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「ウォール街」一攫千金の投資家を描いた問題作!強欲の果てにあるものは?

投資家や証券業界を描いた映画は数多く発表されていますが、1988年に公開されたオリバー・ストーン監督作品の「ウォール街」は、その後に残る大ヒットを記録します。人間の強欲と危ない投資で築いた砂上の楼閣を描いた本作は、人間の本質に迫る社会派オリバー・ストーン監督の作風が色濃く出ています。

ウォール街(1988年公開)のあらすじ

ニューヨークの大学を卒業し、証券会社に入社したバド・フォックスは、ニューヨークの高い物価で生活が一向によくならないことに失望し、航空会社の整備工を行う父親のカール・フォックスからお金を借りながら生活をしていた。そんな生活でも本人は出世をし、贅沢な生活をすることを夢見ていた。
ある時、父親カールから勤務している航空会社の飛行機墜落事故の原因が航空機メーカによるドアの不備によるものだったという非公式の情報をもらう。近々、公式に発表があるというが今は未公開情報だというが、これが公になれば、墜落事故は航空会社の責任ではなく航空機メーカによるものとなり、航空会社の株価はあがることになる。一方、バドが毎日のように面会の連絡をしている若くして成功した経営者であり、投資家のゴードン・ゲッコーに会うことに成功する。その際に、航空会社の情報をゲッコーに伝えると気に入られ、ゲッコーとバドは師弟関係のような関係となり、ゲッコーに投資の指南を受けるようになる。
やがて、ゲッコーの助けもあり、順調に証券会社で出世をしていき、大金と女性を手にする。しかし……。

バドとゲッコー

出典元:https://ciatr.jp/topics/307518

株価に影響する未公開情報を探して奔走

やり手の経営者でもあり、投資家でもあるゲッコーの弟子になれたと浮かれているバドですが、その扱いはやはり並大抵のものではありません。誰でも取れるような情報では満足しないゲッコーは、ある投資家をバドに尾行させたり、企業の法務を担当するバドの大学時代の弁護士に企業の未公開情報を求めたりします。こうした行為は証券会社の社員でなくても、インサイダー取引となり、完全な違法行為です。
しかし、ゲッコーのような成功者になりたいと考えていたバドはこうしたゲッコーの依頼にも応えていきます。

映画中盤にゲッコーが買収した企業での演説

ゲッコーは、自分の利益のためには何でもする男です。業績不振の会社の株を買いまくり、筆頭株主になった際の株主総会では、自分は社員のために、何もしていない経営者に喝を入れるといって株主たちを納得させます。さすが説得力もあり、自分の利益のために買った企業ですが、公益のためにやっている事業だと主張します。これは、今でいう「物言う株主」の走りです。

父親の勤める「ブルースターエアライン」の経営再建に関わり正気を取り戻す

ゲッコーの投資で、父親カールの勤める航空会社ブルースターエアラインを買収して取締役となったバドだが、当初ゲッコーから聞いていた経営再建計画とは全く異なる航空会社解体の計画だったことを知ります。さらにその計画の際にゲッコーに多額の売却益が入ることを知り、初めてゲッコーと対立することになります。
映画終盤の株式を値動きに合わせて売ったり買ったりの攻防戦は素人には分かりづらいかもしれませんが、バドが正気に戻った瞬間でもあります。

「ウォール街」主要キャスト

バド・フォックス/チャーリー・シーン

バド・フォックス

出典元:https://movies.yahoo.co.jp/movie/2367/photo/?page=4

証券会社での出世を夢見て、毎日投資家に株のセールス電話をしている。ある日ゲッコーと面会し、人生が変わる。

ゴードン・ゲッコー/マイケル・ダグラス

ゴードン・ゲッコー

出典元:https://therake.com/stories/icons/michael-douglas-wonder-boy/

若くして成功した経営者でもあり、投資家。企業買収を行う際にも非情な売買を平気で行う。投資の世界では天才的な才能を持つが、人間的には欠落した性格の持ち主。

カール・フォックス/マーティン・シーン

カール・フォックス

出典元:https://middle-edge.jp/articles/biPVc

バド・フォックスの父親であり、航空会社「ブルースターエアライン」の労働組合の委員長。
お金は働いて稼ぐものだという信条を持ち、航空機の整備工を生業としている。息子のバドが勤務する証券会社をマネーゲームと思い、快く思っていない。

ダリアン・テイラー/ダリル・ハンナ

ダリル・ハンナ

出典元:https://movies.yahoo.co.jp/movie/12138/photo/?page=2

ゲッコーの家にバドが招かれた時に、家にゲストとして招かれていたインテリアコーディネーター。美人でバドが一目ぼれする。ゲッコーの指南でお金持ちになっていくにつれて、バドと恋人関係になっていったが、実はゲッコーの愛人。バドが成功してイーストサイドの高級マンションに同棲をする様になるが、とにかく欲深い。

カリスマ性もある投資家ゴードン・ゲッコーに憧れる人が続出

映画公開当初の1980年代後半は、アメリカは不景気に苦しんでいて、日本ではバブルが起こっていました。日本の株価の状況が度々映画の中に出てきます。
それに対して、アメリカでは不景気により多くの企業が経営不振に陥っていました。そんな中、映画の中に登場するゴードン・ゲッコーに憧れて証券業界に入る学生が多くいたと言います。確かにビジネスファッションにおいても、当時の最先端のものを身に着けていて、非常にモダンです。(当時は、です)
製造業での限界を感じていた当時のアメリカは、企業買収を行って企業を再生するハゲタカファンドが乱立します。そんなハゲタカでも、株主や従業員に対して企業を再生し救うという演説は、とてもカリスマ性を感じます。多くの人が憧れるのもわかります。

オリバー・ストーン監督の描きたかった強欲と正義

お金持ちになることを望んでいたバドは父親カールのような地道に稼ぐ道を選ばずに、証券業界に入り、ゲッコーと出会います。ゲッコーと組んでいる中で、バドはお金のためなら何でもするような性格になっていきます。大学時代の友人をも利用し、インサイダー情報のある弁護士事務所に、清掃会社の従業員に扮してまで忍び込んで企業情報を盗み出します。これはインサイダー取引以前に犯罪行為と言えるでしょう。
そうした行為がばれていない間は、バドは不景気でも株取引で確実に利益を出すやり手の証券マンとして、順調に出世をしていきます。しかし、彼の同僚や父親は明らかに変わってしまったバドに対して不信の目で見るようになります。

自分の父親の勤務した会社を自分の手で解体

バドは父親の勤務する航空会社の経営再建を行うはずが、ゲッコーの策略で会社を解体する計画の主犯にされてしまいます。ここで今までインサイダー情報を手に入れてゲッコーに提供してきたことで自分が利用されていたことに気づきます。
しかし、そのおかげで自分は贅沢な生活を手に入れることができたということでもあります。こうしたものは全て違法に行った行為の元に成り立っていました。この時が来るまで、出世といい生活に目がくらんでいたバドは全く気が付きませんでした。

強欲は正義か?

作中でもゲッコーは数々の名言を残しています。投資は情報が命だと言った「Buy my book」は、安倍首相も引用しています。
また、強欲を批判された時にも、「強欲は善だ」といって相手に畳みかけます。強欲が技術を進歩させ、多くの人へ職を与えたということです。
オリバー・ストーン監督はここを最も言いたかったのではないかと感じます。強欲で金に物を言わせることで不幸になる人もいるということは事実です。最後のバドに父親が勤務する航空会社でも解体をされれば多くの失業者が出ます。しかし、ゲッコーはこれも企業が体制が古くなったから変えることを目的だと言っています。本当に強欲は善なのか?世界を見渡しても、未だに良い答えがありません。

オリバー・ストーン監督

出典元:https://tst-movie.jp/reportblog/?p=4724

オリバー・ストーン監督

オリバー・ストーン監督の父親 株の仲買人「ルイ・ストーン」

作品の最後にこの作品を株の仲買人ルイ・ストーンに捧ぐというエンドロールが出てきます。
ルイ・ストーンはオリバー・ストーン監督の父親で株の仲買人です。
バドの直属の上司でもあるルー・マンハイムのモデルともなっています。
彼の投資思想は、時間をかけて成長する分野への投資を顧客に勧めるというものです。また、不景気の時にこそ真の証券マンの実力が出ると言って、薄々不正を行っているのではと感じているバドに苦言を呈します。
投資は本来そうあるべきではないかというバドの行為と対照的な立場で描いたものです。

それぞれの生き様が複雑に交錯する名作

強欲で築いた砂上の楼閣はすぐに崩れてしまいます。
投資という不確定なものに命を懸ける男たちとそれに立ち向かう人それぞれの生きざま、それを彩る女性たち。
オリバー・ストーン監督入魂の作品となっています。
様々な人間模様が現代にも通じる哲学を作っている「ウォール街」は名作です。

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