川と水車があります。

「夢~Dreams~」のキャストと制作スタッフ

夢には黒澤明監督作品ということもあり、豪華キャストで固められています。寺尾聡はいくつかの作品で出演し、「トンネル」出演のいかりや長介も豪華です。また、昭和映画スターの笠智衆は「水車のある村」で老人役で出演しています。
また、「鴉」ではゴッホ役で映画監督のマーティン・スコセッシが出演しています。

これだけの制作を行ったので制作費も豪華

映像美とストーリー、役者全てにおいてこだわりを見せる黒澤映画は非常に制作費もかかるということで有名です。本作品についても例外ではなく、製作費では日本円で約12億円程度かかっています。それに対する興行収入は3億円で、興行としては製作費がかかりすぎたことから大失敗となっています。こうした状況からこの作品も日本国内の出資者が見つからず、スティーブン・スピルバーグが制作に協力する形で実現しました。

全体的に怖い夢が多い内容

こんな夢をみたという始まりから、寝ている間に見る夢を題材としているのですが、核戦争後の世界や原子力発電所の事故や、戦地で亡くした部下の亡霊など全体的に怖い夢の印象があります。
日照り雨でも、狐の嫁入りのシーンは非常に子供が見たら怖いというものを描いています。しかしこうした怖さも印象に強く残る映像として撮ることができる黒澤明監督は非常に訴えかけるものがあります。

東日本大震災後に話題を呼んだ「赤富士」

赤富士では日本で原子力の事故が起きた時のパニック状態をトラウマになるようなレベルで描かれています。公開当時の1990年にはこんなことは日本では起こりえないというのが多くの人の見方でした。
しかし、2011年の東日本大震災の際に起きた福島第一原子力発電所の原発事故では、この状況が日本でも起こったということで大きな話題となりました。日本全体がこのような状況とはなりませんでしたが、原発の近くに住んでいた人がこれに近い脅威を感じたものと思います。

黒澤明監督の晩年の評価はあまり高くない

本作品の「夢」も戦前から活躍する黒澤明監督の晩年の作品となりますが、公開当時や今でも、映画としてはメッセージ性が強すぎる、説教のような印象を受けるとして、あまり評価しない人が多いです。
確かに、「七人の侍」などエンターテインメントの最高峰のような映画を撮っていた全盛期と比べると本作品も遺言のような感じとなっており、映画として内容をみると社会への提言のようなものも多く、映画を楽しみたいという人にとってはよくないのかもしれません。
しかし、映像美はやはり黒澤作品です。私も小学生時代にこの作品を見て、最初の「日照り雨」の狐の嫁入りの場面が本当に怖かったのを覚えています。怖かったのですが映像がすごくきれいだったので、「怖いけどこんなきれいな映像を撮れるのはすごい監督だ」と思ったことを思い出します。

いい映画を撮るには製作費が必要

黒澤明監督のような映画監督は今後、日本では出てこないと思います。それは、やはり映画製作の規模が違いすぎるため、多くの興行収入を得られなければ制作ができないと思われるからです。この作品についても作品の芸術性という部分では文句なしの仕上がりなのですが、やはりそうした作品は興行収入が伸びません。本作品も例外ではありませんでした。この作品の構想段階だった1980年代でも、日本国内に出資者がいなかったということも興行的には伸びないと予想されていたからだと言えます。
いい映画を撮りたい気持ちと、それを興行として考えると製作費とのバランスは多くのエンターテイメント業界では葛藤の対象となっています。

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