映画【すばらしき世界】の原案ネタバレ!“身分帳”に書かれることのない新たな人生が始まる!

ノンフィクション作家のレジェンド、佐木隆三が執筆した小説『身分帳』は、10年を超える刑期を終えた元殺人犯の男の、細く長い人生を描いた作品です。この小説にインスパイアを受けて製作された映画すばらしき世界』が2012年2月11日に公開されます。

本記事では、映画『すばらしき世界』の原案になった小説『身分帳』のあらすじをネタバレ(読んでしまっても本作の鑑賞に悪影響はないと思います……!)。

というのも映画版では、時代背景を原案の設定から30年以上現代に近づけるという大胆なアレンジがされています。1990年に描かれた『身分帳』を、現代の感覚で蘇らせた映画『すばらしき世界』は私たちに何を伝えてくれるのでしょうか。見どころも併せて紹介していきます!

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映画『すばらしき世界』の予告動画がこちら!

ジャンルヒューマン・ドラマ
公開日2021年2月11日
監督西川美和
主演役所広司

小説『身分帳』の作者・佐木隆三が描くノンフィクションといえば、膨大な調査に基づいた緻密な描写が特徴的。一方、本作『すばらしき世界』のメガホンを取った西川美和監督は映画『ゆれる』など、オリジナルシナリオにこだわって製作してきた監督です。

西川監督が原案小説『身分帳』を手に取った時「自分で探しても決して見つけられないテーマ」だと感じたそう。小説の中に登場するたくさんのエピソードを2時間に集約するのは、かなり難儀だったと語っています。

映画『すばらしき世界』のキャストを紹介

すばらしき世界キャスト

出典:映画.com

映画すばらしき世界』のあらすじ、『身分帳』の詳細を紹介する前に、本作のキャストを紹介していきます!

長い刑務所生活を経て、浦島太郎並に社会から取り残されたトラブルメーカーである主人公。彼の周りに集うのは、現代人のプロトタイプと言える仕事人間たち……。

役所広司/元・殺人犯の三上正夫

殺人犯三上

出典:映画.com

息をのむ演技」評された本作の主演、役所広司

2018年の主演映画『孤狼の血』三度目の日本アカデミー賞・最優秀主演男優賞受賞しました。元殺人犯・三上正夫役を演じるにあたって、「三上を掴めない」と悩みながらも原案と脚本を交互に読んでは主人公像を探し求めたとのこと。

本作の演技(特に表情のコントロール)はすでに海外メディアから高く評価されています。名優……という肩書がふさわしい俳優さんですよね。

“今”を描く 脇キャストに長澤まさみ等!

元殺人犯の三上を追うテレビ局のディレクターとプロデューサー役には仲野太賀長澤まさみ。このあたり、西川監督のオリジナル脚本です。

役所広司演じる“三上”がシャバに出て更生していく様子を番組にしようと試みる二人。他にも、橋爪功、六角精児などファンの多いバイプレイヤーがキャスティングされています。

映画『すばらしき世界』と原案『身分帳』の関係性

小説『身分帳』は、映画『すばらしき世界』のあくまでも「原案」というのが少々ややこしいかもしれません。わたしたちは漫画や小説「原作」の映画には馴染みがありますが……。

本作と原案小説の相違点、さらに共通点についても解説していきます!

まずは“身分帳”について知ろう

原案のタイトルである「身分帳」とは、刑務所に服役している囚人の刑務所内での履歴書のようなもの。所内での生活態度、行動、家族との関係まで余すことなく記載されている帳面です。現在はきっとデータで保管されているのでしょうね。ところが『身分帳』の時代は紙で記録でしたから、トラブルが多い囚人は特記事項が増えて物凄い厚い資料になるのだそうです。

原案小説の主人公の名前は「山川」(映画は三上)ですが、山川のように人生の多くの時間を刑務所で過ごした人間もまた、大変に分厚い身分帳を抱えて出所することになるのです。

原案小説の主人公は実在した

小説『復讐するは我にあり』で直木賞を受賞して一流作家として知られていた佐木隆三。彼のもとに送付されてきたのが、小説『身分帳』の主人公のモデルとなった人物、田村明義・元受刑者の身分帳の原本でした。

田村は度重なる服役で人生のほとんどの時間を刑務所で過ごした男です。生後間も無く、戦後の混乱で母とはぐれたことから孤児になり戸籍すらなく、12歳で初めて逮捕されてからというもの暴力団の構成員に。その後、再犯と服役を44歳まで繰り返した彼の身分帳は膨大なものでした。

「自分の人生を小説にしてほしい」と田村明義本人から送られてきた身分帳を読んだ佐木隆三は、これを文学作品に生まれ変わらせるべく、小説『身分帳』の執筆に取り掛かります。

映画版では“10年を超える刑期を終えた殺人犯”に

映画版『すばらしき世界』と小説版『身分帳』、さらには小説のモデルとなった田村明義本人の人生はそれぞれ少しづつ異なります。特に映画『すばらしき世界』では、時代設定を現代に近づけて大改編……。

映画版の主人公・三上は自身の身分帳(現代では個人台帳と呼ぶそうです)をテレビ局に送ります。自身の身分帳を作家に送った田村を彷彿する展開。小説家に送るのとテレビ局に送るのでは、その後の展開が大分変わりそうですよね。

映画、小説、現実に共通するのは“日常社会との対峙”をテーマにしている点です。罪を犯した男は本来、純粋な魂を持っていて、社会に馴染もうとしながら揉まれるうちに垢が落ちていきます。償ったとはいえ、犯した罪を抱えてどう生きるのか。葛藤を持つ男を社会は、日常を生きる人々はどのように迎えるのか。

時代設定を現代に近づけるほどより私たちにわかりやすくなります。そして、時代設定が変わっても変わらない人間の側面を垣間見ることができるのではないでしょうか。

映画『すばらしき世界』の原案『身分帳』のネタバレ!

キャストの紹介が済んだところで、いよいよ本作『すばらしき世界』の原案小説『身分帳』のストーリーをネタバレを含めながら紹介していきます!

刑務所に長期間服役していた男の余生は、数奇かそれとも穏やかか……。

身寄りのない元受刑者、上京する

殺人事件を起こし、実刑判決を受けた“山川一”(映画では三上正夫)は長い服役を終え、出所しました。ところが、山川は天涯孤独。服役前に籍が入っていた妻ともとっくに別れ、行くところがありませんでした。

身元引受人として名乗りをあげてくれたのが、東京で開業している山川の弁護士。この弁護士、身寄りのない人間の三本引受人になるのが趣味という、なんか変な男です。こうして九州で生まれ育った山川は、新生活を送るため未知の土地“東京”で新生活を始めることになったのでした。

ちなみに山川、映画版の三上にも共通することですが、主人公は子供時代から環境に恵まれず非行に走り、最終的に殺人事件を起こした人物です。ところがよくよく付き合うと、根の性格は純粋、生真面目で、案外几帳面という設定。「真面目な奴ほどグレるとヤバイ」というのはもはや通説ですが、主人公はまるっきりこのタイプに当てはまります。

意外と人に囲まれて楽しそうな元殺人犯

人を殺していますから「悪い奴」ではあるのですが、決して「嫌な奴」ではない山川。裏表のない性格から、上京した彼の周りには結構人が集まります。

特に山川が暮らすアパートに住む若者たちは山川を慕い、生活の手助けをするようになります。元はと言えば、共用トイレの使い方で喧嘩になったことから友情が芽生えたのですから「山川、エンジョイしてるな」という感じ。

商店の店主とも喧嘩ののちに仲良くなるなど、いわゆる真正面からぶつかって分かり合う生き方をする山川。彼のやり方は正直言っていにしえの方法で、現代ではあまり見かけません。

福祉相談員や元妻、映画版ではテレビ制作のスタッフなんかとこの調子で関わる主人公。お互いがどんな影響を与え合うのかが本作の最大の見どころと言えるでしょう。

孤独のうちに人生が消費されていく悲しみ

孤児として各地を転々とし、結果暴力団に入り、半グレから抜け出せずに人生の大半を過ごしてきた主人公。もちろん同じ時代を同じ境遇で生きて、罪を犯さなかった人間だっているはずです。いくら小説の主人公とはいえ「山川の犯罪は全て時代のせいである」と彼を正当化することはできません。

小説、映画通して伝えられるのは、主人公の人間としての正しさではないのです。“たった一人で生きてきた男の姿”。孤独のうちに人生が消費されていく悲しさ、焦り、諦め。こうして過ごすうちに、自分の人生が大体どんなもんなのか、分かってきてしまった頃に訪れた出所の機会。

「今度こそうまくやる」、作中で山川はこう言っています。できるのでしょうか。山川に殺された人間がいます。いくつかの犯罪で被害を被った人間も。しかし「今度こそうまくやってくれ……!」こう思ってしまうのはきっと、山川も私たちも与えられた人生に限りがあるからだと思うのです。

映画『すばらしき世界』の見どころまとめ

  • 昭和の原案『身分帳』が平成、令和版として表現される
  • 社会から隔絶されていた主人公が、人々にどんな影響をもたらすのか
  • 孤独を受け入れていた主人公が、社会復帰してどう変化するのか
  • 「掴みどころがない」主人公を演じ切った役所広司に注目
  • 「立てないくらい泣いた」というレビュー散見。そんなこと人生で何回もありませんよね。期待

映画『すばらしき世界』の結末はどうなる?

小説『身分帳』では終盤、山川が住むアパートがマンションに建て替えられることになります。これを機に山川は東京を離れ、出生地の九州・福岡に移ることを決意します。山川が孤児になった街、罪を犯した街。たとえ戻っても、東京で得たものを失うことはないはずです。ただ、本人はきっと不安だったことでしょう。

年齢的に、福岡が彼の“終の住処”になるかもしれません。淡々とひとりの男の人生を追った小説『身分帳』は、そこで幕を下ろします。

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