2014年公開の映画『百円の恋』で日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞した足立紳の自伝的小説『乳房に蚊』の映画化作品『喜劇 愛妻物語』がまもなく公開されます。
映画『喜劇 愛妻物語』の脚本・監督はすべて足立紳本人が手掛けています。予告動画で見る、リアルに冷め切った夫婦の雰囲気に「とても他人事に思えない……」という方も結構いるのではないでしょうか……!
本記事では、映画『喜劇 愛妻物語』のあらすじをネタバレ付きでご紹介していきます!よくある家族コメディかと思いきや、ほとんど実録ドキュメントというのですから関心が高まります。
映画『喜劇 愛妻物語』の予告動画がこちら!
水川あさみの清々しいブチ切れぶりに思わず笑えてしまう『喜劇 愛妻物語』の予告動画。原作小説のレビューでは「妻のキレ方が常軌を逸している」「夫がクズなのはわかるが酷すぎ」などなど、恐妻の罵倒シーンに拒否反応を示すユーザーも見受けられました。
ただ、このブチ切れ方にこそ夫婦の愛憎が集約されていて……。原作の著者が映画脚本と監督までつとめた本作では、この夫婦のバランスが歪曲することなく私たちに届くのではないでしょうか。
しかも足立紳監督、脚本を書くときに奥さんと一緒にいることが多いのだそう。監督が執筆中酷いセリフを書き込むと、それにかぶせるように奥さんがさらにキッツいセリフを提案してくるのだとか。
このストレートさ、「めちゃくちゃいい映画になるんじゃないかな……」と期待を寄せずにはいられません。
映画『喜劇 愛妻物語』のキャストを紹介!
本作『喜劇 愛妻物語』のあらすじをネタバレする前に、キャストをさらりとご紹介していきます!
本作の総監督・足立紳の代表作といえば『百円の恋』。彼は「作品の中のダメ人間を決して甘やかせない」というポリシーのもと執筆をしているのだそうです。他の映画では「主人公はダメな奴だけど、ほら、いいところもあるんだぜ?」と承認する描写がほぼ必ずあります。
ところが、足立紳の手掛ける物語では「ダメなやつは徹底的にダメ!そして、絶対にダメなままじゃダメ!」。この確固たるポリシーが、映画『百円の恋』の終盤の安藤サクラに憑依したと思うと、ああ納得なのです。
さて今作の主人公、一体どんな愛のムチを受けるのでしょうか……。
売れない脚本家・豪太/濱田岳
濱田岳演じるのが、売れない脚本家の豪太。年収は50万を切っていて、奥さんの収入がなければ生活もままなりません。
根性はないのにプライドばかりが高い典型的なダメ男。筆者、ちょっと笑ってしまったのですが、原作小説のレビューの中で「娘がこんな彼氏を連れてきたら燃やすよ」と評されていました。
濱田岳は、映画『ゴールデンスランバー』、『引っ越し大名!』などに出演。コメディ作品でよく見かけますが、意外と時代劇にも多数出演しています。へにょっとしていて可愛いですが、声が通る俳優さん。
家計を支える恐妻・チカ/水川あさみ
水川あさみ演じるのが、豪太の妻のチカ。コールセンターのパートにガッツリ入り旦那の心許ない稼ぎをフルカバーしつつ、家事、子育てもこなすしっかり者です。
結婚10年、娘は5歳。多分ですけど、別れちゃった方が生活は楽なんですよね。ところが罵倒しつつも豪太とは結婚生活を続けています。誰しも知っていることかと思いますが、罵倒するってかなり体力と精神力を消耗するんですよね。
水川あさみは、映画『仄暗い水の底から』、『後妻業の女』などに出演。クールビューティー代表、といった感じですが汚れ役もしっかりこなせる女優さんですよね。役のチカに近い包容力があります……!
映画『喜劇 愛妻物語』のあらすじをネタバレ!
さて、キャストの紹介のあとは映画『喜劇 愛妻物語』のあらすじをネタバレ付きで紹介していきます!結婚10年目、旦那の年収50万、セックスレス。八方塞がり夫婦の真実を覗き見です……。
売れない脚本家・豪太の悲願とは?
主人公・豪太は、売れない脚本家。彼の年収は50万を切っており、結婚10年目の妻・チカのパート代がなければ生活することができない状況です。
当たり前のように肩身が狭い、かと思いきや、豪太はプライドだけは高く、仕事についても言い訳ばかり。必死の思いで家計を支えるチカの用意した夕食に一丁前に文句をつけたりします。
チカに怒鳴りつけられるたびに妻への愛情も薄らぎ、夫婦間は冷え冷え。セックスレスは3ヶ月目に突入しています。「奥さん可愛い!大好き!」というわけではないのですが、セックスの相手はしてもらいたい豪太。セックス達成がほとんど豪太の生活の目標のようになってしまっていて、隙あらば求めるスタイルにチカはうんざり、裏拳で追い払う日々です。
一家を支える妻・チカの罵詈雑言
豪太の妻・チカといえば、時給1,400円のコールセンターで働き、家計を支える大黒柱。5歳になる娘の育児も、ダメ夫の世話もすべて担っています。
それでは甲斐甲斐しく豪太を支えているか、といえば決してそういうわけではなく……。稼ぎのない夫を容赦なく罵倒、強気に出る豪太をすかさずねじ伏せるその姿は、おそらく条件反射。ポンポン飛び出る毒舌と拳に、「二人はどれほど長い間このスタイルの夫婦関係を続けてきたのだろう」と思わず遠い目になってしまいます。
ポシャりそうな脚本企画に喰らいつく!
豪太、チカ、娘のアキの3人家族。
脚本家の仕事で全く目が出ないヒモ状態の豪太は、チカの機嫌を伺う日々。ある日、豪太のもとに「ものすごい速さでうどんを打つ女子高生の話を脚本にしないか」という話が舞い込みます。
ぼんやりとした企画の段階なので、取材の渡航費すら自腹という条件を飲み、豪太は家族を連れて香川に取材旅行することを提案します。何故家族ごと連れて行くのかといえば豪太、運転免許がないのです。チカは旅行の運転手。「この企画に懸けてるんだ!」なんて豪語しますが、チカはしれっとしています。何度かこういうことがあって、その都度がっかりさせられてきたのでしょう。
さらに、家族旅行の雰囲気に乗じて「妻とセックスする」という目標を密かに掲げます。余計なこと考えやがって!仕事に集中しろ!と、女性陣の声が聞こえてきそうですね。いや、これは男性でも思うのでは……。
アクシデント発生!ダメ夫炸裂
低予算旅行で、やっと香川にたどり着いた3人。ところが例の女子高生は、すでに他の会社が映像化の話を進めていて、アニメ映画化が決定しているというのです。なんという……。諦めきれず食い下がるチカ。「もし映画の計画が頓挫したら、ぜひ彼に脚本を書かせてください!」と女子高生の両親に頼みます。
それを聞いた豪太は「非常識だ」とチカをたしなめます。お前のために言ってんだろうが!せめてもう少し悔しがれよ!当然、チカはブチ切れ、近くの離島に住む同級生のもとに遊びに行ってしまいます。
娘・アキと二人残された豪太。仕事は白紙、セックスどころがチカがいなくなってしまいました。筋金入りの自意識過剰、自己肥大である豪太が生き方を変えられるとは思えません。
またいつものように、チカが剛太を許すしか二人の道はないような気がしますが……。さて、この旅どうなることやら……。
映画『喜劇 愛妻物語』の結末は……
本作を観て「ここまで旦那に文句言えたらスカッとするだろうな」「夫を尻に敷いている」と思う方がたくさんいるのだろうなと感じます。また、何故離婚しないのか、理解に苦しむという方も多いのでは。
ところが、愛情の反対は無関心という有名な言葉があるように。興味のない「どうなってもいい男」に対して、ここまで心底ブチ切れないですよね。
結局、豪太はチカとセックスできるのか?というのが、本作のオチとして気になるところですが……。この二人、子供までいて結婚10年でセックスレス期間、3ヶ月。いや、するでしょう……!実際原作では、最終的にセックスさせてもらえている(あえてもらえていると書きます)のです。
ベタベタベタベタ体を求める豪太の方がいつもチカのことを考えているようで、彼とギリギリの状態で夫婦を保とうとするチカの方が、豪太を深く愛しているように思えます。
豪太がそのことに気がついた時、自意識過剰なヒモ男に劇的な変化が訪れるのか。それとも、そんな映画のような展開は起こりえないでしょうか……。