『モンスター:その瞳の奥に』は、2021年5月7日にNETFLIXで配信がスタートした、法廷ヒューマンドラマです。
無実を主張する少年が、若い黒人というだけで裁判で不利な状況に陥る様を描いた作品。
そんな『モンスター:その瞳の奥に』をネタバレ解説します。
物語に隠されたモンスターの正体を、徹底解明していきます!
『モンスター:その瞳の奥に』の概要
NETFLIXオリジナル作品となる、『モンスター:その瞳の奥に』はいわゆる法廷劇となる。
至って普通の高校生が、身に覚えのない罪で捕まり、裁判にかけられる様を描く。
人の偏見により、その真相を見えなくなるこの映画の仕掛けはとても秀逸で、各方面でも高い評価を獲得。
単純にそのストーリーだけではなく、脚光を集めたのは出演陣にも注目が注がれています。
A24配給の『WAVES/ウェイブス』の主演で大きな脚光を集めた、ケルヴィン・ハリソン・Jrが本作でも主演する他、多数豪華な出演陣が集っています。
主人公のスティーブの両親には、MCU作品『ホワット・イフ‥?』のウォッチャー役となるジェフリー・ライトとジェニファー・ハドソンが務める。
その他にも、ジョン・デヴィッド・ワシントン、エイサップ・ロッキー、ナズら名だたるHIPHOPアーティストが集結。
彼らの演技も高い評価を得ると共に、製作にはジョン・レジェンドらも参加するなど、音楽業界の大物らにも関心を集めています。
改めて人種差別について考えさせられる、深い内容になっている作品です。
『モンスター:その瞳の奥に』作品情報
原題:Monster
監督:アンソニー・マンドラー
脚本:ジャネス・シェイファー、コレン・C・ワイリー
原作:ウォルター・ディーン・マイヤーズ『Monster』
出演:ケルヴィン・ハリソン・Jr、ジェニファー・ハドソン、ジェフリー・ライト、ジェニファー・イーリー、ティム・ブレイク・ネルソン、エイサップ・ロッキー、エイサップ・ロッキー、ナズ
『モンスター:その瞳の奥に』あらすじ
高校生スティーブは、若い黒人というだけでとある事件の犯人として捕まってしまう。
本人は無罪を主張するも裁判では、みんな疑いの目を彼に向ける…
果たして、身に覚えのない事件で彼の刑は決まってしまうのか…、スティーブの視点で、事件前、事件後、裁判の模様を描き出す。
『モンスター:その瞳の奥に』をネタバレ解説!
ここからは、映画『モンスター:その瞳の奥に』のネタバレ解説となります。
内容に関して深く切り込む内容になっているため、十分注意してご覧ください。
前半部分のストーリー
本作の監督を務めるアンソニー・マンドラーは、HIPHOPなどのアーティストのPVを製作してきた人物です。
その為、映画的な見せ方よりも映像としての見せ方に注力しており、それが批判の的にもなってしまっていました。
それ故、本作の前半部分は、ストーリー的には非常にも経ってしまっている部分であると指摘されていました。
ですが、ここで注目となるのは、主人公スティーブの人となりです。
彼は、若い黒人ですが至って普通の高校生。
大人になる過程の最中にいる、思春期の少年であるということ。
この描写を煌めきと共に、丁寧に描いているのです。
スティーブ(ケルヴィン・ハリソン・Jr)は、映画製作の特別クラスに参加しています。
プライベートでは、カメラを片手に様々な写真や映像を撮りためていました。
授業の課題の一環でもあり、積極的に向き合っている光景が映し出されます。
その最中、ストリートで友人のスケートボードの風景を撮っている中で、ある青年に声をかけられます。
それがウィリアム・キング(エイサップ・ロッキー)。
彼を被写体として、フォトジェニックに映像に残していきます。
一方でスティーブには、愛する彼女もおり、家族との関係性も良好で、その光景だけでも至って優しい普通の青年である事が伝わるのでした。
逮捕者スティーブ
スティーブの普段の生活を描くのは、この事件の経緯を露わにする、そのきっかけからXデーまでの期間を描いたもの。
一方で、Xデーとなる事件の当日以降、捕まった後からの時系列も同時に描き出しています。
そこでは、普通の青年から一転、逮捕さはスティーブの光景となる。
まだ容疑者である段階で、周りの視線はすでに犯罪者であるような扱い。
裁判の最中で、刑の確定もしていません。
スティーブが唯一頼れる弁護士も、いくつもの案件を抱えており、無実をだみ頃の底から信じきれていない模様でした。
そんな状況でも、スティーブは心を折らずに戦うしかありません。
しかしスティーブが裁判中に勾留されている場所は刑務所で、自分を保つことすら精一杯でした。
これらのストーリーを交互に織り交ぜながら展開していくのが、本作『モンスター:その瞳の奥に』の特徴的な展開です。
『モンスター:その瞳の奥に』の終盤、裁判の光景
終盤に差し掛かるにつれて明らかになってくる、スティーブが何故捕まったのか、その経緯。
コンビニの店員が襲われ死亡、スティーブはその襲った一員として、犯人の一味にさせられてしまいます。
その結果、犯人の一味として裁判が行われます。
スティーブは、犯人の一味では無いという証明をしていくのです。
事件の目撃者、学校の先生などの証言を元に、スティーブがどういった少年なのかをあらわにしていきます。
あくまで、この事件にスティーブは関わっていない。
という事実を想定して進んでいくのです。
無実であるというスティーブの発言のもと物語は進んでいくため、当然そういう思い込みが発生するのは当然です。
しかし物語は終盤に差し掛かるにつれて、衝撃の事実が明らかになっていきます。
事件の真相
スティーブは、キングと関わりを持っていました。
しかし裁判では、2人は全くの無関係として進んでいきます。
でも実際は、2人は深い関係では無いものの、友人ぽい関係性でありました。
スティーブは、善良な高校生。
キングと関わりを持っていても、正直にいえば知り合い程度でしょう。
そんな彼らは、ある日ストリートで出逢います。
キングはスティーブに、あるお願いをします。
通りにあるコンビニに、他にお客さんはいないか、偵察に行って欲しいと。
それで、居なかったら合図を送って欲しいと頼むのでした。
それは、今まで裁判で争ってきたスティーブがこの事件に関わっているのか…
その真相だったのです。
スティーブは、キングの申し出を受けて、コンビニに入ります。
そして飲み物だけを買い、店の外に出てきます。
夕日が眩しかったスティーブは、陽の光を遮るように手をあげるのでした。
それが意図的だったのか…
図らずも、それがキングに向けた合図となってしまいます。
事件の真相は、スティーブはキングたちの犯行に加担していたのです。
モンスターは誰なのか?
この映画で描かれているモンスターは、3パターン存在します。
もちろんひとつは、キングたちギャングを指しています。
人を無惨にも殺してしまう様は、明らかに世間から見ればモンスターでしょう。
もうひとつは、その世間の目。
裁判にかけられている若い黒人というだけで、その少年の人となりさえ理解せずに軽蔑する目を見せる陪審員たちの疑いの目。
それはもはや、群衆の暴力であり、当事者のスティーブからは、彼らの目こそ、モンスターに映ったことでしょう。
そして最後のモンスターは、スティーブです。
キングに言われるままに、コンビニに向かってしまったスティーブ。
言うなれば、恐怖に屈してしまった臆病な青年。
それが結果的に、殺人事件に加担してしまうという結果に。
ここで、その恐怖に屈せずしっかりと、彼らにNOという強い心を持っていれば、また結末は変わったのかも知れません。
もしくは、この状況であれば、逃げることも強さのひとつでしょう。
彼らに屈指してしまった弱さ、これがある種のモンスターなのかも知れない。
そしてそんな事をしておきながらも、裁判ではしらを切り通し、自分の責任にはしない狡猾さ。
まさに、スティーブはモンスターの要因を秘めていると言ってもいいでしょう。
この3パターンのモンスター。
貴方は、どうみますか?
この作品は、そんな様々なモンスターを暗に提案する、すごく奥深い作品です。
当事者、傍観者、従者、果たして最も罪深いのは誰なのか…
モンスターは瞳の奥に、心の奥深くみんなの中に潜んでいるのかも知れない…