映画『星の子』ネタバレ&本音レビュー!カルト教団の信者の子が信じるものとは

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(C)2020「星の子」製作委員会

芦田愛菜主演映画『星の子』は、幼い頃、カルト教団の奇跡の水に救われ、成長してきたヒロインが、宗教にのめりこむ両親、学校の先生や友達と交流しながら、自分の信じるもの、自分の幸福を見つめなおしていく物語。キャラクターに合わせて、ロングヘアをボブにカット。自身と同じ世代で生きる思春期の中学生を熱演した芦田愛菜の最新作をネタバレありの本音レビューします。

映画『星の子』とは

 芦田愛菜、6年ぶりの主演映画『星の子』は、芥川賞を受賞した今村夏子の同名原作を大森立嗣監督が演出した作品です。芦田愛菜演じるヒロインの両親役に永瀬正敏と原田知世、ほか岡田将生、高良健吾、黒木華など演技派が脇を締めています。カルト教団の両親に育てられた娘が思春期になったとき、彼女は何を思うのか、幸福とは何なのか。映画『星の子』から紐解いていきたいと思います。

『星の子』あらすじ

「星の子」

©2020「星の子」製作委員会

中学3年生の林ちひろ(芦田愛菜)は、生まれたばかりの頃、大変な虚弱体質で父(永瀬正敏)と母(原田知世)は、さまざまな療法を試していました。なかなかちひろの体調が整わず、悩んでいるとき「金星のめぐみ」という水に出会います。この水でちひろの体を洗うと、みるみるとちひろの体質が改善。両親はこの水を扱っている新興宗教の信者となり、信仰を深めていきます。
健康になったちひろはスクスク成長していきますが、彼女の家の中は教団のアイテムで埋め尽くされ、どんどん貧乏になっていきました。ちひろの姉まーちゃん(蒔田彩珠)は、変わってしまった両親に耐えかねて家出。親戚は「教団も水も偽物だ。目を覚ませ」と乗り込んできますが、両親の教団を信じる心は揺らぎません。また、親戚はちひろにも高校進学をきっかけに両親から離れて暮らすことを勧めますが、ちひろも首を縦に振りません。しかし、学校へやってきた新任教師の南先生(岡田将生)の一言が、ちひろの心をざわめかせるのです。

『星の子』ネタバレ本音レビュー

なぜ、人はカルト教団にハマるのか

「星の子」永瀬正敏と原田知世

©2020「星の子」製作委員会

第三者から見れば「インチキ」に見えてしまうカルト教団。でもそれを信じ、多くのお布施をして、信者として高みを目指す者もいるのです。この映画は冒頭から「なぜ、ちひろの両親はカルト教団の信者になったのか」という疑問の答えを見せてくれます。答えはとてもシンプル。娘の命を助けてくれたからです。
全身が湿疹で覆われた赤ちゃんの頃のちひろ。泣き叫ぶちひろの姿に両親はとても心を痛めていました。両親とちひろを救ってくれたのが「金星のめぐみ」という水。この水が本当に効果があったのかどうかはわかりません。でもその水で体を洗ったら、ちひろは本当に元気になったのです。娘の命を助けてくれた水を作り出した教団を、両親が信じてしまったのも仕方がないかもしれません。

観客と同じ目線で家族を見つめる長女

「星の子」姉妹

©2020「星の子」製作委員会

それまで、ちひろ一家はきれいな一軒家に暮らしていましたが、教団に依存するほどに貧しくなり、引っ越しをせざるをえなくなり、食べるものも質素になっていきます。でも貧しさを恥じることもなく、両親もちひろも笑顔で幸福そうです。ただ長女だけは、どうしても宗教になじめなかったのです。
彼女の目線はカルト教団とそれにハマった家族を第三者の目線で見ている観客に近い感情を持っています。「嘘に決まってる」「早く目覚めて」という気持ち。しかし、どんなに訴えても両親の気持ちはピクリとも動かない。これが洗脳というものかと思いつつ「娘を助けたのは、この教団の水」という事実が両親の胸に刻まれている限り、二人は教団を信じ続けるでしょう。そもそも、両親もちひろも不幸になったと思っていません。不幸だと思っているのは、それまでの満たされた毎日を奪われた長女だけなのです。

ちひろの切ない初恋

「星の子」芦田愛菜と岡田将生

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ちひろは新任の南先生に憧れの心を抱きます。大好きなエドワード・ファーロングの顔を描いていたけれど、南先生が現れてから、先生の顔を授業中に描くことが増えました。片思いを楽しんでいるちひろはとても可愛いです。
ある日、親友の卒業文集制作を手伝っているうちに下校が遅くなり、二人は南先生の車で送ってもらいます。ちひろの家に近づいたとき、近所の公園で両親が宗教の儀式をしていました。その姿を見た南先生は、彼らがちひろの両親とは知らず「不審者だ」「狂っている!」と全否定し、軽蔑のまなざしを向けました。先生のその言葉に深く傷ついたちひろ。大好きな先生に両親を狂人扱いされたちひろは、改めて、自分たちの信仰が第三者からどう見られているのかを知ることになります。そして追い打ちをかけるように、翌日、ちひろの信仰のことを知り、彼女を車で送ったと噂された南先生は授業中にキレて、ちひろを罵倒し、より深く傷つけるのです。

ちひろが信じていたものとは

「星の子」

©2020「星の子」製作委員会

信仰は自由です。何を信仰しようと他者があれこれ言う権利はありません。でもことカルト教団になると、どうしても詐欺まがいな印象をぬぐえず、人々は眉を顰めます。私もずっと「なんで信じてしまうんだろう」と思っていましたが、映画『星の子』を観て、そのきっかけを掴んだ気がしました。
彼らは信仰によって救われた。その瞬間から信仰は始まっていたのではないかと思います。本当に怪しい教団かもしれませんが、その宗教がどうであれ、ちひろの両親の信じる気持ちに嘘はないんだと思いました。だからちひろも信じた。正確には、教団を信じているのではなく、両親を信じているのです。

誰もが持っている幸福感

「星の子」芦田愛菜

©2020「星の子」製作委員会

幸福の形はひとそれぞれです。物質的に恵まれる幸福、好きな人と結ばれる幸福、家族と暮らす幸福、大きな夢を叶える幸福など、人の数ほど幸福はあるはず。その幸福が、信仰であってもいいはずだし、本人たちが幸福だと思っていることを他人が奪う権利はありません。その信仰で犯罪に加担するようなことがなければいい。
映画『星の子』は、自分にとって、偏見や独りよがりの思い込みを正してくれるような映画でした。また6年ぶりの主演映画で観た芦田愛菜の存在感と演技の確かさ! 天才子役と言われた彼女が、少女から女性へ変化していく時期に素晴らしい作品でスクリーンに復帰したことは、映画ファンにとっての幸福であるといってもいいかもしれません。

映画『星の子』情報

監督・脚本:大森立嗣(『日日是好日』)
原作:今村夏子『星の子』(朝日文庫/朝日新聞出版刊)
出演:芦田愛菜、永瀬正敏、原田知世、岡田将生、高良健吾、⿊⽊華、大友康平、蒔田彩珠、新音、赤澤巴菜乃、田村飛呂人、見上愛、粟野咲莉
製作幹事:ハピネット、ヨアケ 製作プロダクション:ヨアケ、ハーベストフィルム
配給:東京テアトル、ヨアケ

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『星の子』公式サイト

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