ハッピーエンドだけが映画じゃありません。「刺激的な作品が観たい」「考えさせられる作品が観たい」そんなときはバッドエンドがおすすめ!今回は後味は悪いけど、でもまた観たくなるような映画を11作品紹介します。
サスペンス系バッドエンド映画
バッドエンド映画といえば刑事モノや探偵モノが定番。知能犯であったり、サイコパスであったり、一般的な倫理観から外れたヒール役が存在感を放ちます。
バッドエンドの金字塔!正解のないラストシーン『セブン』
基本情報
監督:デヴィッド・フィンチャー
キャスト:ブラッド・ピット,モーガン・フリーマン,グウィネス・パルトロー,ケヴィン・スペイシー
公開:1996年
『セブン』は、バッドエンドを頻繁に観ている人なら誰もが思い浮かぶ作品のひとつ。見始めてまず気になるのは、雨とサイレン。大都会の鬱屈した雰囲気を銀残しという手法でダークに描ききっています。はじめのうちは閉鎖的な世界観と二人が追う連続殺人者の猟奇性に眉を潜めつつも、モーガン・フリーマン演じるベテラン刑事とブラッド・ピット演じる血気盛んな若手刑事がぶつかりながら互いの理解を深めていくストーリーにあたたかい結末を期待する人も多いはずです。しかし、そこは鬼才デヴィッド・フィンチャー監督。アンドリュー・ケビン・ウォーカーの脚本を最大限に生かしながら、最後はブラッド・ピットの妻を演じたグウィネス・パルトローを巻き込み、誰もが想像しなかったラストシーンへと向かいます。
ブラッド・ピットの若くみずみずしい演技に注目
セブンは作品としての評価も高く、興行として大成功しただけでなく、公開当時まだ俳優として頭角をあらわして間もないブラッド・ピットをただのイケメンからスターダムへと押し上げた最初の作品でもあります。
ほんの少しの救いを求めた男に突きつけられた結末『冷たい熱帯魚』
基本情報
監督:園子温
キャスト:吹越満,でんでん,黒沢あすか,神楽坂恵
公開:2011年
小さな熱帯魚店を経営する吹越満演じる信行は、死別した前妻の娘美津子・神楽坂恵演じる後妻の妙子と3人暮らし。ある日、娘が万引きをしたとスーパーから電話が入り駆けつけた信行・妙子と通報しようとする店側のあいだに、でんでん演じる村田が割って入ります。村田のおかげで放免となった信行たちでしたが、店を見にこいと車に乗せられます。村田も熱帯魚店を経営しており、信行の店とは比べ物にならないほど大規模な店舗でした。村田はその後も付け入るように信行たち家族に肩入れします。美津子を自分の店で預かり、信行にはビジネスパートナーとして自分を手伝えと持ちかけます。気弱な信行は村田のもとを訪れる客に対して口裏合わせをさせられ、やがて村田が殺した他のビジネスパートナーの遺体の遺棄の手伝いをさせられます。
誰もが落ちる可能性のある闇
『冷たい熱帯魚』は1993年に発生した埼玉愛犬家連続殺人事件をモチーフに、善良な人間が自分の想像を絶する出来事の連続に翻弄されいとも簡単に闇に落ちていく様子を描いています。村田に加担し、その過程で犯罪に手を染めていることを自覚しつつも最後の最後、救いを求めた信行に用意された結末に何とも言えない気持ちになります。
二度見せずにはいられない意味深なラストシーン『シャッター アイランド』
基本情報
監督:マーティン・スコセッシ
キャスト:レオナルド・ディカプリオ,マーク・ラファロ
公開:2010年
連邦保安官のテディ(レオナルド・ディカプリオ)とチャック(マーク・ラファロ)が、ボストン沖合の孤島=シャターアイランドにある精神病院に向かうところから物語は始まります。ふたりの目的は、精神異常犯罪者が強制収容されている病院から脱走したレイチェルという女性の足取りを掴むこと。しかし捜査を進めるうち、病院が収容者にマインドコントロールを施しているのではないかと疑いはじめるテディ。偏頭痛や悪夢に悩まされながらも島の灯台で何らかの人体実験がおこなわれていることをつきとめるチャック。しかし灯台までの道中でバディのチャックと仲違い。ひとり灯台を目指すテディでしたが、そこに病院から失踪したはずのレイチェルが現れシャッターアイランドの全容を語って聞かせます。
バッドエンドに免疫がない人におすすめ!入門編のような映画
展開自体ににスピード感があり、作中テディが見る幻覚や過去の出来事がフラッシュバックするため最初のうちは戸惑いがあるかもしれませんが、物語自体は実に単純。大まかな流れさえ掴んでおけばラストシーンでわかりやすく解決されるため、バッドエンドに馴染みがない人も映画自体に馴染みがない人も十分に楽しめる映画です。そして『シャッター アイランド』の魅力は何といってもラストシーンでのテディのセリフ。さほど後味の悪さを感じることはできませんが、二度見もバッドエンド の醍醐味。最後の最後でなぜそんなことを言ったのか、観るほどに面白さを発見できる名作です。
日常に潜む闇をあぶり出すジェイク・ギレンホールの怪演『ナイトクローラー』
基本情報
監督:ダン・ギルロイ
キャスト:ジェイク・ギレンホール,レネ・ルッソ,リズ・アーメッド
公開:2014年
窃盗した工場のフェンスやマンホールを売って日銭を稼ぐルー(ジェイク・ギレンホール)はある日、遭遇した自動車事故の現場で報道パパラッチ(ナイトクローラー)の存在を知ります。ビデオカメラと警察無線受信機を手に入れ、見よう見まねで撮影した強盗現場の被害者の映像がテレビ局に買い取られ手応えを得たルーは、より高く売れる映像のため不法侵入や遺体を動かすなどの違法行為に手を染めながら闇の世界でのし上っていきます。助手を雇い、高性能の機材と車を手に入れ、ついには同業者のライバルを間接的に殺害し、その映像を売り物にします。
ストーリーでも映像の凄惨さでもなく日常にある闇を突きつける
今作でゴールデングローブ賞・主演男優賞にノミネートされたジェイク・ギレンホールは役作りのために9kgのダイエットに成功。また作品のプロデュースにも参加するなど企画段階から作品づくりに深く関わっています。その甲斐あって、作品はとにかく薄気味悪い。逆上するでもなく、興奮するでもなく、じわりじわり他人を踏み潰していくような狂気が観る者の背筋を凍らせます。
ホラー系バッドエンド映画
ホラー映画もバッドエンド のセオリーにならったものがたくさんあります。邦画のホラー映画は犠牲を出しつつも完全なバッドエンドというのはあまり見かけませんが、洋画のクリーチャーや神や悪魔が出てくるような映画では、たとえ主人公であっても最後は命を落とすことが多々あります。
古き良き胸クソ映画!バッドエンドの代表格『ミスト』
基本情報
監督:フランク・ダラボン
キャスト:トーマス・ジェーン,マーシャ・ゲイ・ハーデン,ローリー・ホールデン
公開:2008年
都市郊外で暮らす画家のデヴィッドは自宅の修理の材料を買うため、息子のビリーと隣人のノートンを伴って近くのスーパーマーケットに車を走らせます。買い物をしていると突然スーパーの外をサイレンを鳴らしたパトカーと消防車が通過し、鼻血を出した男性が「霧のなかに何かいる!ドアを閉めろ」と店内に駆け込んできます。直後、スーパーは濃い霧に覆われ地震が発生。揺れはすぐに止みますが人々は混乱、パニックに陥ります。不安からか発熱した息子ビリーのためデヴィッドが店内の倉庫で毛布を探していると、ショートした発電機から煙が出ているのを発見。発電機のショートの原因を探るため店員のノームとともに倉庫内を探索していると、倉庫のシャッターの隙間から外から巨大なタコの触手のようなものが現れノームの足をからめ取ります。
製作陣のネームバリューまでも霧につつまれる
『ミスト』は、原作スティーヴン・キング、脚本・監督『ショーシャンクの空に』『グリーンマイル』を手がけたフランク・ダラボンという間違いない製作陣。しかし、途中まではよくある自然災害によるパニック映画のように進むのですが、触手が出てくるあたりから様子が一変。巨大なカマキリやクモに次々と人が殺されていきます。原作小説とは多少ラストが違うのですが、クリーチャーが多数出てきてしまう時点で「?」と思う人も多いはず。ラストシーンまで霧のように見通すことができない作品です。
あるとあらゆるクリーチャー!最後に登場するレジェンドの意味は?『キャビン』
基本情報
監督:ドリュー・ゴダード
キャスト:クリステン・コノリー,クリス・ヘムズワース,アンナ・ハッチソン,フラン・クランツ,ジェ
シー・ウィリアムズ
公開:2012年
湖畔の山小屋で週末を楽しむ5人の大学生を、隠しカメラで監視する謎の組織。夜、突如現れたゾンビによってひとり、またひとりと殺されていきます。キャンピングカーで逃げる大学生たちでしたが、謎の組織が遠隔でトンネルを封鎖。ゾンビを出現させたのも実は謎の組織の仕業。古き神を鎮めるための生贄として大学生を追い詰めますが、生き残った2人に組織の中核に乗り込まれます。
仲間を殺されながら謎の組織を倒したのに最後は世界崩壊でバッドエンド
冒頭から5人の大学生を監視していることをバラしながら物語が展開。それだけに内容もわかりやすく、ホラーやゾンビ映画が初めての人にも安心して楽しめる映画です。ただ後半はパニック映画さながらの大混乱。ゾンビ以外にも半魚人やドラゴン亡霊など、ありとあらゆるクリーチャーの襲撃からいかに逃れるかがテーマに。そして極め付けは謎の組織の親玉としてラストシーンにシガニー・ウィーバーが登場。エイリアンを退け続けた彼女が手負いの大学生に苦戦し最後はゾンビもろとも奈落の底へ。生き残った2人の大学生も結局は生贄が足りなかったことで復活した巨神によって組織の施設と一緒に潰されます。
ホラー系バッドエンド映画のセオリーを詰め込んだ 『ディセント』
基本情報
監督:ニール・マーシャル
キャスト:シャウナ・マクドナルド,ナタリー・メンドーサ,アレックス・リード,サスキア・マルダー,マイアンナ・バリング,ノラ=ジェーン・ヌーン,オリヴァー・ミルバーン,モリー・ケイル
公開:2005年
1年前、事故で夫と娘を亡くしたサラ(シャウナ・マクドナルド)を励まそうと友人のジュノ(ナタリー・メンドーサ)が冒険旅行を計画します。参加者はジュノの友人ベス、レベッカ、レベッカの妹サム、そしてジュノの友人で冒険マニアのホリーの6人。ジュノが計画したボアム洞窟の探検に向かいますが探索中に崩落が発生。出口が塞がれ洞窟から出られなくなってしまいます。別の出口を探すホリーが穴に落ち足を骨折。手当ての最中に人影を見たサラは危険を主張しますが、ジュノに幻覚だと一蹴されてしまいます。直後人型の食人鬼に襲撃され散り散りに。ジュノと一緒だったホリーが食人鬼に喉を噛み切られ絶命。ジュノに駆け寄ろうとしたベスも、食人鬼が迫っていると勘違いされたジュノにピッケルを突き立てられてしまいます。錯乱状態に陥りその場から逃走。一方、ひとりで食人鬼の襲撃から逃れたサラは、絶命しかかっているベスを発見。ベスは地震が助からないことを悟り、ジュノにやられたこと、そしてサラの夫とジュノが不倫関係だったことを告げ、自ら望んでサラの手で留めを刺されます。その頃レベッカとサムに合流していたジュノは別の食人鬼の集団に襲われ二人を殺されながらひとりで逃走。サラとの合流を果たしますが、サラは食人鬼に囲まれたジュノを見捨てその場から去るのでした。命からがら洞窟を脱出したサラは停まっていた車を運転して逃げますが、助手席には血塗れのジュノが・・・。気がつくとサラはまだ洞窟の中にいるのでした。バースデーケーキを持った娘の幻覚を見るサラ。そのまわりを食人鬼が取り囲み物語は幕を下ろします。
高い完成度を誇りながら続編『ディセント2』は大コケ。ある意味本当のバッドエンド!
『ディセント』は暗闇やクリーチャーなどパニックホラーに欠かせない要素を盛り込みつつ、登場人物の心理を巧みに描写した傑作です。さらに『探検巧者のはずのホリーが序盤で重荷になる』『ジュノが最初から最後まで軽率すぎる』など視点を変えると笑うしかないようなストーリー展開もリピーターが多い理由のひとつ。一見、完璧な作品ですが続編『ディセント2』(2009年公開)は大コケ。ラストで食人鬼に取り囲まれどう考えても助かる見込みがなかったはずのサラが洞窟から脱出し、残りの5人を救出に向かうという設定で物語が展開しますが、一緒に洞窟に向かった保安官らがまったく頼りになりません。観ても損ということはありませんが、ホラー映画の続編に免疫がある人は観なくてもいいかもしれません。
ヒューマン系バッドエンド映画
観ていていちばんツラいのが、ヒューマンドラマ系のバッドエンド。犯罪者やクリーチャーに殺されるのなら諦めもつきますが、健気な主人公が、現実の世界のどこにでもいるその他大勢に虐げられていく様子は胸が張り裂けそうになります。もし「最近いいことないな」と思ったらヒューマン系のバッドエンド 作品を観るといいと思います。自分の過ちがきっと見えてくると思いますよ。
ひとすじの光も差し込まない完全な闇『ダンサー・イン・ザ・ダーク』
基本情報
監督:ラース・フォン・トリアー
キャスト:ビョーク,デヴィッド・モース,ピーター・ストーメア,カトリーヌ・ドヌーヴ
公開:2000年
いくらバッドエンド映画でも、スタートはゆるやかなストーリーが展開されるのが普通。しかし『ダンサー・イン・ザ・ダーク』は物語の最初から暗く、重く、救いのない作品です。唯一明るいネタがあるとしたら主演のセルマを演じるビョークの愛くるしく前向きな姿。でもラストシーンを観終わった後は、きっとそれすらも胸を掻きむしるほどつらく悲しい映画です。主人公のセルマは先天的に弱視で、かつ近い将来説明する疾患を抱えています。またそれは息子のジーンにも遺伝しており、セルマは息子の手術費用を捻出するためふたりで故郷のチェコからアメリカに移住。昼は工場、夜は内職と日夜身を粉にして働いています。身寄りのない母子の住まいは隣人ビル夫妻の敷地内のトレーラーハウス。セルマが「チェコにいる父への送金」と嘘をついているため、息子は母が必死になって働く真意を知りません。しかし、それでも数少ない友人に見守られ、またミュージカル女優になるというセルマ自身の夢が彼女を支えていました。しかし徐々に光を失っていく彼女の目が、決して多くを望んでいるわけではない未来さえ闇で覆い尽くします。ついにほとんど目が見えなくなったセルマは、必死で稽古してきた役を降ろされ、昼間の仕事にも支障をきたすようになります。また彼女が息子ジーンのために貯めていたお金も、トレーラーハウスの主人ビルに見つかり、奪われます。
最期まで明るく前向きなセルマが余計に哀しい
『ダンサー・イン・ザ・ダーク』がほかのバッドエンドの映画と一線を画すところは、衝撃的な結末がエンターテイメントのスイッチとして扱われていない点にあります。はじめからほとんど何も持たないセルマがすべてを奪われていきながらも、明るく振る舞いつづける姿に胸を締め付けられる作品です。
居場所を奪われ続けるマイノリティたちの末路『チョコレートドーナツ』
基本情報
監督:トラヴィス・ファイン
キャスト:アラン・カミング,ギャレット・ディラハント,アイザック・レイヴァ
公開:2012年
舞台は1979年のカリフォルニア。ゲイバーで働くルディは、アパートの隣に住んでいたダウン症の少年マルコが、危険薬物の所持で逮捕された母親のせいで施設に隔離されたことを気に病んでいました。ルディのパートナーで検事でもあるポールは、ルディのため自分たちが同性愛の恋人同士であることを伏せ、母親が入所中の養育権を勝ち取ります。しかしゲイのルディとポール、そしてチョコレートドーナツが大好きな少年マルコのささやかながらも幸せな生活は、長くは続きませんでした。同性愛者であることが上司にバレたポールは職を失い、さらにゲイの家庭は生育によくないと判断されマルコが家庭局に保護されてしまいます。マルコとの生活を取り戻すためルディとポールは裁判を起こしますが、世間の風当たりは冷たく、ふたりの同性愛ばかりが偏見にさらされていきます。
アラン・カミングの擦り切れるような演技に引き込まれていく
ルディを演じるアラン・カミングはバイセクシャルであり、2007年にグラフィック・アーティストの男性と結婚しています。またマルコ演じるアイザック・レイヴァも『チョコレート ドーナツ』公開時、現実の世界でもダウン症を患っていることが話題となりました。そんなふたりのリアリティあふれる演技がこの作品の大きな魅力であることは言うまでもありません。そして脚本自体も実在の同性愛者の男性から着想を得ており、当時のアメリカ社会でゲイが養子を取った際に直面する問題を調査して書き上げられています。それだけに見た目・思想・生き方の違う人間同士が共に生きることの難しさと、社会の裏で葬られている人生があることを思い知らされる映画です。
生きる意味・死ぬ権利について考えさせられる『ミリオン・ダラー・ベイビー』
基本情報
監督:クリント・イーストウッド
キャスト:クリント・イーストウッド,ヒラリー・スワンク,モーガン・フリーマン
公開:2004年
ある日トレーナー・フランキー(クリント・イーストウッド)が経営するボクシングジムにマギー(ヒラリー・スワンク)という女性がやってきます。「専属トレーナーになってほしい」というマギーに、フランキーは女性を育てる気はないと断ります。諦めきれないマギーはウェイトレスをしながら貯めた貯金を切り崩し、半年分の月謝を捻出しフランキーのジムに通いはじめます。客を断りきれないフランキーでしたが、マギーに対しては懐疑的で長年の友人で住み込みの清掃係スクラップ(モーガン・フリーマン)に「構うな」と指示。しかし遅くまで熱心に練習するマギーを見兼ねたスクラップは、サンドバック・スピードバッグの叩き方を教えます。やがて熱意に負けたフランキーは「俺とやるつもりなら、文句を言うな」とマギーのコーチを引き受けます。往年の名トレーナーフランキーの指導のもと、連勝を重ねたマギーのもとに大金が転がり込みます。豊かになったマギーは生活保護を受けている母親のために家を買いましたが、当の母親は感謝するどころか鼻に傷の残るマギーを見て「笑い者だ」と冷遇されてしまいます。
アカデミー賞主要四部門を受賞したクリント・イーストウッドの集大成ともいえる映画
フランキーにはひとり娘がいますが、音信不通。宛先不明で戻ってくる手紙を毎週書くこととミサに通うことが日課です。一方でマギーは31歳。女性としてボクサーを目指すには遅く、生活保護を受ける母と警察に厄介になっている兄弟がいます。身寄りのないふたりはやがて親子のようにタッグを組み、ボクシングにささやかな希望を見出しますが、WBAのタイトルマッチで最大の悲劇がふたりを襲います。しかし『ミリオンダラー・ベイビー』の物語は、むしろここから幕を開けます。すべてを失ったマギーと、そんなマギーのために尊厳を探しはじめるフランキーが最後に出した答え。観るたびに死生観を揺さぶられる映画です。
家族を殺された少女と街の掃除人の淡くヒリつくようなラブストーリー『レオン』
基本情報
監督:リュック・ベッソン
キャスト:ジャン・レノ,ナタリー・ポートマン,ゲイリー・オールドマン
公開:1994年
家族を惨殺された12歳の少女マチルダ (ナタリー・ポートマン)は、アパートの隣人で殺し屋のレオン(ジャン・レノ)に復讐を依頼します。マチルダのことを案じてなかなか首を縦に振らないレオンでしたが、マチルダの強硬手段により渋々承諾。ふたりは暮らしはじめます。レオンはマチルダに銃の使い方を教え、マチルダは移民で英語を書けないレオンのために文字を教えます。ある日、家族を殺したギャングが麻薬取締官であることを突き止めたマチルダ はタクシーで尾行。単身敵の拠点の乗り込みます。
孤独を埋め合うふたりのハッピーエンドを誰もが願った名作中の名作
2000人以上の候補者からオーディションで選ばれたナタリー・ポートマンは、当時12歳。デビュー作とは思えない堂々とした演技で一気にスターダムへと駆け上がりました。キュートなルックスに似合わず成熟したレディのマチルダ と、あっという間に敵を倒す腕を持ちながら真面目で純朴な殺し屋レオン。何回観てもふたりの明るい未来を願わずにはいられない名作です。
映画を娯楽から教訓へと昇華させるバッドエンド
わざわざ気が滅入るようなバッドエンドを無理強いすることはできません。誰だってハッピーな作品の方が受け入れやすいし、楽しめるとも思います。しかし、現実の世界において、人生は決して平坦ではありません。その伝え方のひとつの方法がバッドエンドなのです。機会があれば、ご紹介した作品を参考にひとつ観てみてください。「引きずっていた過去の荷が軽くなった」「これからの人生に役立つかもしれない」そんな人生に役立つエッセンスを見つけ出すことができるかもしれませんよ。