映画【ホドロフスキーのサイコマジック】のネタバレ!魂を癒す?カルトの巨匠の集大成を紐解く!

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今年91歳を迎えたカルト映画の巨匠、アレハンドロ・ホドロフスキー。1971年に監督・主演を務めた映画『エル・トポ』をジョンレノンが絶賛、同作と次回作の配給権を買い取ってからというもの「伝説のカルト映画監督」と評され、愛されてきました。

シュルレアリスムを徹底的に映像化したホドロフスキーの作風は、時に正視に耐えないほどグロテスク。ただ、彼の大ファンである筆者、ホドロフスキー映画は必ず心が溶かされるというか。引っ叩かれたあと抱きしめられたような緊張と緩和に、いつも魅力を感じていました。

91歳、渾身の最新作『ホドロフスキーのサイコマジック』。これまでのホドロフスキー映画が、彼自身の考案した心理療法「サイコマジック」に基づいていた!という衝撃の告白から始まる今作は、「自称映画評論家」や「自分の価値が分からなくなってしまった人」に振りかぶって投げつけたい究極の癒し。

本記事では、オンライン先行上映を試聴した筆者が、映画『ホドロフスキーのサイコマジック』の魅力をネタバレ付きで紹介していきます!

映画『ホドロフスキーのサイコマジック』の予告動画がこちら!

人生に行き詰まり、絶望した人々をホドロフスキー本人が救って回る本作『ホドロフスキーのサイコマジック』。端々で、これまでの映画作品のワンシーンが挿入され、「サイコマジック」に説得力を持たせています。

ホドロフスキーには、映画『エル・トポ』に登場するウサギの死体の山を作るため、監督自ら正拳突きで一匹ずつ殴り殺したという「もう、どういう人なのか全然分からない」有名なエピソードがあるかと思えば、一方、予告の彼の口からは転がるような優しげなスペイン語が……。

アレハンドロ・ホドロフスキーとは何者?

そもそもホドロフスキーって何者?」と思う方も多いはず。それもそのはず、ホドロフスキーは映画のプロモーションを派手にしないことで知られています。2014年に自身のドキュメンタリー映画が日本で公開された際には、なぜか世田谷区の龍雲寺で100人のファンと座禅会イベントをするという利益無視。

ホドロフスキーの映画、血は出るわ性器は出るわ、弱者は殴るわ動物は殺すわといった一見、バイオレンス・カルトに見えます。ただし本人、死ぬほど優しい。チリで移民として生まれ過酷な幼少期を経て、青年期には日本の禅宗に弟子入り。「貧乏になるために映画を撮る」と語る、ホドロフスキーの真意とは一体何なのでしょうか?

ホドロフスキーの制作意図を知れば納得できる

映画『ホドロフスキーのサイコマジック』ネタバレにうつる前に、是非読んでいただきたいのが「なぜ自分は映画を作るのか」を語った、ホドロフスキーの言葉。

なぜ映画を作るのか? 映画とは何なのか? ただ面白おかしい見世物のような映画がある。もちろん、そういうものも必要だ。だって、この世界では誰もが皆、身の回りで起こるすべてのことにイライラしているだろう? 地球を破壊しているのは私たちだとさえ言う人もいる。そうすると、自分を忘れるために映画を見に行く必要がある。おそらくそれも必要なのだろうが、私にとって映画とはそういうものではない。私にとって映画とは自分を忘れるためではなく、自分を思い出すためのものだ。だが自分を思い出すとはどういうことだろうか? 何を思い出せるのか? 私にとって映画こそが本物のアートである。アートとは何か? 自分の内側にある美を探すこと。それこそがアートだ。私は金儲けのために映画を作りたくない。もし金がやってきたら、もっと映画が撮れるようにポケットを広げて受け取るが、それは目的ではない。他人からの賞賛を集めるのが目的でもない。観客が今まで体験したことのない出来事を作り話ででっち上げるのが目的でもない。

ホドロフスキーの映画は、はじめから彼自身を癒すために作られたものだったのかもしれません。「自分を思い出すための映画」。では、私たちにとってホドロフスキーの映画とは……?あれ、すでにサイコマジックにかかりはじめているかも……!

映画『ホドロフスキーのサイコマジック』出演者を紹介

全編ドキュメンタリー形式になっている映画『ホドロフスキーのサイコマジック』。監督のもとに癒しを求める人々が訪れます。

ネタバレの前に、本作の登場人物をサラリとご紹介していきます!

アレハンドロ・ホドロフスキー

監督兼、主演。本流は詩人であり、シュルレアリスムを極めるために渡仏し、映画制作に出会います。舞台演出家、コミック作家、タロット専門家など多くの顔を持つホドロフスキー。禅や瞑想にも精通しています。

キャリア初期に深夜上映系のカルト映画を制作し、それらがジョン・レノン、アンディ・ウォーホルらから熱烈に支持されたことで、カルト映画界で不動の地位を獲得。

2010年代からは、『リアリティのダンス』『エンドレス・ポエトリー』などの自伝的映画を制作。映画『エンドレス・ポエトリー』は、はっきり言って嗚咽ものです。

10組の「悩める人々」

本作に登場するのは、人生に迷った10組の人々。それぞれコンプレックス、トラウマ、精神疾患を抱え、どうにも身動きが取れなくなっています。

基本的に一般人ばかり登場しますが、このうちの一人がシンガーソングライターのアルチュール・アッシュ。おお、ホドロフスキーと気が合いそう!と、友情出演かと思いきや彼も、大物歌手である父ジャック・イジュランにまつわる深いトラウマを抱えていて……

映画『ホドロフスキーのサイコマジック』のネタバレ!

後半は、いよいよ映画『ホドロフスキーのサイコマジック』の本編を紹介していきます!

新型コロナの影響で、劇場公開が見送られた今作。配給のアップリンクはオンライン上映を以前から積極的に行っており、今作もアップリンク・クラウドでの鑑賞が可能です!映画館に行く楽しみがなくなったのは残念。ただ、内的な思考にアプローチしている今作、自宅のディスプレイで首を傾げながら巻き戻したりして楽しむのにぴったりの作品です。

アップリンク・クラウドはこちら

本作は、6月11日までオンライン視聴が可能。先行き不安なご時世、ホドロフスキーに心を預けたくなった方は、是非試してみてはいかがでしょうか?

「サイコマジック」ってつまり何?

予告動画を見て、「サイコマジックって結局何なの?」という疑問が湧くかと思います。擬似鳥葬みたいなことをされていたり、黄金バットみたいにされている男性もいましたよね。

サイコマジックは監督が考案した心理療法。心理療法といえば、一般的にはカウンセラーを通じた対話によって行われます。ところが、サイコマジックの要は「行動を起こすこと」。言葉ではなく、行動によって心を癒そうというのです。詩人らしからぬ主義に思えますが、彼は別の映画の中でも「詩は行動だ」と語っています。

意識して発する物だけが「言葉」ではなく、行動やイメージによる、音、臭い、味、触覚から得られる「無意識の言語」。この、無意識の言語こそが対象者の心の翳りを晴らす、とホドロフスキーは言います。

心の触れたことのない場所に触れる

今作の悩める相談、例えば90歳近くになる裕福な女性。家族に恵まれ、資産もあり、側から見れば何不自由ない彼女ですが、人生に絶望しています。汚い罵り言葉が次から次へと湧き出てきて、自分の存在そのものに悲観の涙が止まらないのです。彼女は重いうつ病を患っています

ホドロフスキーは彼女の手を取り、話を聞き、二人はぴったりと身を寄せ合いしばらく語ります。何を語っても「全てどうでもいい」と嘆く女性を連れて行ったのは、樹齢300年ほどの大木の前。背中をさすられながら、木に水をやる彼女。「これから毎日、これをやるんだ。」

「木に水をやる事で、この木は一部だけあなたになる。」

……伝え切れていませんよね。大変無念なことですが、筆者ごときが文に起こしても、この爽快感はほとんど伝わらないでしょう……。

癒しの沼に突き落とす「サイコマジック」

結婚式の前日に、婚約者が飛び降り自殺してしまったという女性。虐待を受けた経験がトラウマになっている妊婦。劇中、ホドロフスキーは「月経の創造性を知るため」、経血で自画像を描くことを勧めます。そして、みんなで描きます。

今作で一貫しているのは、相談者が自分を承認するための行動を、監督がただアシストしているということ。「あ、自分これでいいんだ」と気がついた時の彼らの表情は、この上なく癒されています。

吃音がコンプレックスで、童貞の40代の男性。予告で黄金バットになっていた方です。彼の心の中には、12歳の少年が住んでいます。彼は心を閉ざしてから、精神が12歳でストップしているのです。サイコマジックの後、なんと彼、吃音が治ります。

「スピリチュアル、オカルト、悪魔払い?」いやいや、違うみたいですよ!本作、人の痛みがわかる人であれば、誰でも観ることができます。

是非、相談者の表情の変化を、皆さんにも確認していただきたいのです……!

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