『セブン』『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』『ソーシャル・ネットワーク』などヒットメーカーとして名高い映画監督・デヴィッド・フィンチャー。近年はアニメやテレビドラマの監督・製作も手がけるなど順調なキャリアを歩む彼ですが、デビュー作『エイリアン3』の評価は散々。「新たに映画を撮るくらいなら大腸癌で死んだ方がましだ」とすら嘆くほど。今回は鬼才と呼ばれるデヴィッド・フィンチャーのおすすめ映画作品とともに、波乱の監督人生を振り返っていきます。
デヴィッド・フィンチャーが映画監督としてデビューするまで
プロフィール
- 生年月日 1962年8月28日
- 出生地 コロラド州デンバー
- 活動期間 1984年~
デヴィッド・フィンチャーは地元オレゴンの高校を卒業後、ジョージ・ルーカスが設立した特殊効果やVFXの制作会社・インダストリアル・ライト&マジックでアニメーターとして働きます。その後会社を辞め、1986年ビデオ製作会社を設立。マドンナ、エアロスミス、ローリング・ストーンズなど、多くのアーティストのミュージックビデオやCMを手掛け、注目を浴びます。
映画デビュー作でいきなり叩かれる『エイリアン3』
基本情報
監督:デヴィッド・フィンチャー
キャスト:シガニー・ウィーバー,チャールズ・ダンス,チャールズ・S・ダットン,ランス・ヘンリクセン
公開:1992年
デヴィッド・フィンチャーが『エイリアン3』の監督を務め、大コケしたのは有名な話。しかし、これが彼のデビュー作だったことはご存知でしょうか。今にして思えば、ジェームズ・キャメロンがメガホンをとった前作の後を、ズブの素人に任せるというのもなかなか無理があったのかもしれません。デヴィッド・フィンチャーの名が広く知られた今だからこそ「そこまで悪くない」という評価もありますが、当時は相当酷評されました。企画段階から脚本の変更やキャストとのトラブルも多発し、デヴィッドは次の映画を撮るまで一年半ものあいだ塞ぎ込んでしまいます。
衝撃的なラストでヒットメーカの仲間入りを果たす『セブン』
基本情報
監督:デヴィッド・フィンチャー
キャスト:ブラッド・ピット,モーガン・フリーマン,グウィネス・パルトローケヴィン・スペイシー
公開:1995年
『エイリアン3』以降、意気消沈していたデヴィッドは『セブン』の脚本を一時拒否。しかし、読み返すうちその魅力に取り憑かれていきます。ふたたびメガホンを取る情熱を取り戻したデヴィッドでしたが、この時も順風満帆というわけではありませんでした。企画段階でモーガン・フリーマンが演じたサマセットにはアル・パチーノが、ブラッド・ピットが演じたミルズにはデンゼル・ワシントンが候補に上がっており、ラストシーンについても実際に採用された案とは別の筋書きが用意されていました。結果として高評価を得た『セブン』ですが、何かがひとつでも違っていたらまったく別の映画になっていた可能性だってありました。
映画監督としての地位を確立した『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』
基本情報
監督:デヴィッド・フィンチャー
キャスト:ブラッド・ピット,ケイト・ブランシェット
公開:2008年
『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』で、第81回アカデミー賞13部門にノミネート。うち美術賞・視覚効果賞・メイクアップ賞を受賞しました。『セブン』『ファイト・クラブ』に続き三度目のタッグとなったブラッド・ピットもまた、老人として生まれ年齢を重ねるごとに若返っていく難しい役どころを演じアカデミー賞主演男優賞にノミネートされます。これまでサスペンスやスリラー、ホラーを得意としていたデヴィッドですが、今作のヒットで名実ともにハリウッドを代表する映画監督になりました。
デヴィッド・フィンチャー最大興収作品となった映画『ゴーン・ガール』
基本情報
監督:デヴィッド・フィンチャー
キャスト:ベン・アフレック,ロザムンド・パイク,ニール・パトリック・ハリス,タイラー・ペリー,キャリー・クーン,キム・ディケンズ
公開:2014年
『ソーシャル・ネットワーク』(2010年)・『ドラゴン・タトゥーの女』(2011年)のヒットに続き、2013年からはTVドラマ『ハウス・オブ・カード 野望の階段』の製作総指揮を務めるなど精力的に仕事をこなしてきたデヴィッド。本職の映画でも2014年に公開した『ゴーン・ガール』が自身最大のヒットを記録します。『ゴーン・ガール』は興行だけでなく、ロザムンド・パイクが第87回アカデミー賞主演女優賞にノミネートされるなど作品としても高い評価を得ます。
新作映画をNeflixで製作!主演ゲイリー・オールドマンと初のタッグ
斬新なものを求めるデヴィッドの意欲は、ヒットメーーカーとなった今もまったく衰えることを知りません。実父であるハワード・フィンチャーが脚本を執筆した最新作『Mank』(原題)は、もともと自身の第三作目として予定していた作品。モノクロ映画で撮りたいという意向を当時はスタジオ側が拒否したために一時頓挫していたプロジェクトが、ようやくNeflixのオリジナルという形で動き出しました。傑作『市民ケーン』の脚本を執筆した主人公・ハーマン・J・マンキウィッツはゲイリー・オールドマンが務めます。『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』でアカデミー賞主演男優賞に輝いたゲイリー・オールドマンをどう撮るのでしょうか。
映画監督としてNetflixでは製作総指揮として活動の場を広げ続けるデヴィッド・フィンチャー
2017年以降はNetflixでドラマ『マインドハンター』の製作総指揮を務め、本職でも長年温めてきた『市民ケーン』の脚本家ハーマン・J・マンキウィッツの伝記映画『マンク(原題) / Mank』でメガホンが決定。マンキウィッツ役に演技派ゲイリー・オールドマンを迎えます。こちらもどんな映画になるのか、今から鬼才の新境地に期待がふくらみます。