『スパイダーヘッド』は、2022年6月17日にNetflixで配信がスタートしたミステリー映画です。
出演は、クリス・ヘムズワース、マイルズ・テラー。
受刑者が治験の実験対象になる代わりに、自由が与えられるスパイダーヘッドという刑務所の中で起きるストーリー。
そんな奇妙な物語には、アメリカ特有のある社会問題を提起しています。
可視化させたアメリカの社会問題とは?そんな社会的側面も持つ本作を解説していきます!
『スパイダーヘッド』の概要
『スパイダーヘッド』は、Netflixで2022年6月17日に配信がスタートしたアメリカのミステリーSF作品。
主演は、クリス・ヘムズワースとマイルズ・テラー。
監督を務めたのは、『トップ・ガン:マーヴェリック』で最近注目を集めているジョセフ・コシンスキー。
ジョセフ・コシンスキーは、この他にも過去には、『トロン:レガシー』や『オブリビオン』などを手掛けており、SF映画に長けていることでも知られています。
ここ近年、クリス・ヘムズワースは自身の代表作のマーベル映画の『ソー』を演じ続けている傍ら、Netflix作品にも多く出演をしています。
中でもマーベルでも共に仕事をしていたルッソ兄弟によるプロデュース作品『タイラー・レイク -命の奪還-』は、好評で続編も製作中。
その他、公開が決まっている新作映画が5本以上控えるなど、今や世界でも随一の人気俳優となっています。
クリス・ヘムズワースだけではなく、もう1人傑出した存在感を放つマイルズ・テラーも、2014年公開の映画『セッション』以降その評価は高く、ひっきりなしに映画に出演し続けています。
そんな人気俳優2人ががっぷりと対決を果たしている本作、『スパイダーヘッド』は、少し先の未来、近未来が舞台となるSFミステリー。
刑務所を舞台に、ある謎を解き明かしていくストーリー。
クリス・ヘムズワースとマイルズ・テラーが演じる、2人のキャラクターが鍵となる作品です。
『スパイダーヘッド』の作品情報
原題:Escape from Spiderhead
監督:ジョセフ・コシンスキー
脚本:レット・リーズ、ポール・ワーニック
出演:クリス・ヘムズワース、マイルズ・テラー、ジャーニー・スモレット
公開:2022年6月17日
時間:107分
配信:視聴はコチラから
『スパイダーヘッド』のあらすじ
圧倒的な天才スティーブは、スパイダーヘッド刑務所の所長。
この刑務所では受刑者達に、最新鋭の設備と共に自由が与えられている。
その代わりに、薬の実験を行う治験被験者となるのが条件である。
しかしこの刑務所で行われている治験は、とても奇妙なものばかり。
気分が上がる薬、鬱になる薬、目の前の人を愛する薬…
そんな薬を投与する実験を繰り返す中…受刑者の1人、ジェフは疑問を抱き始める…
『スパイダーヘッド』が描く世界
『スパイダーヘッド』で描く世界では、刑務所で治験が行われており、そのおかげで自由がある受刑者達を描いたもの。
少し先の未来が舞台となり、マイルズ・テラー演じるジェフが刑務所に入り、スパイダーヘッドで過ごしています。
スパイダーヘッド刑務所では、罪を償う行為に治験を行います。
通常では、罪を償うため、厳しい制限下での生活を強いられるのですが、スパイダーヘッドではそういった制限は一切ありません。
刑務所内であれば、自由に行き来ができ、穏やかな集団生活を送れるのです。
そして、これが言うなればアメリカ社会を暗喩したものとなっています…
薬物依存は罪なのか…
映画『スパイダーヘッド』の鍵となるのは治験と刑務所。
劇中に出てくる受刑者達は、特に罪などに関してフォーカスはされません。
しかし、薬物というものがストーリー上、とても際立っています。
アメリカでは、今、薬物依存はある種の社会問題となっており、そもそも違法薬物の使用に関しての罰則化の是非が問われています。
精神的な弱さで手を出してしまった…
など、様々な理由があり、違法薬物に手を出した瞬間に罪人と区別することに疑問が呈されているのです。
その是非を問う意味でも、この映画では受刑者達に自由を与えており、犯罪者というものにおいて、罪は憎んでも人は憎まず、という精神が暗喩されている様に感じます。
オピオイド依存
違法薬物への依存は、アメリカではなくとも、世界中で問題になっている事。
際立って、今回取り上げるものではないでしょう。
しかし、より昨今問題となっている薬物問題が、オピオイド危機です。
アメリカは、日常的に医薬品の薬物にも依存する傾向が多く、映画でも頻繁に出てきます。
日本では、それこそ病気の時にしか利用しなくても、アメリカでは日常的に薬を使う人が多い文化です。
そんな中で、オピオイドに依存する人が昨今とても増えてきているのです。
オピオイドは、簡単に言えば鎮痛剤です。
多くの国では昔から違法薬物などにも使われる反面、医療でも頻繁に用いられています。
違法薬物では、アヘンやヘロインなどの成分のひとつともされているもの。
しかし一概に、オピオイド=違法薬物という訳でもなく、アメリカでは処方箋として普通に買えるものも存在します。
データとしても、オピオイドの過剰摂取の死亡者が2004年には9000人ほどだったのに対して、2016年には、4万人を超えており、2017年には「オピオイド危機」が宣言され、社会問題に発展しているのです。
その経緯を踏まえ、映画『スパイダーヘッド』を鑑賞すると、この薬物問題に対しての問題提起が行われていることが分かるでしょう。
薬物に対しての怖さ、依存度、その危険性が、まさしく的を得たように描かれているのです。
しかしこの映画では、違法薬物は一切出てきません。
それが薬というものの、怖さを表している様に感じるのです。
映画『スパイダーヘッド』で描く、薬の怖さ
『スパイダーヘッド』では、新薬投与の実験を行い、様々な反応をみせていく中で、人の思惑の先を探っていくというミステリー展開が肝となっていきます。
その中で登場する薬物は、感情を左右するものが多く、陽気になったり攻撃的になったり。
そしてラストに衝撃的な、新薬実験の意図が明らかとなります。
当然ながら、この新薬の効果はそれこそ違法薬物的な怖さが隠されているもの。
この薬物の怖さから、イリーガルには手を出すべからずという事が戒められています。
しかしそれだけではなく、薬に依存することの怖さが、しっかりと描かれているのです。
そんなことを暗喩され、映画では本当に大切なモノとは何かがしっかり定義されています。
映画を楽しむ上で、暗喩、いわゆるメタファーを理解した上で鑑賞すると、より深い理解を得られるので、是非とも映画『スパイダーヘッド』を、この後に鑑賞してみてはいかがでしょうか?