『凪待ち』香取慎吾×白石監督異色の初タッグによるオリジナルストーリーに秘められた白石映画の真骨頂とは?

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【香取慎吾×白石和彌監督 異色の初タッグ】

テーマは「喪失と再生」

白石監督×香取慎吾という、これまでにない異色のタッグによるオリジナルストーリーということもあり、映画好きの間では公開前から話題となっていた作品だ。

凪待ち

画像出典:https://eiga.com/movie/89472/photo/

白石監督とは?

これまで白石監督は『凶悪』や『日本で一番悪い奴ら』など暴力をテーマにした作品を手掛けることが多く、中でも昨年公開された『狐狼の血』は公開後に口コミで評判が広まっていき、日本アカデミー賞で優秀賞最多12部門、最優秀賞4部門を受賞し、話題となった。白石ファンとしては本作でも過激な暴力シーンやエロスを期待していたが、演出がかなり抑えられているように感じられた。だが、だからといって白石監督らしさが失われているわけでは全くない。肉体的な痛みを表現したシーンが少ないからこそ、精神に強く訴えかけてくる痛みを感じとることができる。また、圧倒的に男性から支持されることの多い作品を数多く手がけてきたが、本作はむしろ女性の方が共感できるシーンも多々あり、新規ファンの獲得に成功した作品とも言えるだろう。原作のないオリジナルストーリーだからこそ、白石監督の新しい真骨頂とも言える作品だ。

『凪待ち』あらすじ

主人公 郁男を演じたのは元SMAPのメンバー 香取慎吾。郁男はパートナーの亜弓(西田尚美)とその娘 美波(恒松祐里)と一緒に暮らしている。しかし、郁男にはどうしても止めることのできないことがあった。

ギャンブルだ。

ギャンブル依存症を克服すべく、亜弓の故郷である石巻で、亜弓の幼い頃からの知り合い小野寺(リリー・フランキー)に紹介された印刷会社で働き始める。順調に再出発を図ろうとした矢先、歯車が狂い始める…

『凪待ち』ネタバレ

郁男が順調に印刷会社で再スタートを切った矢先、些細なことで亜弓と喧嘩した美波が家に帰ってこなくなってしまう。パニックになり探し回る亜弓は、郁男が美波と血縁がないことを非難し、これに激怒した郁男は亜弓を突き放してしまう。しかし、その夜、亜弓が何者かに殺害されているのが発見される。

殺人事件が起こる作品のほとんど全てが犯人探しに焦点を当てたミステリードラマをメインに描いている。しかし、本作は殺人が起こるまで、全く犯人として怪しい人物もなく、また、事件発覚後も犯人が判明するまでの捜査の過程はほとんど描かれていない。あくまでもこの殺人事件は本作のテーマである「喪失と再生」を描くきっかけとしての事象に過ぎないのだ。

郁男は亜弓の事件をきっかけに、手を差し伸べてくれた多くの人をギャンブルで裏切っていくことになる。にもかかわらず、必ず誰かが救い出してくれるのだ。これを繰り返していく中で、ある時、やっとギャンブルで大金が当たったにも関わらず、闇金が運営する店で賭け事をしていたため、正当な支払いをしてもらえない状況に陥る。取り返しのつかないほどの借りを返すことを目的にしていた郁男は、返す手段がなくなったという現実を前に失意の底に。しかし、そんな死を考えるほどの自暴自棄の状況を小野寺がまた救い出してくれ、新たな職場で働き始めることができた。だが、その数日後、小野寺が亜弓を殺人した犯人として逮捕される。何度も周りの大切な人を裏切ってきた男が、初めて大切な人から裏切られる側に変わるのだ。

初めて裏切られたからこそ、これまで裏切ってきた人たちへの後悔の念が募り、これを晴らすべくギャンブルで使ってしまったお金を取り戻そうと、当選金の支払いを行なってくれなかった闇金を襲う。もちろん一人で相手にすることもできずにいたが、その状況からも亜弓の父と美波が救い出してくれる。

希望のラストシーン

ラストでは郁男は亜弓の父と美波と三人で、新たな人生を歩き始めることを示したシーンで終わりを迎える。

ここで初めて観客は郁男がやっとギャンブル依存症から抜け出せるかもしれないという希望を感じることができる。それまでの約2時間は全く希望を見出せず、裏切られる予感ばかりが郁男からは漂っているのだ。このように感じさせてしまうことのできる香取慎吾の演技力には感嘆させられる。実際ギャンブル依存症は麻薬と同じくらいの依存症状が現れるとも言われている。容姿での変化が現れない依存症でありながら、秀逸にギャンブル依存症の実情を表現していた。

また、結果として殺人犯であることが判明するリリー・フランキーは、もし本当に犯人であることを観客に察してほしくないのであれば、そもそも小野寺役にリリー・フランキーはキャスティングしないだろう。『凶悪』での怪演を知っている人からすれば、序盤で小野寺が犯人であることを察していたのではないだろうか。このキャスティングに関しては賛否両論あるようだが、テーマはあくまでも郁男の再生ストーリーであることを考慮すれば、文句なしのキャスティングと考えられる。

人生には悪いことの方がはるかに多く感じてしまう、この世界はなんて生きづらいのかと考えてしまう、今絶望の淵に立っている人にこそぜひ一度観ていただきたい。

『凪待ち』鑑賞後の感想

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