司馬遼太郎による長編小説『燃えよ剣』。
新選組副長・土方歳三を主人公にしたこの小説、タイトルも聞いたことがないという方はいないのではないでしょうか。激動と混乱の幕末を背景に、「武士の理想」を貫いた男、土方歳三。この不朽の名著を原作にした映画が、2020年5月22日に公開されます。
本記事では、映画『燃えよ剣』のあらすじを知らない方のために原作からネタバレ、さらに話題を集めているキャスティングについても触れていきます。映画化は実に54年ぶりである『燃えよ剣』。「もしつまらなかったら許さん……!」という原作ファンの咆吼がすでに聞こえてきているのです……!
映画『燃えよ剣』の予告は胸熱!「時代を追うな。夢を追え。」
もともと平民の薬売りであった土方歳三と、百姓の出身の近藤勇。二人が多摩で武士を志してから、新選組の結成、そして箱館戦争での土方の死。この、多くの作品で「新選組」の顛末として語られている史実に加えて、司馬遼太郎による原作の脚色も再現している映画『燃えよ剣』。
「歴史小説に脚色」とだけ聞くとご法度な感じがしますが、司馬遼太郎の生み出したオリジナルキャラクターの人気は高く、特に土方の恋人である「お雪」は物語のキーマンでもあります。
今作のキャストは、監督がこだわり抜いて選出したと言われているいわば「時代劇選抜メンバー」。
しかし、そのキャスティングは、『燃えよ剣』原作ファンを中心に賛否両論を巻き起こしているのです!
映画『燃えよ剣』のキャストについてみんなの反応!
まず、燃えよ剣における “土方歳三像”とはどんなものでしょうか。
長い鎖国の末に、開国か倒幕かの二択を迫られた状況下で「武士とはこういうものだ」という理想を頑なに最後まで貫き通した主人公・土方。一方で「鬼の副長」と恐れられ、厳しい戒律のもとに旧知の仲間さえ処刑した男です。
心の中が見えない……!繊細かつ、難解!一流の役者さんを起用しないと、ただのサイコパスになってしまうのが土方歳三役なのです!
今作『燃えよ剣』で主演に抜擢されたのは、V6の岡田准一。さらに沖田総司役には、Hey! Say! JUMPの山田涼介。そう、ジャニーズです。
昨日は燃えよ剣の配役見てキレかけた…
名作が駄作になる…
いっそ伊藤が土方の方がマシだわ…
ジャニタレ使いたいなら風間くらい連れて来いや
あの2人じゃ役不足やろが
監督の目腐っとんのか— うりゅ (@uryu) February 12, 2019
あらゆる映画・ドラマに出演しているジャニーズ所属の俳優たち。今回も公開前から酷評されてしまっていますね……。そもそも、「司馬遼太郎ファン」と「ジャニーズファン」って相容れない感じがします。
そうですね。「剣さばき!シャキーン!シャキーン!」かっこいい〜!だけでは、絶対に成立しないであろう『燃えよ剣』の実写映画化。これまでの実写化でも内田良平、役所広司など、劇団からの長い下積みがある実力派俳優が土方歳三を演じていました。
一般的な「ジャニーズ=アイドル」という認識から、「大丈夫なのかよ……」という声が上がるのも自然かもしれません……。
岡田准一といえば、アカデミー賞優秀男優賞を三度受賞、さらに映画『永遠のゼロ』では最優秀主演男優賞も受賞しています。受賞歴だけでなく、2000年代の脇役でのドラマ出演の頃から演技力には定評がありました。筆者個人的にも、岡田准一は演技が上手だと思うのですが、どうでしょう?
岡田准一と並んで今作のキャスティングで叩かれがちなのが、Hey! Say! JUMPの山田涼介。最初こそ「アイドル人気でキャスティングされた」とバッシングされることが多かった彼ですが、近年は映画『暗殺教室』『グラスホッパー』などで新人賞を受賞しています。演技をブラッシュアップしている印象があり、確かに片手間という感じはしません。
筆者思うのが、少し前までジャニーズを起用した映画・ドラマの主題歌には必ずジャニーズの曲が使われていましたよね。それがストーリーにミスマッチなことも多々あって、悪評につながりやすかったというのも、ひとつあると思うのです。専業の俳優以上の演技を見せるジャニーズ俳優がいたとしても、主演に主題歌も……となると “侵食されている”感じがしても仕方ないかもしれません。
「ジャニーズなら観ない!」という声も少なくありませんし、確かに食わず嫌いの傾向も否めないのでは……?
映画『燃えよ剣』の登場人物とキャストを紹介!
続いて、映画『燃えよ剣』の主要キャストをまとめて紹介していきましょう。
1966年以来、54年ぶりの映画化とあってなかなか豪華なキャストを迎えています!
土方歳三(岡田准一)
多摩郡の薬屋の息子、ならず者と呼ばれていた土方歳三。
しかし剣術に優れ、新選組の結成後は組織づくりの才能も開花させました。厳格な戒律で、隊士たちから鬼の副長と恐れられ……というのは有名な話ですね。
演じるのは岡田淳一。映画『関ヶ原』や、大河ドラマ『軍師官兵衛』など、時代劇の経験が豊富な彼。今作では、剣技の構築に携わり、他の俳優陣への剣の指導も行っていたのだそう!
近藤勇(鈴木亮平)
新選組局長・近藤勇を演じるのは鈴木亮平。土方の多摩時代からの盟友でもあります。
鈴木亮介、大河ドラマ『西郷どん』での西郷役が記憶に新しいですよね。大河では倒幕側を演じましたが、今作では江戸幕府側。真逆のポジションの史人の役、ちょっと面白いです!
沖田総司(山田涼介)
新撰組の一番隊隊長の沖田総士を演じるのは、山田涼介。沖田総司は若き天才剣士で薄命な上に、さらに美男子というキャラ付けからかなり人気が高いですよね。ちなみに原作『燃えよ剣』では、可愛い弟キャラとして描かれている沖田総司。
剣術の天才である沖田を演じる山田涼介は、なんと初時代劇。彼の殺陣シーンの完成度で、作品の評価が割れそうな予感がします……!
芹沢鴨(伊藤英明)
新選組の初代筆頭局長・芹沢鴨。悪役ですよね。しかし、出てこないと全然面白くない、要の人物。近藤、土方と対立し最終的には新選組を追われる芹沢。
長い間『海猿』のイメージだった伊藤英明ですが、最近サイコな悪役がしっくりマッチしています。監督が彼の芹沢鴨を気に入りすぎて、「映画公開日まで芹沢役を非公開にしたい!」と希望するほどだったそう。どんな芹沢鴨なのか、気になります!
お雪(柴咲コウ)
お雪は、原作小説のオリジナルキャラクター。土方の恋人です。江戸育ちの絵師、京で一人で身を立てています。怪我をした土方を介抱するという運命的な出会いから、幕末の動乱に引き裂かれる二人……。
お雪を演じる柴咲コウ。彼女も『女城主景虎』で大河ドラマの主演を経験しています。画面が華やか、眼福です。
以下ネタバレ注意!映画『燃えよ剣』は原作に忠実な仕上がり!?
さて、主要キャストの紹介を終えたところで、『燃えよ剣』のあらすじをネタバレしていきます!歴史小説が原作であることと、小説のオリジナルキャラクターがキャストに加えられていることから、今作は長編小説『燃えよ剣』のストーリーに沿ったものになると予想されます。
ジャニーズ屈指の演技派俳優たちを起用した、映画『燃えよ剣』。果たして、原作ファンも納得の仕上がりになるのでしょうか?今作は、2020年5月22日から全国で公開です!
黒船来航!舞台は混乱の幕末
舞台は江戸時代末期。浦賀に黒船が来航し、日本に開国を要求した動乱期です。
鎖国中の日本は大きく分けてふたつの派閥に分かれます。衰退していた徳川幕府の力を盛り返し、外国から日本を守る“佐幕派”、幕府を倒し開国、天皇を中心とした新たな政権を作ろうとする“討幕派”。
鎖国を要求されながらも、国内で対立が起きている状態。てんやわんやです。
“鬼の副長” 土方歳三
多摩の薬屋の土方歳三。平民の生まれでありながら「武士になりたい」という想いを持ち、剣術の稽古にも励んでいました。旧知の友である近藤勇たちと京へ向かい、倒幕派を取り締まる新選組を結成します。
土方には組織作りの才能があり、“鬼の副長”と呼ばれ恐れられます。近藤勇をバックアップに徹し、憎まれ役を買って出た土方。土方の統率のおかげで、新選組は大活躍します。
美貌の絵師・お雪との出会いが土方を変える!?
他人に胸の内を見せない“鬼の副長”。土方は京の町で、孤独な絵師・お雪と出会い惹かれあいます。しかし、時代の流れは倒幕へ……。
「武士として生きる」という理想を頑として曲げない土方は、時代の流れに逆らって戦います。
寝返ってお雪と結婚とかしないのです。武士だから。
盟友の死、戦い続ける土方、そして五稜郭へ……。
新撰組が攘夷派を襲撃した「池田屋事件」。佐幕派の象徴と呼ばれるまでにのし上がった新選組は、鳥羽伏見の戦いで破れて、“朝敵”となります。
寄せ集めの武士集団、幕府に切り捨てられたということですね。終われる身となった彼らは、江戸へ逃亡。しかし、局長の近藤勇は斬首され、沖田総司も結核で亡くなります。
世の中風向きは、完全に開国・攘夷。新撰組は崩壊していきます。
映画『燃えよ剣』ラストは“土方の武士としての死”
有名な戊辰戦争。明治新政府軍と旧幕府軍による最後の国内戦争です。
土方率いる旧幕府軍は松前城を落とします。しかし、敵の兵力は強大。無謀な攻勢に、死を覚悟した土方の元、彼を案じたお雪が現れます。(フィクション!)
そして、五稜郭。単身で敵陣に突撃し、一斉に銃弾を浴びる土方。盟友である近藤と沖田は、もうこの世にはいません。土方の回想に現れるのは、死んでいった旧知の友、そしてお雪……。