出典:IMDb
ロブ・ゾンビ監督と言えば、名作ホラーハロウィンのリメイクから始まった、ハロウィンシリーズが有名です。
ホラーアイコン「マイケル・マイヤーズ」の映画です。
もう1つ、彼の映画に登場する伝説的キャラクターたちがいます。
それがファイアフライ家「殺人一家」が登場する、マーダー・ライド・ショーシリーズです。
第1弾が2004年、第2弾が2006年に日本公開されました。
第3弾のスリー・フロム・ヘル(2019年)が10月30日から「シッチェス映画祭ファンタスティック・セレクション2020」で、14年振りに日本公開される予定です。
シリーズの監督であるロブ・ゾンビファンやホラー映画好きからは、傑作シリーズ最新作が公開ということで、注目が集まっています。
毎回描かれている、阿鼻叫喚のウルトラ・ハードコア・バイオレンスは強烈です。
本記事を読むことで、スリー・フロム・ヘル(2019年)の予習・復習をすることが出来ます。
伝説の「殺人一家」が登場する第1弾マーダー・ライド・ショー(2003年)をネタバレありで解説します。
見所、過去映画からのオマージュ元の考察へと続き、作品を振り返っていきます。
マーダー・ライド・ショー(2003年)は、ざっくりいうと、ひょんなことで立ち寄った「バケモノ博物館」での体験が、のちに実際に起こってしまう映画です。
有名な殺人鬼たちの展示を乗り物に乗りながら紹介されるのを遊園地のように楽しみますが、のちに実際に「殺人一家」に遭遇してしまいます。
『マーダー・ライド・ショー』作品情報
監督:ロブ・ゾンビ
脚本:ロブ・ゾンビ
音楽:ロブ・ゾンビ、スコット・ハンフリー
出演:キャプテン・スポールディング(シド・ヘイグ)
オーティス・ドリフトウッド (ビル・モーズリイ)
ベイビー・ファイアフライ(シェリ・ムーン)
マザー・ファイアフライ(カレン・ブラック)
タイニー・ファイアフライ(マシュー・マッグローリー)
グランパ・ヒューゴ・ファイアフライ(デニス・フィンプル)
ラヴェリ(アーウィン・キーズ)
公開:2004年8月14日
時間:89分
映倫:R-15
予告編:https://www.youtube.com/watch?v=2GzNNMY8Ji8
本作の撮影が2000年の5月から8月に行われたのに、内容のあまりの過激さにアメリカで公開されたのが2003年の4月。
しかしながら、いざ公開されたら、ホラー映画ファンやロブ・ゾンビファンが熱狂し、異例の大ヒット。
カルト的な人気を誇っている作品。
マーダー・ライド・ショーは、タイトルのどおりの極彩色の地獄パノラマが描かれています。
この作風は、ハロウィンII(2009年)、ロード・オブ・セイラム(2012年)、31(2016年)でも展開されてきました。
殺人一家ファイアフライ家のキャラクター、トリッキーな映像、ミュージシャンならではの映画音楽の使い方、過去映画からのオマージュに注目です。
やべえ奴!殺人一家ファイアフライ家をめぐるキャラクターたち
キャプテン・スポールディング:バケモノ博物館を経営するピエロのキャラクター。西部劇が好き。ジョン・ウェインを崇拝し、腕にジョン・ウェインのタトゥーを入れている。
オーティス・ドリフトウッド:ファイアフライ一家と家族同然に暮らしている。鬼畜の限りを尽くす家長。モデルは、ジョニー・ウィンターとチャールズ・マンソン。
ベイビー・ファイアフライ:拷問中に、私の好きな女優は?と質問して、マリリン・モンロー?と不正解の答えに、頭の皮を剥ぐ陽気なサイコパス。ちなみに答えは、ベティ・デイヴィス。
マザー・ファイアフライ:ベイビーの母親。若づくりした派手な服装と、厚塗りメイク。
タイニー・ファイアフライ:父親によって、全身が焼けただれている大男。
グランパ・ヒューゴ・ファイアフライ:じい様。演じたデニス・フィンプルは本作が遺作。
ラヴェリ:スポールディングの相棒。
『マーダー・ライド・ショー』ネタバレ
1977年ハロウィン前夜〜ハロウィン当日〜その翌日までが描かれます。
2組の若いカップルが田舎に迷い込み、殺人一家に襲われるという定番ストーリー。
ですが、ロブ・ゾンビが描きたかったホラー映画の本質は、「にわか」が「本物」によって味わわされる恐怖。
この映画の構成は、映画のアバンタイトル、本編でも共通しています。
アバンタイトルでは、近所の知り合いが強盗のまねごとをして、スポールディングとラヴェリに返り討ち。
本編では、奇妙な場所の取材している若者たちが、本物の殺人一家に迷い込んでしまいます。
あらすじ・ネタバレ
10/30
スポールディングが経営する、ミュージアムとガソリンスタンドを兼ねた、バケモノ博物館に偶然たちよる4人(ジェリー、デニース、メアリー、ビル)。
ジェリーは、バケモノ博物館でのマーダーライドにより、「ドクター・サタン」が気に入って、大興奮。
ドクター・サタンは、有能な医者だったのに、裏で独自の理論で脳手術を行い超人を生み出す実験を行っていた殺人鬼です。
彼は地元の自警団により絞首刑になったものの、翌朝に死体が消えて、まだ見つかっていません。
絞首刑に使った木が付近にあると知り、スポールディングに地図を書いてもらって4人は木を探すことに。
ベイビーが登場し、ドクター・サタンの木を案内されます。
その途中、車がパンクし、ベイビーの自宅に招待されますが、そこに待ち受けているのは、殺人鬼一家でした。
4人はファイアフライ家に拷問されます。
オーティスはビルを半魚人のオブジェクトに加工してしまいます。
10/31
ハロウィンの夜。
若者たちは、ウサギの着ぐるみを着させられ、ファイアフライ家は、人間狩りを始めます。
メアリーはベイビーに捕まり、ナイフでメッタ刺しにされました。
用意されていた棺桶にジェリーとデニースは投げ込まれ、地下に降ろされます。
その途中で、ジェリーはつかまってしまいます。
デニースは地下道の奥へ進みます。
地下道では、絞首刑で死んだはずのドクター・サタン(ウォルター・フェラン)が現れ、人体実験をしています。
手術されていたのはジェリーで、頭蓋骨をむき出しにされ、見るも無残な姿に。
その光景を目の当たりにして、恐怖するデニースに突然襲いかかる斧を持った大男:通称プロフェッサー、アール・ファイアフライ(ジェイク・マッキノン)。
プロフェッサーが追いかけ、逃げるデニース。
プロフェッサーが振り下ろした斧で柱が破壊、天井が崩落して、自滅します。
11/1
傷だらけの体で目覚めたデニースの元へ、スポールディングが運転する車が現れます。
スポールディングは彼女を車に乗せ、名医を紹介すると言って、デニースは気を失います。
後部座席からオーティスが身を乗り出します。
デニースが目を覚ますと、ドクター・サタンの手術台の上で、隣にはプロフェッサーもいます。
ジ・エンド?の文字がでて、クレジットが流れます。
ファイアフライ家の大黒柱だった父:アール・ファイアフライの正体
はっきりとした説明はありませんが、アール・ファイアフライは、絞首刑になる前にドクター・サタンの改造手術に受けています。
そのせいで暴力とは無縁だったのに凶暴化。
家に火をつけてしまい、タイニーは全身おおやけどを負ってしまいます。
ドクター・サタンが生き延びていたのは、アールが救ったから
また、ドクター・サタンを助けたのもプロフェッサーだと思われます。
マスクなどがつけられて、特殊な器具がないと生きられない体になっています。
ひっそりと、何十年も地下道で実験を繰り返してきた様子が伺えます。
見所(映像・音楽)
タイトルシーケンスは、16mmフィルムで撮影された断片的なカットに、House of 1000 Corpses(ロブ・ゾンビ)が流れます 。
名場面は、デニースの父、ジョージ・ワイデル警部補(トム・トウルズ)、ジョージの部下スティーヴ・ナイシュ(ウォルトン・ゴギンズ)の3人がファイアフライ家を訪れるシーン。
3人はファイアフライ家に足を踏み入れますが、犠牲になってしまいます。
スローモーション・モーションモンタージュと対比法(残酷な場面で平和な音楽が流れて、場面が強調される表現方法)を活用しています。
音楽は、I Remember You(スリム・ホイットマン)。
特に、スティーヴ・ナイシュが撃たれるシーンは、超スローモーションの「ため」の演出。
映画全体で緩急がついていて非常に素晴らしい!
ロブ・ゾンビもコメンタリーで一番のお気に入り場面と語っています。
他にも、オープニングクレジット以外にも16mmフィルムの凝った映像のフラッシュバックや、ステディかつのズームや、画面分割などが使われています。
トリッキーな映像表現がつぎつぎと展開。
エンドロールの曲は、Brick House 2003(ロブ・ゾンビfeat. ライオネル・リッチー&トリーナ)。
既存の曲以外にも、音楽はロブ・ゾンビとスコット・ハンフリーのスコアによるインスト・ナンバー。細かい音の演出が随所に散りばめられています。
DVDの特典映像では、音楽を使ったシーンをまとめたミュージックシーン・プレビューモードが収録されています。
尚、ロブ・ゾンビは70年代は最高だ!と語っていて、マーダー・ライド・ショーの映画内でも70年代を表現することにこだわっています。
CGを使わずに、墓の十字架や地下道の死体もセットを使っています。
泥、斧、火も本物で、危険な撮影だったようです。
過去映画からのオマージュを考察・解説
ベースとなっているのは、悪魔のいけにえ(1974年)と悪魔のいけにえ2(1986年)。
ファイアフライ家はレザーフェイス一ファミリーを思わせます。
ベイビーがヒッチハイカーになっていたり、チョップトップを演じていたビル・モーズリイがオーティスにキャスティングされていたり。
殺した人の皮を剥いで被るのもお約束です。
その後も、ファイアフライ家の夕食に招かれ、地下道をひたすら逃げる場面などもそのものです。
他にもオマージュがみられます。
土砂振りの雨の中に一家にたどり着くシーン、ベイビーのダンスパフォーマンスは、ロッキー・ホラー・ショー(1975年)。
ベッドに張り付けにされるシーンは、悪魔の沼(1977年)。
まとめ
久しぶりに観ても面白過ぎました!
DVDの特典映像ロブ・ゾンビのコメンタリー、ミュージックシーン・プレビューモードを観たので、計3周しました!
「殺人一家」ファイアフライ家のキャラクター、トリッキーな映像、ロブ・ゾンビのミュージシャンならではの映画音楽の使い方、過去映画からのオマージュに注目です。
早くスリー・フロム・ヘルが観たいです!