映画【異端の鳥】のネタバレ!ホロコーストで少年が震えた理由は銃だけではない

出典:IMDb

本作『異端の鳥』の原作者であるポーランドの作家イェジー・コシンスキ、彼はホロコーストの生き残りです。ナチス・ドイツを題材にした映画や小説が多く発表された1960年代に出版された『異端の鳥』は、あまりの残酷な描写からポーランドでは「発禁書」に指定されました。

この世の地獄を一切の救いなく描き出した『異端の鳥』。本実写映画がヴェネツィア国際映画祭で上映された際には、途中で退場する観客が続々現れたそう。

本記事では、映画『異端の鳥』のあらすじをネタバレ付きでご紹介。当時迫害された人々の「怒り」をひしひしと感じる本作の見所も紹介していきます!

映画『異端の鳥』の予告動画!

映画『異端の鳥』特報/TOHOシネマズ シャンテ他近日公開

本作『異端の鳥』、題材は思い切り史実に基づくホロコーストなのですが、舞台は「東ヨーロッパのどこかの片田舎」という設定。ドイツ軍が登場することから第二次大戦中であることははっきりと明かされているのですが、舞台となる国家を特定させないというスタイルです。現地民の登場人物は「スラヴィック・エスペラント語」と名付けられた人工語で話し「古風な雰囲気かつ、異国の言葉」というやや不安な印象を与えます。監督による「物語の国民的アイデンティティを持たせない」という試みがされているのです。

『異端の鳥』原作者はニューヨークで自殺

冒頭で、原作者はホロコーストの生き残りであると書きましたが、本作『異端の鳥』はまさに原作者イェジー・コシンスキの自伝。迫害されたユダヤ人の一人であった彼は、戦争後1957年にアメリカに亡命。そこでたちまち英語をマスターした彼は「天才的な語学力」と騒がれつつ、小説『異端の鳥』を出版します。

当時、世界的なベストセラーになった本作は「ポーランドを貶めている」という理由から祖国では発禁、ソ連軍を鬼のように描写したことからいくつかの社会国家でも発禁とされてきました。とはいえ、民主主義国家でベストセラーになれば十分。イェジー・コシンスキはアメリカ生活を満喫し、俳優にも挑戦するなど順風満帆な人生を送っていました。

ところが、自伝小説だと本人の口からも語られていた本作がほぼ創作であるとわかり、イェジー・コシンスキは非難の的となってしまいます。その後、ゴーストライター疑惑など、様々な嫌疑がかけられるなか、彼は自殺してしまうのです。

戦争モノでよくある「戦場に光るヒューマニズム」みたいなものが一切排除された本作。原作小説でもそれは同じです。そしてきっと、本当の戦時下でも同じではないでしょうか。『異端の鳥』の内容が「創作」であることで、掌返しをくらってしまった原作者。たとえ、体験自体は演出であっても、「子供の目から見たホロコースト」をここまで救いなく描いている傑作は、他にないと言われています。

映画『異端の鳥』のキャストを紹介

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本作『異端の鳥』のメガホンを取るのが、原作者と同じくチェコ出身のヴァーツラフ・マルホウル監督。彼は「発禁になって原作者が自殺した曰く付きの物語」を確実に映画として発表するべく、17通りの脚本を3年以上の歳月をかけて執筆したそう。

不幸中の幸いなんて決して起こらない、これぞ「戦争の悲劇」と呼べる今作のために、ヨーロッパの名優が顔を揃えています。ストーリーのネタバレにうつる前に、映画『異端の鳥』のキャストをサラッと紹介していきます!

「驚異の新人」ペトル・コラール

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本作の主人公である「少年」。『異端の鳥』はほぼ全編通して彼の視点で描かれます。「少年」ありきの今作ですが、演じたのはなんと映画初出演の新人、ペトル・コラール。ドラマ『Mother』の後の芦田愛菜がめちゃくちゃ心配になったのと同じ感情を抱きます。こんな悲惨な役をこんな幼くして演じて、彼はこれから大丈夫だろうか……。

話題作の常連俳優が勢揃い!

他にも「北欧最強カメレオン俳優」ステラン・ステルスガルド、「元海兵隊ユダヤ人」ハーヴェイ・カイテルなど、ヨーロッパを代表する名優が脇を固める今作。『ダンサー・イン・ザ・ダーク』出演の俳優が二人も出演しているあたり、本作に挑むヨーロッパのマジを感じます。

アイアン・スカイ 第三帝国の逆襲』でアドルフ・ヒトラーを演じたウド・キアーも出演。ドイツ出身のウド・キアー、実は『悪魔のはらわた』『処女の生血』などの怪奇映画出身。怪しい雰囲気、関わりたくない感じは折り紙付き……!

以下、映画『異端の鳥』のネタバレ!

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キャストの紹介が済んだところで、いよいよ本作『異端の鳥』のストーリーをネタバレ付きで紹介していきます!第二次世界大戦中「東ヨーロッパのどこかの片田舎」で生きる主人公の「少年」の想像を絶する経験を目の当たりにします。

疎開先の村から追放された「少年」

ホロコーストを逃れるために、田舎に疎開した13歳の「少年」。彼は、疎開先でお世話になっていた叔母が病死し、その上火事で家が焼失したことで身寄りがなくなってしまいます。「少年」は村の子供達から酷いいじめを受け、疎開先の村から追放されてしまうのです。

黒い瞳と髪は「邪悪の印」と罵られ、ありとあらゆる暴力を受けた後、体を縛られたまま馬車に引きずられた「少年」。自分の命を守るために、村を後にするしかありませんでした。

残酷な仕打ちに晒され続ける

ここから先は2年間に及ぶ「少年」の過酷な放浪の記録。ユダヤの処刑、リンチ、獣を使ったレイプに至るまで、彼は現実を目撃し続けます。収容所行きの列車から決死の思いで飛び降りたユダヤ人。後ろから、ひとり残らず銃で撃ち殺されます。

「少年」は途中、司祭に助けられます。ところが、司祭は病に侵されてしまい死期を悟ります。「少年を引き取りたい」と申し出る男に「少年」は預けられていきますが、この男、小児性愛者なのでした。こうして「少年」の絶望的な日々は再び始まるのです。

鳥売りの男との出会い

「少年」を受け入れる善人は他にも現れます。鳥売りの男は、彼を匿い家に住まわせます。鳥売りの男とのシーンに『異端の鳥』というタイトルを回収する場面が設けられます。

飼っている鳥の一羽にだけ、白いペンキを塗ってから放って見せる鳥売りの男。他の鳥たちは大空を羽ばたきますが、しばらくすると白いペンキが塗られた鳥だけが血まみれになって落ちてきます。「異端とは何なのか」「なぜそれを排除しようとするのか」。迫害された人々の絶望と、湧き上がる怒りを感じるシーンです

ある日、「淫売」と囁かれていた鳥売りの男の恋人が、村の女たちにリンチされ殺されてしまいます。実際この恋人は、裸で森をウロウロしては男を誘惑するという闇の深い女性。事の顛末を知った鳥売りの男は首を吊ります。

「少年」は、鳥売りの男を助けようとします。しかし、ガリガリの子供にできることなんてありません。「少年」は首吊りの重しになるために鳥売りに飛びつくことしかできませんでした。死の苦しみを少しでも短くしてあげようとしたのですね……。

男が死んだ後、「少年」は鳥売りの男が飼っていた鳥たちを大空に放します。

「少年」は言葉と心を亡くしていく……。

いよいよひとりになった「少年」。生きるためにと、瀕死の少年を追いはぎできるくらいに心は死んでいました。ほとんど口を聞かない「少年」でしたが、後半では失語症に陥ります。ちなみに「少年」は、これまで誰にも名前を名乗っていません。

ソ連軍の駐屯地で保護された「少年」。戦災孤児となった彼は、その晩は兵士のテントで夜を明かします。狙撃手であった兵士は、「少年」に銃を与えます。「目には目を、歯には歯を」。

そして「少年」は、復讐のために銃を使います。2年にも渡り、沈黙して過酷な境遇を生き抜いてきた「少年」は、自分のことを殴った人間のことを撃ち殺してしまうのです。

映画『異端の鳥』が描き出すホロコーストの本質

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誰一人として「少年」をまともに助けてくれない、地獄の地獄。映画『異端の鳥』では、放浪する少年が徹底的に排除され続けます。人間の汚れた部分だけを鮮明に描いた印象ですが、これはあくまで「少年の目に映るホロコースト」なのだと思います。

心理描写や回想の手法などはなく、淡々と時系列に沿って物語は進みますが、フィルターはあくまで「少年」なのだと。「異端なものは排除する」という人間の本質に気がついてしまった少年の目には、排除された事実だけがはっきりと写ります。

一時は身寄りがなくなった「少年」ですが、ナチスの収容所から生還した父親に最後は引き取られます。感動的なシーンではありますが、父親の腕には痛々しい囚人番号の焼印。それを見た少年は、バスの窓に指を使って自分の名前を書くのです。「少年」の戦争は終わったのでしょうか?そして、自殺した原作者イェジー・コシンスキの戦争は、いつ終わったのでしょうか?

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