助演女優賞
オリヴィア・コールマン『ファーザー』 ユン・ヨジョン『ミナリ』 マリア・バカローヴァ『続・ボラット 栄光ナル国家だったカザフスタンのためのアメリカ貢ぎ物計画』(Amazonプライムビデオ) グレン・クローズ『ヒルビリー・エレジー 郷愁の哀歌』(NETFLIX) アマンダ・サイフリッド『Mank/マンク』(NETFLIX)
助演女優賞では、順当に『ミナリ』、『Mank/マンク』などの最多ノミネート勢から順当に選出。
特筆すべき作品は、『続・ボラット 栄光ナル国家だったカザフスタンのためのアメリカ貢ぎ物計画』。
ジャンルで言えば、ただのお馬鹿映画なのですが…
風刺を巧みに取り入れており、COVID-19、いわゆる新型コロナウィルスをストーリーに組み込んでおり、コメディながらも評価は高い作品です。
助演女優賞のラインナップは、中々にして面白い作品からノミネートを果たしているのも特徴の一つです。
詳しくは下記にて解説!
配信は3作品!
助演女優賞では、3作品の配信作品がノミネート。
Amazonプライムビデオでは、『続・ボラット 栄光ナル国家だったカザフスタンのためのアメリカ貢ぎ物計画』がオリジナル作品として配信されています。
その他、『ヒルビリー・エレジー 郷愁の哀歌』は、NETFLIXで配信中。
この2作品は特筆すべき点が多数あるので、下記にて詳しく解説していますので、ご覧ください。
『続・ボラット 栄光ナル国家だったカザフスタンのためのアメリカ貢ぎ物計画』(Amazonプライムビデオ)
イギリス人で破天荒キャラを演じることで世界的に知られるコメディ俳優、サシャ・バロン・コーエンが主演するおバカ映画『続・ボラット 栄光ナル国家だったカザフスタンのためのアメリカ貢ぎ物計画』。
日本では、2007年に公開している『ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習』という作品の続編となる。
サシャ・バロン・コーエン扮する主人公ボラットは、2007年の前作の影響でカザフスタンでは嫌われ者に。
その結果、投獄の刑に処されていた。
すると、大臣からお呼びがかかり、アメリカの外交にカザフスタンが含まれていないことに意を唱え、ボラットに、アメリカ大統領に貢物をしろとの名を下すという流れ。
ボラットは前作でトランプ大統領が持つビルの前でトイレをしたことで、嫌われていると言い、副大統領に貢物をすることに。
という本来の設定から、大きく逸脱し、とんでもない状況に発展していく、はちゃめちゃなおバカ作品。
よりリアルに見せるため、本作はフェイク・ドキュメンタリー、いわゆるモキュメンタリーとなっているのが特徴。
各国で賛否両論を巻き起こし、問題作として、今回も物議を醸し続ける迷作です。
『ヒルビリー・エレジー 郷愁の哀歌』(NETFLIX)
エイミー・アダムス主演で、ニューヨーク・タイムズのベストセラーとなった回顧録の映画化作品。
しかしこの映画、アカデミー賞にもノミネートを果たしていますが、それと同時に最低映画賞でもあるゴールデンラズベリー賞の助演女優賞にもノミネートを果たしています。
その両部門でノミネートを果たしたグレン・クローズは、これまでの印象をガラリと変わる圧巻の演技を披露。
気難しい頑固な老婆を熱演し、高い評価を獲得。
しかしその反面、わざとらしい頑固ババアにも見えるため、賛否は分かれた印象。
アメリカ社会のリアルを描いた、実話を元にした作品です。
助演男優賞
ダニエル・カルーヤ『ジューダス・アンド・ザ・ブラック・メサイア(原題)』 ラキース・スタンフィールド『ジューダス・アンド・ザ・ブラック・メサイア(原題)』 サシャ・バロン・コーエン『シカゴ7裁判』(NETFLIX) レスリー・オドム・ジュニア『あの夜、マイアミで』(Amazonプライムビデオ) ポール・レイシー『サウンド・オブ・メタル 〜聞こえるということ〜』(Amazonプライムビデオ)
助演男優賞は、『ジューダス・アンド・ザ・ブラック・メサイア(原題)』から2人が選出されているのも大きな特徴です。
ストーリー的には、スパイク・リー監督の『ブラック・クランズマン』の逆パターンともいうべき作品。
白人至上主義の組織に潜入していた『ブラック・クランズマン』に対して、『ジューダス・アンド・ザ・ブラック・メサイア(原題)』では黒人の組織ブラックパンサー党にFBIの捜査員に言われて潜入するというもの。
あbととしてのひびをっりか後悔は2021年2月ということから、日本では今後劇場公開される可能性が大いに高い名作の呼び声高い映画です。
2020年は、黒人差別がこれまで以上に世界的な問題へと発展したこともあり、こういった差別を描いた作品が多く選出されているのも大きな特徴となっています。
3作品が配信へ!
配信は、3作品。
『サウンド・オブ・メタル 〜聞こえるということ〜』は、実際の聴覚障害者が多く出演していますが、このポール・レイシーは、健常者です。
しかし、両親が聴覚障害者で手話に長けている俳優として、見事にろう者を演じていました。
実際に本作だではなく、手話を活かした経験も豊富であり、この『サウンド・オブ・メタル 〜聞こえるということ〜』では磐石であり、高い評価を獲得しています。
助演男優賞で、唯一のNETFLIX作品からノミネートを果たしたサシャ・バロン・コーエンは、自身の主演作でなく、出演作となった『シカゴ7裁判』でのノミネートを果たしています。
そして、特筆すべき1作は、Amazonプライムビデオの『あの夜、マイアミで』。
Amazonが配給権を獲得している注目作品です。
『あの夜、マイアミで』(Amazonプライムビデオ)
女優として、ハリウッドで高い評価を獲得するレジーナ・キングの監督デビュー作となる『あの夜、マイアミで』。
原作は舞台劇で、ある意味でファンタジーとなる風刺を効かせたブラックユーモアが巧みなドラマ映画です。
世界的ボクサーのモハメド・アリ、有名な人権活動家であるマルコムX、殿堂入りを果たす偉大なアメフト選手にして、俳優としても活動していたジム・ブラウン、歌手のサム・クック。
この4人がホテルの一室で繰り広げられる会話劇を中心とした作品。
最初は。モハメド・アリの祝杯のために集まったはずが、次第に会話の内容が迫害を受ける黒人たち同胞のために何ができるのか…
次第にヒートアップしていく様を描き、各方面で高い評価を獲得している作品です。
この作品の成功により、レジーナ・キングは映画監督として今後が楽しみな存在となっています。
監督賞
トマス・ヴィンターベア『Another Round(原題)』(日本公開未定) リー・アイザック・チョン『ミナリ』 クロエ・ジャオ『ノマドランド』 エメラルド・フェンネル『プロミシング・ヤング・ウーマン』 デヴィッド・フィンチャー『Mank/マンク』(NETFLIX)
注目の監督賞では、その殆どは既出の作品。
ですが、1作だけ異質な作品がノミネートを果たしています。
渋さで人気を誇るマッツ・ミケルセンが主演のデンマーク、オランダ、スウェーデンの国際共同制作となるコメディ映画『Another Round(原題)』。
いわゆる呑兵衛映画と言われており、とにかくクレイジーな内容。
人生、ほろ酔いの方が上手くいく、という仮説を実践すべく、仕事中に隠れて飲酒を繰り返すという、とにかく破天荒な仮説を実践した作品。
マッツ・ミケルセンの貴重なコメディは必見です。
日本公開はまだ未定ながらも、マッツ・ミケルセンの人気から、おそらく劇場後悔はされると思われるので、続報をチェック!
配信は1作品
監督賞では、配信作品はデヴィッド・フィンチャー監督の『Mank/マンク』のみ。
『Mank/マンク』は、今回最多となる10部門にノミネートを果たしている作品で、多方面で高い評価を獲得。
モノクロという先入観から、とっつきにくいかもしれませんが、大きな注目を集めているので、ぜひチェックしてみてください!
脚本賞
ウィル・ベルソン&シャカ・キング、ケニー・ルーカス&キース・ルーカス『ジューダス・アンド・ザ・ブラック・メサイア(原題)』 リー・アイザック・チョン『ミナリ』 エメラルド・フェンネル『プロミシング・ヤング・ウーマン』 ダリウス・マーダー&アブラハム・マーダー、デレク・シアンフランス『サウンド・オブ・メタル 〜聞こえるということ〜』(Amazonプライムビデオ) アーロン・ソーキン『シカゴ7裁判』(NETFLIX)
映画作りにおいて、最も重要な段階である脚本作り。
どんなに高い評価を獲得する監督ですら、この脚本がよくなければ駄作となってしまうのです。
ここで特徴となるのは、単純な物語などではなく、ストーリーに一癖も二癖もあるような作品がノミネートを果たしています。
『プロミシング・ヤング・ウーマン』も、見事な展開が妙なる作品で、予告編を見ればその内容が気になって仕方なくなるようなストーリー。
『シカゴ7裁判』も、彼らがなぜこの裁判にかけられているのか…
という最大の謎を巧みにクライマックスに持っていっている、まさに脚本の旨さが現れています。
そして、『サウンド・オブ・メタル 〜聞こえるということ〜』は、見事な展開を魅せます。
難聴になったことでの葛藤が主題となる中、主人公がどのような経緯で本来の自分を取り戻していくのか…
静かな動きで描きながらも心に残るラストシーンは、とても印象的です。
そんな気になる脚本賞も、チェックすべきポイントです!
配信は2作品!
脚本賞での配信は2作品。
Amazonプライムビデオの『サウンド・オブ・メタル 〜聞こえるということ〜』とNETFLIXの『シカゴ7裁判』。
このふたつは、『Mank/マンク』に継ぐ、6部門のノミネートを果たす作品。
その中でも映画の出来として、どちらが評価が高い作品になるのか…
脚本賞は注目となる部門です。
歌曲賞
”FIGHT FOR YOU”『ジューダス・アンド・ザ・ブラック・メサイア(原題)』 "HEAR MY VOICE"『シカゴ7裁判』(NETFLIX) "HUSAVIK"『ユーロビジョン歌合戦 ファイア・サーガ物語』(NETFLIX) "IO SÌ(SEEN)"『これからの人生』(NETFLIX) "SPEAK NOW"『あの夜、マイアミで』(Amazonプライムビデオ)
映画音楽として、最も注目を集める歌曲賞。
これまでの作品で言えば、2017年には『リメンバー・ミー』、2018年は『アリー/スター誕生』、2019年は『ロケットマン』と、音楽映画が主体に選ばれてきました。
しかし今回は、新型コロナウィルスの影響で、劇場公開も少なく、注目の音楽映画は2021年に延期されているなど、よりたジャンルな作品から選出されているのも特徴です。
配信は4作品と最多!
歌曲賞の特徴は、純粋な音楽映画は1作品のみという結果。
それがNETFLIXで配信されている『ユーロビジョン歌合戦 ファイア・サーガ物語』。
レイチェル・マクアダムスとウィル・フェレルが主演するコメディ映画です。
その他『これからの人生』もNETFLIXですが、音楽映画ではなく、家族を定義したイタリア映画。
このラインナップも、2020年度ならではと言えるものなのかもしれません。
『ユーロビジョン歌合戦 ファイア・サーガ物語』(NETFLIX)
ウィル・フェレル主演のコメディ映画ということからも、くだらないコメディ映画という印象は拭えないのですが…
歌曲賞にノミネートした楽曲だけは、とても素晴らしいと言えます。
この映画の題材となるユーロビジョンは、実際にある”ユーロビジョン・ソングコンテスト”を参照したもの。
このコンテストに出場することが夢の少年が、その夢を抱いたまま中年になった男性の物語。
相方のシングリッドをボーカルに、まさかの展開でユーロビジョンに出場することになったバンド”ファイア・サーガ”。
おバカ展開で、非常にアホらしい作品なのですが…
クライマックスで披露される、歌曲賞ノミネートの楽曲は、本当に素晴らしいので、一見…
いや、一聴の価値あり!
『これからの人生』(NETFLIX)
人との出会いから、家族を定義するイタリア映画『これからの人生』。
ソフィア・ローレン主演となる作品で、高い評価を獲得。
歌曲賞にノミネートを果たした楽曲は、物語終盤に差し掛かる場面で登場。
もう1人の主人公、イスラムの少年モモ。
彼が夜、街に出た中でかかる音楽が、歌曲賞にノミネート。
マカロニ・ヒップホップとも言えるダンサブルなナンバーで、楽しそうに踊るモモがとても印象的な場面です。
まとめ
以上、アカデミー賞主要部門にノミネートした作品のなかで、現在視聴可能な配信作品を解説してきました。
個人的に興味深かった作品は、主演女優賞にノミネートしていたヴァネッサ・カーヴィーの『私というパズル』。
あまりにも衝撃的な出産シーンは、女性ならずとも、男性にも是非ともみて欲しい場面でした。
この辛さを乗り越えるためにも、男性はしっかりサポートしてあげたいと、強く感じました。
それ以外では、『サウンド・オブ・メタル 〜聞こえるということ〜』も注目です。
リズ・アーミッドは、この役のために半年に渡ってドラムやアメリカ手話を会得するために猛特訓しており、その努力の結晶は必見!
冒頭のドラムの演奏シーンはまさしく息を呑む展開です。
『シカゴ7裁判』も、アメリカの負の歴史を描いたとても重要な作品なので見逃せないでしょう。
こんなありえない裁判が実際に行われていた事実は、本当に衝撃的でした。
これらの作品がノミネートしている2020年度、第93回アカデミー賞は4月25日(現地時間)に開催予定です。