数ある都市伝説の中でも最恐の呼び声高い『犬鳴村』。外界との接触を拒み、無闇に侵入を試みようとすると災いが起こるとまことしやかに噂されながら、そのはっきりした場所が謎とされてきた幻の村。今回はネット上の情報をもとに犬鳴村の場所、そして都市伝説について究明したいと思います。
『犬鳴村』の場所はどこ?
犬鳴峠説
結論から言うと『犬鳴村』という地名は存在しません。ただ、福岡県宮若市と糟屋郡久山町との境にある県道21号付近に『犬鳴峠』という場所があり、その近くには『新犬鳴トンネル』と『旧犬鳴トンネル』があります。この旧犬鳴トンネルの先に犬鳴村があるのではと言われています。犬鳴峠付近が心霊スポットとして知られるようになったのは新犬鳴トンネルが開通した1975年以降のことで、そこまで古い話ではありません。もともとこのあたりは悪路で古来より交通の難所とされてきたため、人通りも少なく、旧犬鳴トンネルが閉鎖された後はホームレスが棲みついたりして不気味な場所になっていたようです。そんな中1998年に後述する殺人事件が起き、犬鳴峠・旧犬鳴トンネルの名前は広く知られるようになります。
犬鳴ダム説
現在犬鳴ダムのある場所にはかつて『犬鳴谷村』という集落があり、こちらが犬鳴村ではないかという説もあります。犬鳴谷村はもともと1691年(元禄四年)に福岡藩庁が足軽各家を移住させたのが興りで、合併統合を経て1889年犬鳴ダムの建設まで名前を変えながら確かに集落が存在していていました。現在はほとんどの集落がダムの底に沈んでいますが、ここも後述する死体遺棄事件が起こるなど、いわく付きの場所であることは間違いありません。ちなみに犬鳴ダムと犬鳴峠は同じ宮若市にあり地理的にもさほど離れていません。
犬鳴村の都市伝説
峠やトンネル、ダムはあっても村はない。地図にさえ名前がないにもかかわらず、噂や伝説だけがひとり歩きしているところが犬鳴村最大のミステリー。ここではインターネットで「犬鳴村 都市伝説」と検索すればヒットする有名な噂を紹介します。
犬鳴村の都市伝説その1『最寄りのコンビニから警察につながらない』
犬鳴村近くのコンビニから電話をしても、警察にはつながらないというもの。またすべてのキャリアの携帯電話が圏外になるという話もあり、仮にトラブルや事故に遭っても助からない可能性もあるよってことですね。でもなぜかコンビニはあるんですね。24時間営業なのでしょうか?
犬鳴村の都市伝説その2『立て看板』
犬鳴村付近には立て看板が二つあるそうで、ひとつは旧犬鳴トンネル入り口の『白いセダンは迂回してください』というもの。これは後述するカップルが白いセダンで犬鳴村に入っていったという噂にまつまるもののようですが、実際は旧犬鳴トンネルの入り口にそのような看板はありません。そしてもうひとつは村の入り口にある『この先日本国憲法は通じません』という治外法権を警告するもの。犬鳴村へは旧犬鳴トンネルを抜けて行くと言われているため、旧犬鳴トンネルが閉鎖されている現在は見ることができません。ちなみに旧犬鳴トンネルが通行止めになっている理由は、素掘りのトンネルのため崩落の恐れがあるからとのこと。通常トンネルは掘り進める工事と周囲の土を固める工事を並行して行いますが、旧犬鳴トンネルは土を固める工事が為されていなかったようですね。
犬鳴村の都市伝説その3『侵入しようとすると村人が斧や鎌で襲いかかってくる』
犬鳴村に通じる道には、足元の紐に触れると紐についた鈴が鳴るという原始的な仕掛けが張り巡らせてあり、侵入者が罠にかかるとどこからともなく現れた村人が斧や鎌を振り回して襲いかかってくるというもの。村人の脚力は凄まじく、しかも、おかしな走り方で追ってくるそうです。想像しただけでめちゃめちゃ怖いです。ネット上には犬鳴村に車で近づいたところ村の入り口でいつのまにか数人の男に取り囲まれていたという恐怖体験も投稿されていて、なんとか逃げおおせたものの車の後部はボロボロに潰されていたそうです。
犬鳴村の都市伝説その4『村人は独自の言語でコミュニケーションをとっている』
犬鳴村は古来よりひどい差別を受け、現在でも外界との接触を完全に絶っているそうです。そのため『日本語を話さない』『近親交配がおこなわれている』と言われていて、憲法が通じないと書かれた看板やおかしな走り方(近親交配による劣性遺伝異状)にも繋がる部分があります。
犬鳴村の都市伝説その5『島根ナンバーの白いセダン』
犬鳴村内の広場には、島根ナンバーのボロボロの白いセダンがあるというもの。これは先述した興味本位で村に入ったカップルの車とも言われています。島根ナンバーなのはカップルが島根から来たため。このカップルは村で殺害されたとも行方不明とも言われており詳細はわかっていません。
犬鳴村の都市伝説その6『頭蓋骨が積まれた小屋』
白いセダンが止まっている広場には小屋があり、中には無数の骸骨が積まれているというもの。村に侵入した外部の人間の骸なのか、村独自の儀式で犠牲になった生贄なのか、どちらにしてもホラー映画に出てきそうなおぞましい言い伝えです。
犬鳴村の都市伝説その7『霊の目撃談・体験談』
犬鳴村の都市伝説のなかには、霊の目撃談・体験談も数多くあります。
- 旧犬鳴トンネル前で写真を撮ると白いモヤが撮れる
- 心霊スポットマニアが旧犬鳴トンネルで体調を崩した
- トンネル付近の公衆電話から電話をかけると不気味な女の声が聞こえる
- 白い車でトンネルを通るとボンネットに血塗れの手形がつく
- バイクに乗っているときに肩を掴まれる
実際に殺人事件や死体遺棄事件が発生しているせいか、心霊体験があっても不思議ではありません。また旧犬鳴トンネルの工事中に複数の関係者が亡くなっているという話もあり、オカルト的な側面でも危険な場所であることは確かなようです。
犬鳴トンネル・犬鳴ダム周辺で実際に起きた事件・事故
たかが都市伝説と片付けられないのが犬鳴村。犬鳴トンネルや犬鳴ダム周辺で起きた実際の事件や事故をまとめてみました。
1988年『リンチ殺人事件』
1988年12月、当時20歳のAさんは仕事を終え車で帰宅する途中、顔見知りだった19歳のBを含む5人の男性にからまれます。Bは「車を貸してくれ」と申し出たものの、断られ逆上。Aさんを殴打した挙句、仲間の自宅に監禁しました。監禁が明るみに出ることを恐れたBたちは翌日の早朝、旧犬鳴トンネルでAさんにガソリンをかけ焼殺。当初は人目につきにくいトンネル内で殺害する予定でしたが、Aさんの悲鳴が響いたため手足を縛り、衣服を突っ込んで口を塞ぐと、石で殴打して火をつけました。ちなみにAさんの直接の死因は焼死ではなく失血死。亡くなる直前まで殴りつけられたと言われています。
1992年『電柱衝突事故』
1988年のリンチ殺人事件によって、一般に知られるようになった犬鳴峠に肝試しに行った帰り、ワゴン車が電柱に衝突し運転していた少年が意識不明の重体、助手席の少年も両足を骨折したという事故。こちらは事件性はなく事故として処理されていますが、現場の北九州市八幡西区の県道にはブレーキ痕がなくスピードを落とさず突っ込んだと言われています。
2000年『死体遺棄事件』
こちらは情報が極端に少ないのですが、1月13日犬鳴ダムで女性の白骨したいが発見されたというもの。夏場、ダムの水が減って何かが見つかるというのは聞いたことがありますが季節は真冬。白骨化していたということで死後、時間が経っていることを思わせます。
2001年『正面衝突死亡事故』
福岡県二丈町の国道202号バイパスで「犬鳴峠に幽霊を見に行こう」と出掛けた少年ら5人が乗った軽自動車と2tトラックが正面衝突。少年らは1人が重体ほか4人は死亡しました。幸い軽傷で済んだトラック運転手の証言では少年らの軽自動車が中央線を超えて突っ込んできたとのこと。
犬鳴峠の行き方
犬鳴峠へは、福岡市内から車で2~30分ほどで到着します。県道21号沿いの犬鳴ダムからは徒歩で新犬鳴トンネル方面へ15分ほど歩くと旧道の入り口があります。旧道は車での進入はできません。旧道を進むと『旧犬鳴トンネルの開通碑』そして『旧犬鳴トンネル』があります。日本屈指の心霊スポットであるにもかかわらず、わりとすんなりたどり着くことができるようです。ちなみに、反対側のトンネル出入口は完全に封鎖されていて入ることができません。
犬鳴村に似すぎ?杉沢村の都市伝説
完全に余談ですが、マニアのあいだでは『杉沢村』という都市伝説があります。おおまかにまとめると・・・
- 村までの道中に『ここから先へ立ち入るもの命の保証はない』という看板がある
- 一度村に入ると二度と戻ることはできない
- 地図から抹消され正確な場所がわからない
犬鳴村の都市伝説ととてもよく似ています。犬鳴村と杉沢村はほぼ同じ時期にテレビ番組で取り上げられ『奇跡体験!アンビリバボー』を観ていた人のなかには杉沢村の方が印象に残っているという声もあるかもしれません。杉沢村は青森県にあると言われていますが、福岡と青森。遠く離れた地でここまで似ているとなると、やはりどちらもただの都市伝説なのかと思えなくもないですが・・・。
『呪怨』の清水崇が犬鳴村を映画化!
今なお都市伝説ファン、オカルトファンの心を掴んで話さない犬鳴村の都市伝説。2020年には『呪怨』シリーズの清水崇監督のその名も『犬鳴村』が公開されます。犬鳴村にまつわる噂や言い伝えをどんなふうに映像化しているのか、今はもう中に入ることができない最恐スポット旧犬鳴トンネルの内部は描かれているのか、こちらも気になりますね。
事実が先か噂が先か?『犬鳴村』の都市伝説
犬鳴村が都市伝説として知られるようになった経緯を振り返ってみると、噂にあるような事実があったから事件や事故が起きたのか、それとも実際に起こった事件や事故があったから噂が噂を呼んだのか、分からなくなってきますね。それだけに自分の目で真実を確かめたくなるのかもしれません。足を運ぶ際はくれぐれも気をつけて。すべて自己責任でお願いします。