【ネタバレあり】韓国映画のリメイク『見えない目撃者』のオリジナルとの違いと長所短所の考察

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(c)2019「見えない目撃者」フィルムパートナーズ (c)MoonWatcher and N.E.W.

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『見えない目撃者』は韓国映画『ブラインド』(2011年度作品/監督:アン・サンホ/主演:キム・ハヌル)のリメイク作品。中国リメイク作品『見えない目撃者』(2016年年度作品/監督:アン・サンフン/主演:ヤン・ミー)に続いて、日本版『見えない目撃者』が公開。出演は吉岡里帆。監督は『重力ピエロ』などの森淳一監督。

『見えない目撃者』の作品情報

監督:森淳一
脚本:藤井清美・森淳一
出演:吉岡里帆 高杉真宙 大倉孝二 浅香航大 酒向 芳 松大航也 國村 隼 渡辺大知 柳俊太郎 / 松田美由紀 田口トモロヲ

(2019年9月20日公開)

(c)2019「見えない目撃者」フィルムパートナーズ

『見えない目撃者』あらすじ

優秀な警察官として明るい未来が約束されていた浜中なつめ(吉岡里帆)は、自らハンドルを握って運転中に事故を起こし、自身の視力と同乗していた弟を失ってしまう。3年後、なつめは盲導犬パルとともに、失意の中で暮らしていた。ある日、彼女は夜道で、車とスケートボードに乗った男性の接触事故に遭遇し、その車の中から女性が助けを求める声を聞く。元警察官の直感で「女性は捕らえられている」と感じ、事件性があると判断したなつめは警察に届けるが、目が不自由な彼女の目撃情報は信じてもらえない。なつめは、ドライバーと会話を交わしたスケボー青年・国﨑春馬(高杉真宙)を探し出す。

同じ頃、若い女性が猟奇的に惨殺される連続殺人事件が起こっていた……。

(c)2019「見えない目撃者」フィルムパートナーズ (c)MoonWatcher and N.E.W.

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作品解説:目が見えない目撃者という一発アイデアの成功

中国、日本と続けてリメイクされた韓国映画『ブラインド』。日本版『見えない目撃者』のプロデューサー小出雅佐樹氏が韓国で『ブラインド』を観て「残酷なサスペンスの姿を借りたヒロインの人生克服の物語は、日本でも受け入れられると思った」と、リメイクの経緯を語っている。この映画の鍵は、目撃者が視覚障碍者であるという設定であり、タイトルの「見えない目撃者」というのがヒロインなつめの枷になっている。しかし、なつめは元・優秀な警察官であり、事件捜査に関する知識が備わっていたこと、そして目が不自由なかわりに、聴覚、嗅覚がすぐれており、ほんの小さな気配にも敏感。その力が犯人を追いつめていくこ彼女を助けてくれるのだ。

またもうひとりの目撃者である春馬は、やがてなつめの相棒となり、彼女の目となって支える存在だが、事故で失った弟とほぼ同世代。彼と二人三脚で事件を追いかける姿は、失った弟との伴走のようにも見える。春馬と事件を解決に導くことが、彼女自身の人生の克服へと繋がっている。

監禁された女性被害者に危険が迫り、命のカウントダウンが始まるというタイムリミットサスペンスへの変化も観客の恐怖心を刺激するなど、導入からサスペンスが上昇していく展開していく流れは見事。事件の全貌を表す猟奇的なシーンも臆さず、結果、R15+作品になったものの、攻めた演出が事件の凶悪さを物語っている。

(c)2019「見えない目撃者」フィルムパートナーズ (c)MoonWatcher and N.E.W. (c)2019「見えない目撃者」フィルムパートナーズ (c)MoonWatcher and N.E.W.

特徴:日本版リメイクにおける変更点とは

韓国と中国版は、ヒロインが乗車したタクシーの運転手が女性をひき逃げしたことが事件のきっかけになる。一方、日本版ではタクシーは登場せず、ヒロインは車の接触事故の目撃者である設定。犯人に関する演出にも大きな変更を与えており、韓国版、中国版は途中で犯人が判明するが、日本版は最後まで真犯人の正体を隠し、かつ、猟奇的な犯人が近くにいるという設定にしている。観客が推理する楽しみを作品に残しているのが特徴だ。また犯人の職業も異なり、本作は猟奇殺人に手を染めるきっかけとなる過去の事件も丁寧に描いている。そこから真犯人をあぶりだしていく演出もスムーズかつ犯行動機の不気味さを際立たせている。

弱点:後半サスペンスのご都合主義

良質なリメイク作品として上々の仕上がりの前半に比べ、後半から失速するのが惜しい。なつめと共に事件を捜査するベテラン刑事(田口トモロヲ)が、犯人のいることがわかっている屋敷に単独で突入するのは、隙だらけのスタンドプレーでありえない。なつめが屋敷に潜入してからも、犯人はなつめをかなり泳がせる。視覚障害の彼女の位置さえつかめればすぐに追いついて片づけられるはずなのに、なかなか手を下さないのはスリルを煽るためだとは思いつつも、さすがに不自然に感じる。中国版では、かつて妹を亡くした犯人が弟を亡くしたヒロインに対し、同志のような気持ちを一方的に抱いているため対峙するシーンが必然となったが、日本版ではその必要がない。後半のいちばんの見どころである、この一連のシーンにもうひと工夫あったらと思うと残念でならない。

(c)2019「見えない目撃者」フィルムパートナーズ (c)MoonWatcher and N.E.W. (c)2019「見えない目撃者」フィルムパートナーズ (c)MoonWatcher and N.E.W.

公開第一週目の興収ランキングは9位。弱点はあるものの、SNSでは絶賛レビューも多く、観客の満足度は高い作品。韓国リメイク作品の掘り出し物として記憶に残る映画になるかもしれない。

 

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