草彅剛がトランスジェンダー役を務めたことで注目を集める映画『ミッドナイトスワン』。
昨今、映画界でも多く取り上げられるLGBTQをテーマにした作品であると同時に、孤独に生きる人々の姿を捉えたドラマとしても、非常に魅力のある作品です。
今回は、いま邦画の中でも話題沸騰の映画『ミッドナイトスワン』について、ネタバレありで解説します!
映画『ミッドナイトスワン』概要
俳優として、様々な役を演じてきた草彅剛と、映画『ミッドナイトスワン』が初の映画出演作となる、新人女優・服部樹咲が共演する本作。
LGBTQがテーマであると同時に、2人の擬似親子のような関係を築いていくドラマとしても、魅力的な作品となっています。
差別や虐待といった重いテーマを、バレエの優雅なシーンに合わせて描く、邦画の中でもかなり特殊な作品です。
監督はブラック・コメディ『獣道』(17)やBLコミックの実写化『ダブルミンツ』(17)を手掛けた内田英治です。
映画界の中でも、常に尖った作品を発表している監督でもあり、公開前からトランスジェンダーを題材にした本作は注目を集めていました。
映画『ミッドナイトスワン』キャスト
映画『ミッドナイトスワン』のキャスト主要キャストは以下のとおりです。
- 草彅剛:凪沙
- 服部樹咲:桜田一果
- 水川あさみ:桜田早織
- 田口トモロヲ:洋子ママ
- 真飛聖:片平実花
更に詳しいキャストや、役どころについてまとめたページもご覧下さい!
映画『ミッドナイトスワン』あらすじ(ネタバレなし)
東京。ショークラブでバレエを披露しているトランスジェンダーの凪沙。
都会の片隅で孤独に生きる彼女は、自分がトランスジェンダーであることを親や親戚にも隠していた。
鹿児島。中学生の一果はキャバクラへ行くと、そこには酔いつぶれている母親の早織がいた。
職場から介抱していく一果だが、酔った早織に罵声を浴びせられてしまう。
騒ぎ倒した早織は力尽き、か細い声で一果に優しい声をかける。
しかし一果の表情は、早織から虐待されたときと変わらなかった。
ある日、凪沙のもとに、親の虐待が原因で一時的に一果を引き取るようにと連絡が来る。
援助金がもらえるため、凪沙は渋々その話を引き受ける。
東京にやってきた一果は、凪沙を見て驚く。
親戚から、”叔父の家”に引き取られると聞いていたからだ。
凪沙は一果に「わたし、子供嫌いだから」と冷たく言い放つ。
こうして、凪沙と一果の共同生活が始まった。
しかし一果は初登校で、一緒に居た凪沙をからかわれると、同級生の男子にイスを投げつけてしまう。
凪沙は「グレるのはかまわないけど、わたしに迷惑だけはかけないで」と一果にいう。
2人の距離は埋まらないまま、一果は下校途中にバレエ教室を見つける。
こっそり覗いていると講師の実花から体験講座を勧められ、一果は凪沙に内緒でバレエ教室に通うようになる。
一方、凪沙の勤めるショークラブでは、同じトランスジェンダーの瑞貴が凪沙に金を貸してほしいと頼む。男に貢いでいるようだ。
一果はバレエ教室で知り合った同級生のりんに誘われ、彼女の家に遊びに行く。
りんの家は裕福だが、両親は自分のことしか考えておらず、りんの気持ちはまったく考えていなかった。
バレエ教室の月謝が払えないという一果に、りんはコスプレ撮影会のバイトに誘う。しかしそれは違法なバイトだった。
やがてバレエの練習で、一果は才能を出し始める。
それを面白く思わなかったりんは、一果に撮影会でいつもより稼げる「個人撮影」を提案する。
しかしこれは、男性と未成年の女子が2人きりになるものだった。
一果はカメラマンの男性に無理な注文を言われ、反抗して男性を怪我させてしまう。
警察沙汰となり、慌てて駆けつけた凪沙はひどく動揺する。
帰り道、一果はストレスから、虐待を受けていた頃からしている自傷行為をしてしまう。
それを見た凪沙は一果を抱き寄せ、「私達みたいな人間は、ずっとひとりで生きていかないといけない。強くならなきゃいけない」と優しく諭すのだった。
映画『ミッドナイトスワン』あらすじ(ネタバレあり)
りんはバイトの件を反省し、一果にも謝罪する。
母親にも、自分が原因で警察沙汰になったと話すが、りんの母は聞く耳を持たず、トランスジェンダーである凪沙を見て責める。
バレエ講師の実花は、一果の才能を買っており、一果にバレエを続けさせてほしいと凪沙を説得する。
凪沙はお金のために就職活動をするも、トランスジェンダーの彼女を雇ってくれる会社はなかった。
結局、凪沙はトランスジェンダーであることを隠し、男社会である倉庫での仕事をすることに。肉体労働を強いられる凪沙は疲弊していく。
ついに凪沙は、金のために売春をはじめてしまった瑞貴の紹介を受け、風俗店で働くことを決意する。しかし、本番になると客を激しく拒絶してしまう。
凪沙に襲いかかる男を瑞貴が殴り倒してしまい、瑞貴は連行されてしまった。
一方、りんは足を悪くし、バレエ選手としての道を絶たれてしまう。
次第に性格が暗くなるりんに対し、一果は徐々に明るくなっていった。
そんな一果に、りんはキスをしてほしいという。一果はりんを受け入れる。
迎えたバレエのコンクール当日。
一果が演技をする一方で、りんはビルの屋上で開かれるパーティーで突然バレエを踊りだす。
最初は皆が見るが、やがて両親すら相手をしなくなると、りんは誰にも見られないままビルから飛び降りた。
一果の演技が終わると、そこには母の早織がいた。
早織はステージに上がると一果を強く抱きしめる。
凪沙が一果を預かる期間が終りを迎え、一果は母親のいる鹿児島に帰った。
その後、凪沙はタイで性転換手術を受ける。
凪沙は実家に帰り、自分がトランスジェンダーであることをカムアウトするが、母親は凪沙を激しく拒絶する。
凪沙は自分が女性になったことで、一果を本気で引き取りたいと訴えたのだ。
しかし早織をはじめ、親族は凪沙を拒絶し、彼女は再び孤独になってしまう。
やがて凪沙は学校を卒業し、凪沙へ会いに東京に行く。
しかし凪沙の姿は一変していた。
あの頃の気高く美しい凪沙はなく、術後の経過が悪化したことで、寝たきりの状態になっていた。
意識が朦朧としながらも、凪沙は一果に海が見たいという。
海に着くと、凪沙は一果の踊りが見たいと話す。
一果は浜辺で優雅に踊るが、凪沙は眠るように意識が遠のいていく。
数年後、一果はバレエダンサーとして、海外で活動をしていた。
その姿は、一果が一緒に過ごしていた、あの美しい凪沙の佇まいによく似ていた。
映画『ミッドナイトスワン』は家族をテーマにしたドラマが見どころ
映画『ミッドナイトスワン』は草彅剛がトランスジェンダーを演じたことに注目が集まっていますが、実際は家族をテーマにした映画だと感じます。
実際、この映画は凪沙と一果による「疑似母娘」を描いたドラマとなっているのです。
他にも印象的だったのが、一果の友達である、りんの運命です。
りんもまた、裕福な家庭に育ちながらも、愛情を受けていない子どもの一人。
両親は自己中心的で、りんの気持ちはまったく理解していません。
一方でりんも、両親に反抗的な態度を見せることもなく、裕福なのにバイトをして小遣いを稼いでいます。
この家族には、凪沙や一果のような関係や愛情がまったくないのです。
凪沙と一果、りんと両親。一体どちらが真の家族に見えるのか?というテーマも、映画『ミッドナイトスワン』の見どころだと感じました。
シリアスな展開と優雅なバレエシーン
映画『ミッドナイトスワン』のもう一つの見どころは、やはりバレエシーンです。
凪沙がショークラブで踊るバレエのシーンをはじめ、実際にバレエダンサーとしてコンクールで功績を残している一果役の服部樹咲の演技も必見。
ストーリーがかなりシリアスなので、こうした優雅なバレエシーンが非常によく映えています。
美しさと過酷さを兼ね備えた映画『ミッドナイトスワン』は、これまでの邦画にないジャンルの作品になっていると思います。
映画『ミッドナイトスワン』に、各界の著名人も絶賛の嵐
すでに映画『ミッドナイトスワン』の公式サイトやSNSでは、本作を見た著名人たちのコメントが続々寄せられています!
どの方も文量・熱量ともにすごい!
まだ見ていない人からすると、すごく期待が膨らむものばかりですね。
コメントを寄せた人々には、女優の広末涼子をはじめ、藤井道人監督(『宇宙でいちばんあかるい屋根』)など、業界の著名人が多数!
ただ「よかった」とだけ書くのではなく、皆さんの思いの丈が詰まったコメントが印象的です。
映画『ミッドナイトスワン』まとめ
今回は、映画『ミッドナイトスワン』の見どころをネタバレありでご紹介しました!
邦画でも以前、『彼らが本気で編むときは、』(17)というトランスジェンダーを描いた作品がありました。
こちらは全体的に優しい空気が漂う映画でしたが、映画『ミッドナイトスワン』はかなりシリアスな展開が続きます。
ただ、その分バレエシーンが綺麗に見えるだけでなく、孤独に生きる人々の人生を真っ向から捉えた力強い作品にもなっています。
草彅剛の新たな代表作であることは、他の目から見ても間違いありません!