【護られなかった者たちへ】原作ネタバレ!予想外の結末でまさに「魂が泣く」

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出典:映画【護れなかった者たちへ】公式HP

映画【護られなかった者たちへ】が2021年10月1日(金)に公開されます。
主演で容疑者・利根役は気俳優の佐藤健さん。利根を追う刑事・笘篠は阿部寛さんが演じます。お2人は劇場版【TRICK】以来、11年ぶりの共演となります。

私もTIRCK好きだったー!2人の共演楽しみ!

本記事では、【護られなかった者たちへ】の原作ネタバレ、予想外の結末で「魂が泣く」理由について書いていきます。

映画【護られなかった者たちへ】の概要

原作 中山七里
監督 瀬々敬久
脚本 林民夫・瀬々敬久

原作は、「どんでん返しの帝王」とも呼ばれている、ミステリー作家・中山七里さんの同名小説です。監督は、【糸】や今後公開予定で筆者も注目している、【明日の食卓】のメガホンを取った、瀬々敬久さん。脚本は、【永遠の0】などでアカデミー賞を受賞した林民夫さんと、瀬々敬久さんが手がけました。

キャスト

護られネタバレキャスト

出典:映画【護れなかった者たちへ】公式HP

  • 刑務所を出てきたばかりの「容疑者」・利根泰久:佐藤健
  • 利根を追う刑事・笘篠誠一郎:阿部寛
  • 若葉区保険福祉センターの職員・円山幹子:清原果耶
  • 笘篠と利根を追う刑事・蓮田智彦:林遣都
  • 若葉区保険福祉センターに勤める第1被害者・三雲忠勝:永山瑛太
  • 杜浦市福祉保険事務所元所長で第2被害者・城之内猛:緒形直人
  • 若葉区保険福祉センターの所長・楢崎:岩松了
  • 利根が避難所で出会う・鈴木将:波岡一喜
  • 笘篠の妻・笘篠紀子:奥貫薫
  • 若葉区保険福祉センターの職員・菅野:井之脇海
  • 円山に生活保護受給を依頼する・宮原:宇野祥平
  • 現在の杜浦市福祉保険事務所の職員・支倉:黒田大輔
  • 学習塾の代表・宮園真琴:西田尚美
  • 円山に生活保護受給を依頼する・国枝:千原せいじ
  • 春子:原日出子
  • 笘篠達の上司・東雲:鶴見辰吾
  • 利根の保護観察官・櫛谷貞三:三宅裕司
  • 杜浦市福祉保険事務所にいたが現国会議員・上崎岳大:吉岡秀隆
  • 利根が震災後の被災所で出会う・遠島けい:倍賞美津子
映画【護られなかった者たちへ】キャストと相関図!佐藤健は本当に犯人なのか?
出典:映画【護れなかった者たちへ】公式HP 2021年10月1日(金)に映画【護られなかった者たちへ】が公開されます。 主演で容疑者役は、最近謎解きやイケメン医師役、声優などでも話題になった超人気俳優・佐藤健さん。刑事役は、今までも刑事役や...

【護られなかった者たちへ】の原作ネタバレ!

善人の死 ネタバレ

青葉区福祉保健事務所の課長・三雲忠勝(永山瑛太)は、仕事を終え自宅に帰る途中、意外な人物に声をかけられる。
「三雲さん」
「どうしてこんなところで…」
「待ってたんですよ」

10月15日、仙台市若林区の老朽化した無人アパート「日の出荘」で死体が見つかる。
刑事・笘篠(阿部寛)は、後輩刑事の蓮田(林遣都)と現場にいた。中に入ると異臭が鼻を衝く。遺体は全身にガムテープを巻かれている。「餓死」の症状で死後2日は経過していると鑑識の唐沢は言う。財布があり、被害者は三雲忠勝だと分かる。アパートは鍵もなく誰でも侵入可能だった。
三雲の妻・尚美が来て、遺体を見て泣き崩れる。
三雲は10月1日から行方不明になっていた。三雲について尚美は、「度が過ぎるほどのお人よしで、職場からも自宅でも嫌われているなんて聞いたことがない。結婚して20年、主人はいつも私と子供のことを考えてくれた。」と証言する。
三雲の勤務先である、青葉区福祉保健事務所に向かう笘篠と蓮田。
所長の楢崎(岩松了)は、三雲は誰からも恨まれることなく信頼されていたと言い、殺されたのが信じられない様子だ。職員の円山菅生(清原果耶)(原作では男性)も三雲が殺されるなんて思ってもみなかった。生活保護を支給する部署なので、それで恨まれる可能性もないか笘篠は聞いたが、三雲は課長で受給者と直接接することはないし、自分たちの話も親身になって聞いてくれたと言い、尊敬しているようだ。笘篠は円山から震災により県内の各地の生活困窮者が仙台に流入していて、生活保護を受給できる人が限られていて選別が行われていると聞く。予想以上にその説明は衝撃的だった。

官舎に戻ると蓮田から晩御飯を誘われるがそれを断る笘篠。
蓮田には妻と幼稚園の息子がいて家族団らんを味あわせてくれようとしたのだろうがそれが残酷な親切だった。
笘篠にも以前家族がいた。息子が小さいころは家族に「お前たちは俺が護ってやるからな」とよく言っていた。しかし、震災による津波で妻と息子は行方不明になった。そして仕事にかまけて今も死亡届は出せていない。2人が死んだと認めたくないのだ。護ってやると言いながら何もできなかった自分を思い出したくなかった。

笘篠と蓮田は、怨恨の線が考えられないなら財産目当か?家族の犯行か?などいろいろ模索する。捜査会議の情報では、庁舎の防犯カメラ以外には三雲は映っていない。また現場の足跡も残っていたスリッパの跡くらいで判別はできない。ガムテープもどこにでもあり手がかりにはならなかった。笘篠たちの上司・東雲(鶴見辰吾)の命令で、自宅と職場の出入り業者に当たるも、手がかりはない。
三雲の職場で円山は、「生活保護受給は、職員が9割判断できるが1割は難しいため課長が判断してくれていた。」と話した。そこへ沓沢という60代の男が「責任者を出せ!クソ野郎!」と言いながら怒鳴り込んでくる。生活保護が受けられないことに納得していない。沢見という職員が対応するが、「その元気があるなら働けます。離れた場所にいる弟さんに連絡してみてください。」と明らかに見下した対応だった。沓沢は怒り、飛びかかろうとするが蓮田が止めに入る。円山は「お恥ずかしいものをお見せしました。」と恐縮するが、これは日常茶飯事なのだと笘篠は思った。

利根勝久(佐藤健)は面接に向かう前にコンビニに寄った。
品ぞろえが進化していることに驚き、孤独で怖くなった。塀の中のニュースで知っていたが、消費税が上がっていることも実感する。温めてもらったオムライスを食べ、久しぶりの濃い味付けがとてもおいしく感じた。刑務所は冷めた味の薄い食事しか出なかった。食事で緊張もほぐれ面接に向かう。坂巻鉄工所というのが保護司・櫛谷(三宅裕司)の紹介してくれた就職口だ。櫛谷の紹介ならと受けいれてくれそうだったが、刑務所に入っていた理由を聞かれ人殴ったことと、「役所の対応がずさんだったので…」と伝えると「結果は追って櫛谷さんに連絡すると言われてしまう。」結果、利根は雇ってもらえなかった。
翌朝利根は新聞で、ある男を見つける。写真を見ると憎悪がまた頭をもたげてくる。1人目の三雲は先日餓死したが、この男こそ、その死に方にふさわしいと思う利根。とにかく彼の行動を探る。そのために模範囚として刑期を短縮させたのだ。

人格者の死 ネタバレ

城之内美佐が「まだ主人は見つからないんですか?」と電話口で警察署長をせっつく。
「署員一同で捜査しておりますので今しばらくお待ちください」と返す警察署長。美佐の夫、城之内猛留(緒形直人)が消息を絶ったのは10日前の10月19日だ。城之内は真面目な宮城県議会議員だ。そして失踪から10日後の29日、宮城県の利府町にある森の中で、で遺体で見つかる。五味という男の農機具小屋だ。発見者も五味だった。三雲と同じように全身を縛られて餓死していた。防犯カメラに映っていないこと。足跡がスリッパであることから同一犯だと思われた。
妻の美佐に聞くと、城之内は三雲と同じように、議員として立派に仕事をして、家庭でも行いはよく、恨まれるようなことはない。という証言だった。実際に刑事たちの捜査でも城之内は誰からも恨まれるような情報はない。

笘篠は2人の共通点を調べ、2人が塩釜福祉保険事務所で2年間一緒に働いていたことが分かる。
青葉区福祉保健事務所を訪ねる笘篠と蓮田。
円山が対応してくれた。三雲と城之内の共通点と塩釜福祉保険事務所で何かトラブルがあったかもしれないと話すと、円山は驚いていた。しかし笘篠は「金が絡む以上は、必ず陰は出てきます。それは福祉を掲げていても同じでしょう。違いますか?」と問い詰める。円山はそれを認め、ケースワーカーという業務の話をする。生活保護の不正受給を防ぐため、直接受給者のところに行って相談に乗ったり助言をするのだ。そのせいで恨まれることもあると言う。実際ケースワーカーとしての円山の仕事がどんなものかを見ることにした笘篠と蓮田。
まずは、渡嘉敷秀子という女性の家だ。
建物自体に異臭がある。円山はこれを「貧乏の臭いです。」と言った。生活が苦しくなると洗濯や風呂の回数も減らし食費も削る。そうすると酸っぱい甘い臭いがするのだ。秀子は41歳ながら目は落ち窪んでいて50代に見えた。秋穂という娘がいるが外出している。円山は秀子に話す。
「あなたが市内のスーパーでレジ打ちをしているという通報がありました。」
「あれは臨時の仕事で…」
「スーパーに確認しタイムカードも見ました。3か月も前からフルタイムで勤務していますよね?生活保護の金額を上回っています。その場合打ち切りになることは説明しましたよね?」
円山は詰問しながらも穏やかな口調だ。秀子は娘を塾に通わせるためパートしていた。秀子は娘に勉強させてやりたいという思いから「円山さん見逃してください!」と言うがそれは聞き入れられず、3か月受給は停止されることになった。円山は「私たちは決して渡嘉敷さんに敵対する立場ではありませんあなたたちの生活を支援したく…」と言うと「もう出て行ってください!」と秀子に追い出された。
次は国枝(千原せいじ)という男だ。
反社会勢力の人間で、足を洗ったと言いながら巧妙に不正受給している。自宅に着くとベンツがある。国枝は妻に聞かれると困ると車で話すことに。車について問い詰めると、預かったとかもらったとか言い訳し、ひどい態度だ。打ち切りの書類を渡すが破られる。「こちらから打ち切りできますので。後日通知が来ます。もしご不満でしたら不服手続きをしてください。」と言って車を出る3人。国枝が「待てって言ってんだろ!」と怒鳴っていた。
円山は車に乗った後「三雲課長も城之内議員もこの仕事に関わる以上ご本人たちに覚えがなくとも逆恨みされることはあるんですよ。」と言った。3人は黙りこんだ。

城之内の殺害が報道されたころ、利根は荻浜港の体力仕事の現場にいた。
寮がありワンルームだが利根が住むには十分だった。休工日を利用し、タウンページである男の名前を探すが見つからない。ネットカフェで男の名前を検索する。
〈上崎岳大〉
6時間も調べたがその男の情報は見つからなかった。
利根は刑務所で知り合った、五代という男を思い出す。その男とは不思議とウマが合い、出所してから五代から手紙と名刺が来た。「エンパイアリサーチ」という名前で調査会社と書いてあった。元ヤクザなので怪しいが五代に上崎を探すよう頼んだ。五代は金はいらないと言ってくれた。五代は何かを察知したのか「何をするのもお前の自由だが、下手はうつなよ」と言った。
五代から連絡がありついに上崎が見つかる。
あいつを探し出せば俺の仕事は終わる。利根はそう思った。

貧者の死 ネタバレ

笘篠と蓮田が塩釜福祉保険事務所に向かう途中、円山を見かける。
老婆に話をしているので行ってみると、生活保護を受給するよう説得している。だだ佐々木というその老婆は「他人様のお金をもらうなんて…」と気が引けるようだった。円山は職務に忠実なだけの人間じゃないと感じた笘篠だった。

塩釜福祉保険事務所に到着すると、生活支援班の支倉(黒田大輔)が対応する。
8年前当時、三雲は受付担当、城之内は班長だったことを聞く。その時の却下案件を見せるようお願いするが、支倉はやる気がなく「そんな前の案件現存しているかどうか…」と言う。殺人事件が起きているにも関わらず支倉は「職員は多忙を極めているのでお時間を頂戴したいです」と言った。傲慢な態度だ。さらに捜査関係事項照合書がないと動けないと言う。笘篠たちは怒りながらも署に戻り志書類を用意することにした。
書類を用意し持参するも、支倉に居留守を使われてしまう。
困った笘篠は東雲に相談すると、警察本部長に働きかけてくれた。すると効果てきめん、段ボール箱2個とUSBが塩釜福祉保険事務所から届く。そして現在上崎がフィリピンに旅行中だということも分かる。
調べた中で8年前にトラブルがあった人に事情を聞くと、みんなその時に生活保護を受給させてもらえず、三雲を恨んでいた。しかし誰も犯人ではなさそうだ。そしてUSBを鑑識で解析すると、削除されている案件があることが分かった。それを支倉に問い詰めると、資料は残っていないが、名前は憶えていると言う。その中の遠島けい(倍賞美津子)というお年寄りは、却下通知書を送ってから知人男性が怒鳴り込んできた。三雲と城之内にけがをさせた挙句、建物に火を放ったのだ。その男は「利根」という名前だと支倉は言った。

利根について警察に残っている資料を調べる笘篠。
内容はほぼ支倉の言う通りだった。ただ、津波で本人の供述書が残っておらず、肝心な動機が分からない。そこで仙台地裁に向かい、供述調書を見る。そこには利根の事件時の想いと、最後には福祉保険事務所の職員や近隣住人への謝罪の言葉もあった。だた「遠島けいの生活保護受給の件でむしゃくしゃしていた。」という記述はあるものの、詳しい動機までは記載されていない。笘篠は利根が現在どうしているかを調べる。すると、9月24日に仮出所していた。模範囚で懲役10年のところ8年で出所している。三雲と城之内への「お礼参り」をするために早く出所したのか?保護司の櫛谷に連絡を取ると、彼も利根と連絡が取れないということだった。

家族の死 ネタバレ

20歳の利根は、カネなし、身寄りなし、学歴なし。あるのは前科だけだった。
ある日、利根の前科の原因を作った須藤という男が目の前に現れる。
数か月前、定食屋で須藤と隣になり小さなことで殴り合いの喧嘩になった。利根は逮捕され裁判も受けた。しかし須藤はヤクザの自分が素人の利根に殴られたことで顔をつぶされて組のやつらに示しがつかないと言ってきた。利根が逃げようとすると、もう1人が警棒みたいのものを持って殴りかかってきた。痛めつけられて致命傷をくらいそうになった瞬間「火事だぁ火事だぁ」という叫び声がする。それを聞いた近所の窓が次々と開けられる。
利根は意識がなくなり、目が覚めると見知らぬ部屋に寝かされていた。
「気が付いたかい?」80代くらいの化粧っ気もない、口臭もきつい老婆が言った。その人の名前は遠島けいと言った。カンちゃんという近所の男の子も手伝って自分を運んでくれたらしい。カンちゃんは3軒隣に住んでいるが母親の仕事が遅いからけいがいつも預かっていると言う。カンちゃんは料理もしてくれて3人で一緒にご飯を食べた。そして利根は泊まらせてもらう。お礼について言うとほかの人にいいことをして返してやりなと言うけい。
それから利根はけいの家に頻繁に行く。夕方から3人で食事をし、夜にはカンちゃんを利根が送っていくのが流れとなった。家族のように過ごし、3人の時間は利根にとって居心地がよかった。
ある日カンちゃんの家の玄関に同級生から「ソープランド」などのイタズラ書きがされていた。母親の職業のことでの嫌がらせだ。同級生に反撃し、カンちゃんを助ける利根。
けいは利根とカンちゃんにとって母親のような存在になった。
ある日、利根が勤めていた「トサカ鉄工所」が経営危機になり、神楽というヤクザに買収されてしまう。その結果、鉄工所に残りたければ、利根もヤクザの構成員として名前だけでも登録するよう言われる。そうしなければ、前借り分も十一で返せ、寮からも追い出すと言われ、悩む利根。けいは「ヤクザには絶対なっちゃいけない!」と説得するが、利根は「親でもないくせに他人のことに首突っ込んでくるんじゃねえよ」と言ってしまう。カンちゃんも気まずそうだ。
翌日、出勤すると神楽にどうするか聞かれ、お願いしますと言おうとした瞬間、けいがいきなり入ってきて、「ちょっと待っておくれ。息子をヤクザにするのだけは勘弁してください」と土下座した。利根は鉄工所をやめることになった。寮からも出るので、けいの家に居候することになる。利根はけいに感謝しつつ、職を探しながら、掃除や料理もして過ごした。
そして鉄工所の先輩が新しい職場を紹介してくれる。けいの家から離れた香津町だ。利根は2007年4月に香津町のアパートに引っ越す。仕事のキツさやバス代もあり、けいの家に行く回数がだんだん減っていく。それでも月1では通っていた。そしてカンちゃんの母親が昼間の仕事を始めたため、カンちゃんもけいの家に行くことが減った。
そんな中、「けいさんの家の生ごみが減っている。そして調味料も減っている」とカンちゃんから利根に相談がある。実際行ってみるとカンちゃんの言うとおりで、けいの家が腐臭が漂っているように感じた。けいは強がったが貧困で、ろくな食事もしていないようだ。利根は大量の食材を買い込んだ。帰りにカンちゃんに様子を見ておいてくれるよう頼む。
それからも鉄工所は忙しくなかなかけいの家に行くことができない利根。カンちゃんに様子を聞くと、けいさんの顔が紫になってきて、調味料も激しく減っていると言う。5週間ぶりにけいの家を訪ねると、胸がつぶれそうになるほど、けいはやつれていて顔もぶどう色になっている。我慢できなくなり利根は「生活保護を受けろ」とけいに言う。断るけいに「俺もカンちゃんもあんたに死なれたくないんだよ!本当の母親みたいに思っているから!」と訴え、けいは申請に行くことに。
翌週、利根が訪ねると電気も止められている。部屋の奥で布団にくるまってけいがティッシュを食べていた。利根は差し入れを食べさせ、申請の結果を聞くと、「窓口で断られたんだよ。窓口に来る前に他に行くとこがあるだろうって…」けいはそこからしどろもどろになる。翌日、けいを連れて塩釜福祉保険事務所に行く利根。2時間待たされ、窓口の三雲が「先週申請を却下させてもらったはずですが…」と言う。「電気もガスも止められて限界なんです。申請を通してください」と利根が言うが、利根が家族じゃないと知ると、「付き添いは家族の方だけになりますのでご遠慮ください」と言う。さらに、出稼ぎに行って20年も連絡がない大阪の弟に頼れと言うのだ。「弟とは音信不通で…」とけいがいうと「血を分けた家族なんだから遠島さんさえ本気になれば簡単に連絡がつきますって」と言う三雲。利根は絶句し、憤慨する。とっさに三雲の胸倉をつかんでしまい、他の職員に抑えられ追い出されてしまった。利根はけいに謝り、新しい申請書を見せて、「弟さんが連絡つかないことを話して、もう一度申請しよう」と言った。利根はこれで無理だったら自分がけいを引き取ることも考えた。
しかし、けいはそれから3週間後の2007年12月6日、餓死で亡くなる。
カンちゃんが死亡記事を見つけて教えてくれた。利根は後悔と自責、衝撃で思考が追い付かない中、けいの家に着く。カンちゃんが立ち尽くしている。彼は利根を見つけると胸に飛び込んできて、声を殺して泣いた。
遺体がある塩釜署に2人で向かうと、霊安室に案内される。
けいはまるで枯れ木のようで顔はまるで別人のようだ。唇も黒くなっていた。検視官の話では、水道も止められ、10日ほど飲まず食わずで餓死した。そして胃の中からティッシュが山ほど出てきたらしい。カンちゃんはけいの亡骸によりそって嗚咽を漏らし始めた。生活保護は申請は通したものの、結局は却下された。そのせいで餓死したのだから、福祉保険事務所を罪に問えるのか警官に聞くと、それは無理という答えだった。
利根は、12月8日、塩釜福祉保険事務所に乗り込んだ。
三雲に「けいさんは餓死したんだよ!お前らが殺したんだ!」と怒り叫ぶ。「わたしたちは公正に…」と三雲が言うと利根は三雲を殴っていた。止めに来た城之内も殴り、利根は庁舎から逃げた。まだ気持ちが収まらなかったので、誰もいない夜にゴミ置き場に火を放った。全焼させるつもりはなかった。何も言えず死んでいったけいに代わって、あいつらの胸に傷を刻んでやりたいと思った。

恩讐の果て ネタバレ

笘篠と蓮田は櫛谷の家に来た。
そこで利根が今荻浜港で荷積みの仕事をしていること。五代という男から携帯を貸してもらったこと。そしてその職場を2日前から無断欠勤していると聞いた。利根の毛髪も取った。そして利根の職場に行く。真面目に仕事していたが欠勤してびっくりしていた。
その後五代に会いに行く。五代は利根を救いたいと思っていた。そこで笘篠達に、遠島けいと利根が家族のような関係だったこと。生活保護の申請を3度も阻まれ餓死してしまったことを話す。これで利根が2人に復讐したのだと納得する笘篠達。そして利根が探している上崎がフィリピンに「買春ツアー」で行っているのだと暴露する。そして明日帰国するということも分かった。笘篠は利根に対してある種の共感を覚え始めていた。

利根は職場から前借りをし、無断欠勤している。カプセルホテルに泊まり、あの男に会ったときの行動を思い浮かべる。8年の間にあいつがどう変わろうと見間違えない自信があった。そもそもあいつに会うために模範囚として早く出所したのだ。
利根は街で、激しく抵抗するであろう相手を拘束するためのロープを買う。そして上崎が帰国する前日、朝7時半ごろ空港の下見に行く。しかしインフォメーションセンターの受付女性に「なにかお調べですか?」と声を掛けられ、「すみません。大丈夫です」と言ってその場を立ち去るが、確実に怪しまれ失敗したと思った。
その後、五代から警察が自分のところに来たと電話がある。そして警察に利根の過去のこと、明日、上崎が帰国することもしゃべったと言われる。五代は利根の復讐を止めたかった。しかし利根の決意は変わらないようなので、「悔いのないように頑張るんだな」と五代は伝えた。
利根は警察がたくさんいることを考えた結果、客に紛れてスーツケースを持ち、帽子を深くかぶりサングラスで扮装することにした。

笘篠達は櫛谷の家の近くで人を監禁できるような場所がないか探したが見つからない。そして刑事部長から利根が空港に現れたことを聞く。これで明日、利根が空港に来る確率は上がった。署に戻ると、東雲から上崎が明日の13時14分の便で仙台空港に到着することが分かる。笘篠は2つの事件で利根が犯人だという証拠が見つかっていないことが気になったが、公務執行妨害で逮捕するということになった。

ついに上崎が帰国する当日、朝から警察官200人が空港に派遣され、利根を待ち構える。笘篠は利根が考えた客に扮装するだうと予想を立てていた。
一方、利根は9時ごろ空港に到着。警官の目をかいくぐり、名取市観光プラザでお土産を見ながらロビーを見まもる。そして長椅子に座ると震災パネルの前に設置されたビデオに見入る。津波の状況を見ながら、胸のつぶれるような思いを感じる。自分も刑務所にいなかったら被害者になっていたかもしれない。護られた者たちとそうでなかった者たちとの境界線はどこにあったのだろうかと考えていた。

午前10時を過ぎても利根の目撃情報はない。笘篠は到着ゲートの前に立つと利根が近くにいると感じとる。そして利根も笘篠に気付き、あの男はとびきり危険だと思った。
12時ごろ、観光プラザの長椅子に3時間も座っている不審な人物がいると一報が入る。利根もここにはずっといられないと動き出す。先ほどの危険な刑事の前を通り過ぎる。
笘篠と蓮田は利根を見つけ、声をかける。利根は女装までしていた。抵抗したので公務執行妨害で逮捕する。
利根は署での笘篠の取り調べで「…俺はやっていない」と言い出す。それでも笘篠は2つの事件について聴取するが「知らない」の一点張り。上崎をここに連れてきてくれと言う利根。しかし現行犯ではないので在宅起訴になると笘篠が言うと、利根の表情が一変する。
「殺す気なんてない。確かにあの3人はけいさんの仇だ。だけど殺す手前で踏みとどまり、火をつけるだけでやめたんだ」
「嘘をつけ」
「俺は上崎を護ろうとしていたんだ」「出所して三雲と城之内が殺されたのをニュースで見た。次は上崎の番だと分かっていた。だから五代さんに頼んで居場所を調べて空港で待った。」
その時、別の刑事が飛び込んできて「上崎が姿を晦ませました。」と笘篠に耳打ちする。
利根が「上崎を見失ったんだろ。だからあれほど引っ張ってこいって言ったんだ」と言う。「空港に行ったのもこうならないように先手を打つつもりだった」と話す。
そして利根は上崎の居場所が分かると言うので笘篠と蓮田と一緒に捜査に行くことになった。
パトカーに乗り、利根の指示で塩釜のけいが住んでいた長屋に着いた。するとそこには見覚えのある車が止まっている。
利根が「誰かいるか」と声をかけると「助けて」と聞こえた。笘篠がドアを開け、「警察だ。動くな」というのと同時に「入るな。入ったら上崎を殺す」と男が言った。刃物を持っていて、その声はまさしくあの男のものだった。
利根が「カンちゃん俺だ。勝久だ。」と言うと男ははっとする。笘篠は蓮田に応援を呼ぶ指示をする。利根は笘篠に、「あれは弟分だったカンちゃんだ。間違いない」と言った。
そして、「カンちゃんは俺よりけいさんを慕っていた。出所してカンちゃんを探したかったが、苗字も変わっていて探しようがなかった。まごまごしているうちに2人が殺された。だからカンちゃんがやったと気づいた。そして上崎を殺させないために空港に行った」と話した。そして自分に説得させてほしいと頼む。笘篠はそれを了承し、利根がドアの前に立つ。
「カンちゃん俺だ久ぶりだな」
「勝久兄ちゃん」
「上崎はまだ無事か?」
「まだ生きている。よかったら兄ちゃんも手伝ってくれるかな。こいつを殺したらけいさんの復讐が終わる」
「やめておく」
「それにしてもずいぶん早かったね。あと2年は刑務所じゃなかったの?」
「お前を止めるために早く出所したんだよ。カンちゃんもうやめろ。お前のやり方は3人がけいさんにした仕打ちと同じなんだ。寝室の方にふすまがあるだろ?そこにけいさんの遺言がある。読んでみろ」
「勝久兄ちゃんあったよけいさんの字だ」「いい子でいなさい。人に迷惑をかけないように…」
「お前なら守れるよな?カンちゃん!」
次の瞬間、上崎の叫び声が聞こえ、SITが突入した。
「自分で刺し殺すのは無理だった。一発殴るのが精いっぱいでさ。やっぱりヘタレだよ。昔から変わってない」泣き笑いの顔でそう言って円山菅生がその場にくずおれた。
笘篠は「あなたが福祉保険事務所に就職したのは復讐のためか?」
「違いますよ。採用された任地にたまたま三雲がいただけの話です。善人と慕われていましたが、以前のままだったんです。私がどうしても生活保護が必要と判断した申請を予算不足の一言で却下することがよくありました。三雲は申請者1人1人の顔を見ていませんでした。それが復讐を実行しようとしたきっかけです。でもわたしは二度とけいさんみたいな犠牲者を作りたくなかった。それは信じてください。」
笘篠は円山の仕事ぶりを見ていたので信じないわけにはいかなかった。
「俺ができることはありますか」と利根が笘篠に聞くと、「ゆっくり考えろ。裁判までまだ時間はある」と利根の肩に手を置いた。
円山は2件の殺人を自白し、証拠も見つかった。
利根は公務執行妨害を不起訴になり、櫛谷の力をかり弁護士を探し始めた。
笘篠は官舎に戻り、テーブルの前に腰を下ろし、フォトスタンドの妻と息子に向き合う。
円山は護れなかった遠島けいのために復讐を実行した。
利根は弟分の円山を護るために8年の刑務所生活を過ごした。
遠島けいは飢えで薄れていく意識の中、最期まで自分の息子たちを護ろうとした。
俺はお前たちに何がしてやれたのだろうか。これから先何をしてやれるのだろうか。
話しかけてみても写真の中の2人は静かに笑うだけだった。

予想外の結末でまさに「魂が泣く」

ここまでネタバレを書いてきましたが、さすが「どんで返しの帝王」中山さんの小説です。
利根が上崎を調査してるあたりから、そういえばカンちゃんはどうしてるんだろう?と思い始め、カンちゃん犯人かな?とは思っていましたが、まさかあの円山菅生とは…。
発覚した瞬間、びっくりして、思わず口を手で押さえました。
ネットでは、映画のキャッチフレーズ通り「魂が泣く」、「涙が止まらず」という感想が多かったです。筆者も、けいさんが亡くなった後の息子たちの様子で泣き、カンちゃんと利根の再会で泣きました。利根が犯人ではないことは予想していましたが、まさかカンちゃんが犯人とは…
予想外の切ない結末でした。
カンちゃんが上崎を殺さなかったこと。そして利根はカンちゃんの味方であることが救いなのかなと思いました。
映画ではどういう結末なのかみなさんも確かめましょう!

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