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映画【2001年宇宙の旅】のあらすじネタバレと考察!映画そのものが“モノリス”、ラストの意味も解説

2001年宇宙の旅ポスター

出典:IMBD

宇宙におけるヒトの位置を描く映画”。

1960年代後半に作られた映画2001年宇宙の旅』は、公開されて50年たった現在でも“不朽の傑作SF”であると評されています。スタンリー・キューブリック監督、脚本に参加したアーサー・C・クラーク、さらに多くの科学者による徹底した科学考証に基づいた鮮烈な映像については一般にもよく知られていますね。

一方で、ストーリーについては「哲学的すぎる」「難解」など、正直「つまらない」という感想を持つ方も結構いるのではないでしょうか。

本記事では、映画『2001年宇宙の旅』のあらすじをネタバレ付きでご紹介、さらに「観てもよくわからんかったぞ!」という方のために、後半では本作の解説をしていきます!

観る人のSF映画、ひいては宇宙そのものの捉え方を変えようとする映画、『2001年宇宙の旅』。心から面白い!と思えるようになりたい方は、どうぞこのままお読みください……!

映画『2001年宇宙の旅』の作品情報

2001年宇宙の旅主演キャスト

出典:IMBD

ジャンル SF映画
公開日 1968年4月11日
監督 スタンリー・キューブリック
キャスト キア・デュリア、ゲイリー・ロックウッド、ウィリアム・シルベスター

映画2001年宇宙の旅』は、スタンリー・キューブリック監督と小説家アーサ・C・クラークのアイデアを映像化した傑作SF。

400万年前の地球、人類創世の頃。謎の石碑“モノリス”に接触したことで、猿人は文明を得て劇的な進化を遂げました。本作の主な舞台は、そんな猿人の末裔・人類が月にが住めるほどに文明発展した2001年。

月の地中から未知の石碑が発掘され、さっそく調査が開始されます。この石碑、“モノリス”の謎を究明するため、人類初の有人木星探査が行われることに。ところが、探査機に同乗していた人工知能“HAL”が思わぬ反乱を起こしたことから、人類はこれまで未踏であった「宇宙の未知の領域」に足を踏み入れることになるのです……。

映画『2001年宇宙の旅』が難解な理由を考えてみる

短いあらすじをご覧になって「面白そうじゃん!」と思われた方、多くいるのではと思います。ところが鑑賞しているうちに、大変眠くなる。これは冒頭からの30分以上、“人類の夜明け”と題した類人猿のあれこれが延々と流されるのも一因ではないかと思います。

しばらく類人猿がモノリスを触ったり、道具を使うのを覚えたり、同類同士バトったりしている様子を「CGもない時代にすげえなあ」なんて、観ているじゃないですか。するとしだいに朦朧としてきて「あれ、今自分何を観てるんだっけ」と……。

映画2001年宇宙の旅』にナレーションが無いことについては、公開当時も賛否が分かれました。脚本に携わったアーサー・C・クラークは本作の難解な内容を観る人に伝えるため、ナレーションを用意していたのですが、監督が使用を拒否。「せっかくの未知の世界との遭遇が、陳腐なものになる」と、一切ナレーションを入れずに映画を公開したのです。

面白いSFを提供してもらう、という娯楽的な鑑賞スタンスではなく「モノリスの存在の意味、人類と宇宙の関係性に一人一人が想いを馳せて欲しい」というのが監督の意図のようです。これは眠くなっても仕方ないかもしれません……。

映画『2001年宇宙の旅』のあらすじをネタバレ

2001年宇宙の旅モノリス

出典:IMBD

さて、本章からは映画2001年宇宙の旅』のあらすじを、ネタバレ付きで紹介していきます。


本作は「人類の夜明け」
「木星使節」「木星 そして無限の宇宙の彼方へ」の3パートからなります。難解と言いながらも意外とストーリー構成はシンプル。ネットに漂う解説を読みながら何度も観返すと、そのたびに発見があって面白いです。
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人類の夜明け

400万年前、ホモサピエンスの祖先である類人猿が、他の生物に混ざって生存競争を闘っていた時代。岩場で寝そべる猿たちの前に、突然黒い巨大な石板 “モノリス”が現れました。最初は威嚇していた猿たち、しかし少しずつ近づいていって、1匹、また1匹と恐る恐るモノリスに触れます。

やがて“月を見るもの”という名の猿が、動物の骨を道具として使うことに目覚めます。未知の創造物 “モノリス”に触れることで、猿からヒトになるための知能が授けられたのです。

今まで気紛れな狩りで空腹を満たしてきた猿たち。荒野で飢えに苦しんできた彼らは、骨でできた武器を使い大型の動物を倒せるようになりました。

“月を見るもの”一行の群れは、ある日水場をめぐって他の猿の群れと争いになります。そこで動物の骨を武器にして、敵のボスを殺害した“月を見るもの”。彼は勝利の喜びに骨を放り上げます。

この“骨”がカットつなぎで宇宙衛星にパッと変わります。本作における“人類の歴史の答え合わせ”を、ここまでで私たちは俯瞰したことになるのです。お疲れ様です!

舞台は変わって2001年、月に人類が居住可能になった時代。月のクレーター内部から謎の物体「TMA・1」、通称“モノリス”が発掘されます。アメリカ合衆国宇宙評議会のフロイド博士は、モノリスを調査するべく、月面基地に向かいます。

基地に着いたフロイド博士一行は、発掘現場でモノリスと対峙します。それぞれが恐る恐るモノリスに触れ、写真を撮るために皆ソロソロと横並びになります。太陽光がモノリスを照らした瞬間、突然耳をつんざくような音がその場にいた全員を襲います。

実はこの音、信号であり、400万年前にモノリスに触れた猿たちが、ついに月に到達するまでになったことを、遥か彼方の木星に知らせるセンサー音だったのです。

木星使節(JUPITER MISSION)

それから18か月後、木星への有人往還飛行のために作られた宇宙船“ディスカバリー号”は、宇宙空間にいました。乗っているのは船長・ボーマンと隊員・プール、さらに3人の科学者が冷凍睡眠で同乗しています。そしてもう一人、最先端の人工知能“HAL”も搭載されています。

もともと木星探査が任務でしたが、木星からの強力な電波を受信したことで、彼らの任務は「木星が発する電波の調査」に変更されたのです。

結構、世間話ができる人工知能“HAL”。HALはボーマンに「この探査計画に疑問を抱いている」と話します。話の最中、HALは船のアンテナ部品の故障を報告、しかしボーマンがアンテナを確認すると、故障は見つかりませんでした。

故障しているのはHALの方では……?ボーマンとプールはこっそりと話し合い、HALの思考システムを停止させようと決めたのでした。

プールが船外(宇宙空間)で作業中のことです。彼を目掛けて突然ポッドが衝突、着ていた宇宙服が破損してしまいます。さらに、冷凍睡眠の生命維持装置が勝手に切られ、本人も知らないうちに科学者は息を引き取ります。

「HALの思考装置を停止しよう」先のボーマンとプールの密談を読唇していたHALが反発し、乗組員の殺害を始めたのです。

船外に放り出されたプールの救助に向かうボーマン船長。プールの遺体を回収したものの、HALにより宇宙船を内側からロックされてしまいます。ポッドを爆破してエアロックに突入するボーマン船長。

プールの遺体を手放すことになりましたが、たった一人、生き残りました。これまで気の良いAIだったHAL。しかしいったん敵に回れば、船内の人間を皆殺しにすることなど造作もないことだったのです。

ボーマン船長は、AIの部品を取り外していきます。自分の命を守るため、HALの思考部を停止させなくてはなりません。「やめて、怖いよ」。HALは虚ろな口調で何度も繰り返し呟きます。ひとつ部品が外れるごとに知能を失っていくHAL。歌を歌い始めます。昔、習ったのだそうです。死の恐怖を紛らわせているのか、ボーマンに媚びているのか、歌うことが最後に残った能力だったのか……わからないほどゆっくりと、HALの声は止まりました。

ボーマン船長(人類)は、HAL(人工知能)を殺害したのです。

木星 そして無限の宇宙の彼方へ(JUPITER AND BEYOND THE INFINITE)

ボーマンがHALの機能を停止させた瞬間、木星到着後に搭乗員に公開される予定だったという動画メッセージが再生されます。画面の向こうで話すのは、フロイド博士。探査の真の目的、木星の電波の先にあると思われる“モノリス”の件が語られます。

混乱するボーマンを乗せたディスカヴァリー号は、木星の軌道に到達。船内でたった一人の目撃者となったボーマンは、そこで巨大モノリスを確認します。小型ポッドに乗り換えて、巨大モノリスに接近を試みるボーマン。すると、そこにあったはずのモノリスは突然姿を消します。代わりに現れたのは、光の濁流……!

ポッドごと光に飲み込まれたボーマンが見たのは、これまで人類の誰も見たことのない光景。それは、まぶたの裏で起きているただの幻覚のような、または遠い宇宙の姿のような……。

ここでボーマンが目撃したのは異次元の光景であり、宇宙の実体とも言える姿でした。

やがて光は消え、ボーマンは窓のない美しい部屋に居ました。宮廷のような内装の奇妙な空間で、ボーマンは年老いてゆく自分の姿を見ているのです。

老衰寸前、ベッドに横たわるボーマンがいます。彼の足元に現れたのは巨大な“モノリス”でした。ボーマンは床に伏したまま、モノリスに手を伸ばします。

老衰寸前の男から、胎児に姿を変えたボーマン。光に包まれています。次のカットで胎児は地球を見下ろします。何か思いを巡らせている……胎児の姿が映し出されて、エンドロールです。

映画『2001年宇宙の旅』の解説と考察

2001年宇宙の旅女性キャスト

出典:IMBD

ナレーションをあえて排除した映画版『2001年宇宙の旅』は、当時の世界情勢や小説版の解説がなければ理解するのが難解な作品。予備知識無しで鑑賞すると「なにかとても感動的なラストだな……」と、置いてけぼりになってしまう感が否めません。

本作を楽しむための予備知識として押さえておきたい情報は2つ、「映画製作当時の世界情勢」「謎の石板“モノリス”とは結局何だったのか」

さらに本作最大の謎とも言える、「膨大な制作費と最先端の映像技術を使ってまで、キューブリックがこの映画を撮った理由」を本章では考えていきたいと思います。

1960年代における“宇宙”とは?

まず、本作が公開された1960年代後半とは、いったいどんな時代だったのでしょう。

1968年といえば、アメリカとソ連の冷戦が“宇宙開発競争”という形で熾烈を極めていた時代です。「どちらの国が先に宇宙に人間を送るか」によって、世界の支配権が左右されると、当時は本気で考えられていました。

人類が初めて有人宇宙飛行に成功したのがソ連で、1961年。その後私たちがよく知る、アポロ11号の月面着陸が1969年ですから、映画『2001年宇宙の旅』の制作公開の時期はまさに宇宙開発競争のど真ん中にあたります

「宇宙に生き物っているのかな?」「人間って宇宙に住める?」「宇宙とは人間にとって一体何なのか」。今よりも遥かに宇宙について知られていなくて、今よりも遥かに人々が宇宙に興味を持っていた時代。満を持して公開された新思想が、映画『2001年宇宙の旅』なのです。

映画『2001年宇宙の旅』の結末とモノリスの意味

本作のあらすじを知るためには、アーサー・C・クラークの小説版『2001年宇宙の旅』を読んでみるのが最も近道。小説版では「モノリスから、人間を含む多くの種族が誕生した」と書かれています。

人類を超越した存在=スター・チャイルドへと進化を遂げたのだ。宇宙にいる多くの種族がそうして進化をしてきたように、人類もようやくその仲間入りをし、宇宙の一部になった。それが地球外生命体の目的だったのだ。
出典元:小説版『2001年宇宙の旅』

ボーマンが宇宙に浮かぶ胎児に変貌するラストシーンは、実際デカい胎児になったということではなく、ビジュアル表現。彼が精神のみの生命に進化したことを表しています。
そもそもモノリスとは、究極に進化した地球外生命体(人間にとっての神)が与えた“遺物”。モノリスに触れることで猿人はヒトに、2001年にはボーマンが、人類の先陣を切ってモノリスによる進化を遂げたのです。

ラストシーンの意味… 人類がさらに進化して肉体を手放し、精神のみの生命になった。

モノリスの正体… 宇宙の創造主(神)が、宇宙を生きる種族のために与えた進化アイテム。進化すべき時に生き物の前に現れる。

映画版はそこで物語が終了。しかし、エネルギー生命体になって宇宙を漂うボーマンの行末は、小説の続編でさらに語られています。四部作ですよ……!

なぜキューブリックは『2001年宇宙の旅』を作ったのかな……

最後、筆者が思うことを少し書いていきたいのですが……。

1960年代は、宇宙開発に莫大な費用をかけていたものの、“SF映画”となると子供向けのファンタジーものばかりでした。そんな時代に、徹底した化学考証をして、新たな撮影技法を産み出しながら制作された『2001年宇宙の旅』。

CG技術がありませんから、巨大なセットを作ったり、一方でミニチュアを駆使したり……。当時最先端の合成技法を使って、4年。俳優の出演シーンを撮り終えてから、4年の歳月をかけて宇宙空間を再現したというのです。

すると筆者がシンプルに思うのが「何でかな?」。なぜそこまでの労力を使い本作を制作したのかな、という疑問です。

“宇宙におけるヒトの位置を描く映画”。他のSF映画では、当然のように宇宙はファンタジー、人類が宇宙で最前線の存在として描かれます。そんな中、人類は発展途上の存在であると解釈した2001年宇宙の旅』。

宇宙は決して、人類にとって“新しい土地”などではなく、“母体”。取りあうものではなく、溶け込む対象であると……。序盤、宇宙ステーションでソ連の科学者たちと出会ったフロイド博士が「情報を渡すまい」と、バチバチ駆け引きをする場面がありました。

この秘密保持、陣取り合戦は、“旧人類の思考”。キューブリックにとって本作『2001年宇宙の旅』は、当時の人々に贈ろうとした“モノリス”だったのではないかな……なんて筆者は思うのです。

映画『2001年宇宙の旅』のストーリーまとめ

2001年宇宙の旅映像美

出典:IMBD

  • 400万年前、謎の石板“モノリス”に触れた猿人はヒトへと劇的な進化を遂げる。
  • 2001年、宇宙開発をするまでに発達した人類は、“モノリス”の謎を明かすため有人木星探査へ旅立つ。
  • 宇宙船を制御するAIの「HAL」が反乱を起こす。闘いの末、生き残ったのはボーマン船長(人類)。
  • ボーマン船長は木星で“モノリス”に遭遇する。そして人間の英知を超えた領域へ到達する。
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