映画『セブン』は、1996年に日本で公開した、デヴィッド・フィンチャー監督、モーガン・フリーマン、ブラッド・ピット主演のミステリー映画です。
公開から25年以上が経過した現在でも、人の記憶に残る名作に数えられている作品。
そんな本作『セブン』の、タイトルの意味についてご存知でしょうか?
多くの人が知るその理由とは異なる、もうひとつの意味があるのです。
その知られざる <セブン> の意味を考察します。
本記事では、映画『セブン』の内容または結末に関するネタバレが含まれます。
映画『セブン』衝撃のラストは忘れられない!
映画『セブン』は、衝撃のラストがとても印象的で、人々の記憶に鮮烈に残る作品です。
それは、圧倒的なバッドエンド。
もはや世界的なイヤミス作品と言える結末を迎えます。
その内容に関しては、以下の記事からご覧ください。
そんな衝撃とともに、今も名作に数えられるミステリー作品、それが『セブン』です。
このセブンには、この他にもいくつもの名作たる所以が存在します。
クライマックスでは、ミルズの心情を表すサブリミナル効果を用いていたり、日本映画がその技術の発祥とも言える「銀残し」が再考されるきっかけとなっていたり…
映画の描き方にも一石を投じていた作品なのです。
「銀残し」は、この当時ではもはや忘れ去られた古い手法とも言える技術でした。
しかしこの映画『セブン』で使われたやり方でさらなる技術促進がされる様になり、再び広く知れ渡る様になっていったのです。
そんな革命的作品としても名を残すのが、映画『セブン』なのです。
誰もが知る『セブン』の意味
そんな映画『セブン』ですが、ここからは、そのタイトルの意味を考察していきましょう!
映画のタイトルにもなっている、この『セブン』の意味、それは2つの意味があります。
ここでは、その2つの意味について紹介していきます!
7つの大罪
当然ながら、まず最初に思い浮かぶものといえば…
犯人であるジョン・ドウが準えていた”7つの大罪”です。
この7つの大罪になぞって殺人が起きる、要するにその7つの事件を描くものであるから『セブン』と言う意味が込められているのです。
とはいえ、これは内容を知ればまず最初に誰もが思う事だとは思うのですが…
ちなみに、その7つの罪は…
様々な古典作品に登場する、有名な一節です。
7日間を描いた物語
もうひとつ、『セブン』には込められた意味があります。
それは単純に、7日間という時間で物語が描かれていること。
なので、この作品は特徴的に曜日で章立てされています。
ジョン・ドウが旧約聖書で神が天地創造した「七日間」になぞらえて行った犯行、要するに新世界が誕生する7日間。
そんな意味も込められているのかも知れません…
知られざる7の意味
ここからは、みんなが知っている様で実は見落としているかも知れない、『セブン』の3つ目の意味について考察していきましょう!
サマセットの定年までの7日間である
この『セブン』という映画は、当然のことながら前述した様に7日間で物語が幕を閉じます。
月曜日から始まり、日曜日の夜で終わる。
まさしく1週間です。
しかしこの7日間に、特別な意味があるのです。
その意味は、旧約聖書のウンタラカンタラでも、ただの1週間でもありません。
この7日間は、サマセットが定年を迎えるまでを描いた物語であること。
サマセットの視点で、サマセットの心が変わるきっかけを描いた7日間なのです。
詳しくいうのであれば…
サマセットが無関心から関心に変わる、そのきっかけを描いたもの。
それが1番如実に現れた場面は、クライマックスに突入する車中での会話です。
ジョン・ドウがサマセットに罪の無い人たちを殺したと言われ、声を荒げて反論する場面です。
ここでの講釈など、詳しい経緯は本記事にある、上記掲載のもうひとつのネタバレ記事をご覧ください。
そのジョン・ドウの発言。
このセリフには、ある違和感を感じます。
それが何なのか…
その違和感とは、ジョン・ドウのセリフの本質、ジョン・ドウの言葉の裏を考察すると…
なんとジョン・ドウは、サマセットと同じ事を言っていると言うこと。
罪なのは、人々の無関心さである。
サマセットは物語冒頭から、世間の無関心さに嫌気がさして刑事を辞めるのだと公言していました。
その考えを改めたのは、土曜日の最後。
ミルズとサマセットがバーで酒を飲むシーンです。
ミルズがサマセットに向けた言葉。
「無関心な世の中だから、警察を辞めるわけじゃない。警察を辞めるから、そう思いたいんだ」
これは、サマセットが図星を突かれ、その日の晩に動揺を露わにした場面である事が描かれています。
サマセットの最後の言葉
そして、サマセットが変わったことが分かるのがラストシーンの言葉です。
サマセットの言葉で幕が閉じます。
その言葉とは…
ヘミングウェイがいった言葉が引用されます。
「この世は素晴らしい 戦う価値があると」
この言葉、もし冒頭のサマセットが引用するならば…
絶対に否定していることでしょう。
何故ならば、図書館に向かうタクシーの中でのシーンです。
サマセットは、運転手にこの場を離れてくれといいます。
その光景には、外で暴漢に襲われている人がいることが描かれています。
そんな世の中に嫌気がさしているサマセット。
無関心な人々、でも裏を返せばこの場面は、本来ならば、刑事であるサマセットが関心を抱き止めに入らないといけない場面です。
しかしサマセットは、無関心を貫きます。
そう、まさに無関心な世の中、それはサマセット自身も含めた世界であることが描かれているのです。
それを変わるきっかけとなるのが、ミルズとの出会い。
そこから、サマセットとミルズの関係性は完全なる相棒になっており、サマセットはよりミルズを気遣う様になっているのです。
むしろ、ジョン・ドウは変わる前のサマセットと同じ考えで、車中での会話をずっと静観して聞いていたサマセットは、もしかしたら、かつての自分と照らし合わせていたのかも知れません。
そして、ミルズとの出会いによって世界に関心を抱く様になったサマセットは、世界は素晴らしいかどうかはわからないが、戦う価値があるという事だけに賛成したのではないでしょうか?
だって、ミルズみたいな人間がいる世界…
老齢刑事のサマセットが、意気揚々とした若い刑事との出会いによって変わるきっかけになる…
そんな最高のバディ作品。
その様を描く、ウィリアム・サマセットの7日間。
それがこの映画『セブン』の意味には、込められているのではないでしょうか?
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