新型コロナウイルスの影響で5月公開予定から公開延期されていた、井筒和幸監督の最新作『無頼』が、12月12日(土)にいよいよ公開されます。
昭和のあぶれ者たちを通して描かれる、もう一つの昭和史。
井筒監督8年ぶりの新作で、真骨頂にして集大成との位置づけの作品『無頼』
数々のアウトサイダーたちを描いてきた監督は、この新作で観客にどんなことを訴えかけてくるのか?今回の記事では、映画『無頼』のキャスト、あらすじ、時代背景、みどころなどについて紹介します。
映画『無頼』とは?
「定職をもたずに無法な行いをすること。頼る所がないこと。」
辞書を引くと、無頼の意味はそのように記されている。
今回、映画『無頼』で井筒監督が見つめるのは、昭和に生きた爪はじき者たちの生きざま。
1950年代からバブル崩壊までの昭和を舞台に、令和に生きる私たちに強烈なメッセージを送ります。
時代背景は変わっても必要なのは、生き延びるための選択と実行。そんなシンプルさを感じてください! https://t.co/Ja6UgNjUgu
— 映画『無頼』公式アカウント (@buraimovie2020) December 3, 2020
映画『無頼』予告編
キャスト
映画『無頼』に登場する主なキャストについて、紹介します♪
松本利夫(EXILE)/井藤正治役
主人公のアウトサイダー井藤を演じるのは、EXILEのパフォーマーとして活躍したのち、俳優としても精力的に活動する松本利夫。以前から井筒監督の作品が大好きだったといいます。
1950年代からバブル崩壊までの時代を駆け抜けた、アウトサイダーの人生を勢いと深みを持って演じます。井筒監督曰く、演技もさることながら、昭和を生き抜いた無頼な男にふさわしい顔つきの役者だったとのこと。
柳ゆり菜/井藤の妻、佳奈役
物語の主人公・井藤に出会い共感する部分に惹かれ、極道の妻になる佳奈役を演じるのは、『チア☆ダン ~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~』『純平、考え直せ』などの作品で知られる柳ゆり菜。
井筒組の熱量のあふれる現場で、監督の厳しい中にも深い優しさがあるコトバに出会えて本当に幸せだったという柳。あるアウトサイダーの人生を支える妻役を、現場でのぶつかり合いの中で本気で演じた作品をぜひ見てもらいたいと話します。
井筒監督は、写真を見てヤクザのあねさんとしての色気と風格を持った役者さんと判断してキャスティングしたとのことです。
木下ほうか/中野俊秋役
井藤とつながりを持ちながらも正義を追求しようとする、ヤクザの顧問であり民族派の政治活動家という難役に挑みます。木下さんは、「いろいろな背景を勉強しながら一つの場面に集約するのに苦労した」と話します。
井筒監督のデビュー作『ガキ帝国』で役者を目指すことになったというほどの、監督との深い縁を持つ木下さん。今の時代の人の心にも突き刺さるセリフに注目です!
「今の20~30代の方々が知らない、景気がよかった頃の昭和時代が基盤の作品で、教科書的に時代の流れや流行が描かれているんです。すべてが事実ではありませんが、登場するアウトサイダーたちのような人たちも数多くいたので、色々と昭和を調べてみてほしいですね。
(引用:ドカント.com)
あらすじ
太平洋戦争で敗れた日本。
敗戦後、貧困と無秩序の中に身を置いた日本人は、理想の時代を築くために焼け跡から立ち上がり、高度成長期の下で所得倍増の夢を追い、バブルに始まる虚構の時代を欲望のままに生き、昭和が終わるとともに、その勢いを止め儚く消えて行った。
そんな昭和という時代の片隅に、一人で飢えや汚辱と戦い、誰にも頼ることなく世間の目に抗い続けた無頼の徒がいた。男はやがて、一家を構え、はみ出し者たちを束ねながら、命がけで裏社会を生き抜いていく。
映画『無頼』の時代背景(舞台となる1950年代~バブル崩壊までの昭和)
昭和の日本経済は大きく分けると、1945年から1973年の復興から高度成長の時代、1974年から1990年頃の、安定成長からのバブルの時代、1991年頃からのバブル崩壊後の時代に分かれます。
この時期の働くひとたちの環境は、高度成長期からの、農業や林業、水産業などの第一次産業から、建設業、製造業などの第二次産業、サービス業や情報通信業などの第三次産業へと変化。
多くの働き手は農業や漁行など自営で生活をしていましたが、工業化が進むにつれて高校や大学を卒業し、企業に雇われて正社員として働くようになります。
企業は企業で、男性中心の労働者を「終身雇用」「年功序列」「企業別組合」という日本型雇用慣行で待遇。生活水準は上がり、専業主婦もパートやアルバイトをして家計を支えるようになるなど、一億総中流社会を実現していきました。
1986年から地価や株価が高騰すると、日本の経済は好調になります。バブル景気のはじまりです。企業はうるおい、世の中全体が豊かさに踊り、浮かれた雰囲気を楽しんでいました。
しかし、1991年に株価が上がったことによる政府の総量規制(お金を借りられる額の制限)により企業への不動産投資が滞り、バブルは崩壊します。
バブルが崩壊すると、一転して、グローバル経済の波にもまれ、企業は生き残るためにリストラで人員削減を行い、労働者の環境も激変します。
そして、令和の今まで「失われた30年」という時代が続いているのです。
映画『無頼』の注目ポイント
映画『無頼』の注目ポイントを、独自の視点で紹介します。
昭和に流行っていたものは、何が出てくるのか? 予告編には、映画『ダイハード』について話している場面も。
映画『無頼』は、1950年代からバブル崩壊までの40年間の昭和の時代を描いています。
物語の中に出てくる、その時代ごとに注目された出来事は、どんなものが出てくるのでしょうか?要注目です。私は、音楽、ファッション、映画、スポーツ、食べ物、社会を揺るがした事件等で何が出てくるのか、注目しています。
予告編では、レンタルビデオでブルースウィリス主演の1989年の映画『ダイハード』について、話しているシーンが出てきます。「このダイハードっての来月劇場で公開されるんだぞ!」
今のコロナ禍にも通じる事件も!
劇中では、70年代のオイルショックによるトイレットペーパーの買い占め事件のエピソードも出てきます。オイルショックで、あるスーパーでトイレットペーパーの大安売りをしたところ、紙がなくなるといううわさが広まって、買い占め騒動が起こったというものです。
このコロナ禍でつい最近も起こった、マスクの品不足や日用品の買い占めという騒動が、今の時代と共通しています。国民が噂によって踊らされるのは、時代が変わっても変わらないものなのでしょうか。
映画『アイリッシュマン』を彷彿とさせる?
井筒監督のyoutubeチャンネルの映画『無頼』座談会では、映画評論家の森直人氏が、マーチンスコセッシ監督の2019年公開の映画『アイリッシュマン』を彷彿とさせるガチ感があるとコメントしています。
森氏は続けます。アイリッシュマンが、50年から80年までのアメリカの裏面史(世間に知られていない裏側の歴史)なのに対して、映画『無頼』は日本の50年代から90年代の昭和の裏面史を描いている。「同じような裏面史を日本の監督とアメリカの監督が、偶然にも同時期に制作していたということに震える」とも話していました。
そのコメントを聞いて、私なりに感じたこと。
映画『アイリッシュマン』では、裏社会の男達の友情と裏切りが全体的にシリアスに描かれていますが、映画『無頼』の裏社会の男達は、シリアスながらもユーモラスに描かれているように見えます。
『アイリッシュマン』の主人公フランクは、年老いてからの回想で物語を展開していますが、『無頼』の松本利夫演じる組長の井藤は、昭和の終わりを生きて迎えるのでしょうか?それとも、また別の形で終えていくのでしょうか?気になる所です。
映画『アイリッシュマン』予告編
井筒監督コメント
井筒監督のコメントです。
無頼は昭和を生きた彼らを見て、自分は何のために生きてきたのか、この生き方は自分らしいのか、反面教師として、生き抜くヒントはもらえるかと思います。
引用元:CREATORS STATION
まとめ
公開前の映画『無頼』について紹介しました。
総勢400数人にも及ぶキャストたちが織り成す昭和の一代記。
紹介したキャスト以外にも、ラサール石井、小木茂光、升隆、元ブランキージェットシティで日本を代表するドラマー中村達也や伝説的フォークシンガー三上寛など個性的なメンバーも登場します。
この映画を観たあと、時代の裏側を生きたアウトローたちの熱い生きざまから、私たちは何を感じ取っているのでしょうか?
公開が待ち遠しいです!