映画【ハドソン川の奇跡】実在の航空機事故は何故発生したのか?劇中では描かれなかった部分を解説!

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2016年に公開したクリント・イーストウッド監督による、実際に起きた航空機事故を描いた伝記映画『ハドソン川の奇跡』。
トム・ハンクスが奇跡の立役者となるパイロット、サリー・サレンバーガーを演じ、この航空機事故に関しての糾弾を受け葛藤する様を描いた作品。
そんな本作で描く、実在の航空機事故に関して解説していきます!

映画『ハドソン川の奇跡』に関して

日本では、2016年9月24日に劇場公開し、第40回日本アカデミー賞で外国作品賞を受賞した作品『ハドソン川の奇跡』。
クリント・イーストウッド監督作品で、主演はトム・ハンクス。
共演はアーロン・エッカート、『トゥルーマン・ショー』などのローラ・リニーなどが出演。
2009年1月15日に発生した、ハドソン川に旅客機が着水した実在の航空機事故を描いた作品。
映画制作の時点で、すでに航空機事故に関するドキュメンタリーなどが多く作られていたこともあり、本作では、その中心人物であるパイロットの葛藤を中心に描いています。
この出来事が奇跡と言われているのは、旅客機の墜落事故で死傷者がゼロであり、乗客155人全て助かったという奇跡のような航空機事故であるため。
その経緯を、ハリウッド映画の規模で、克明に再現していること。
これが高い評価を獲得しています。

映画『ハドソン川の奇跡』のあらすじ

サリー・サレンバーガー。
彼は、空軍上がりの旅客機のパイロット。
初めて操縦桿を握ったのは16歳という、40年を数えるベテラン。
そんなサリーは、2009年1月15日に起きてしまった、ハドソン川着水という航空機事故が起きた時のパイロット。
この事故の調査の過程で、世間では英雄視されるものの、調査機関からは、回避できたのでは…
というデータも出ていた。
サリーは、正しい判断のもと、ハドソン川着水を行なっていたのか…
自分の判断に、自信がなくなり始める…

映画『ハドソン川の奇跡』の解説

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この映画は、先にも挙げた通り、2009年1月15日に実際にニューヨークで発生したハドソン川に旅客機が不時着した航空機事故を題材にした映画です。
映画で高い評価を獲得したのは、英雄の裏側を描いたこと。
この航空機事故で、死傷者をゼロで免れたことで、英雄とされたパイロット、サリー・サレンバーガー操縦士。
世間では、英雄としてヒーロー扱いされます。
ニューヨークでここまで英雄視されていた理由は、訳があり、まずは2008年のリーマンショックで世界は大不景気と経済的破綻を迎え、いいニュースがありませんでした。
さらには、ニューヨークでは過去に飛行機が貿易センタービルに突っ込むという、世界でも最大の悲劇を招いたテロ事件があり、飛行機がらみではいいニュースが無かったのです。
それ以来の飛行機がらみでの大きなトピックとして、この”ハドソン川の奇跡”は多くの人たちからいいニュースとして捉えられていたのでした。
しかし、この映画ではその良い側面を描いたのではなく、英雄とされていたサリー・サレンバーガーの苦悩を題材にして、PTSDにもなり兼ねない、葛藤を描いていました。
パイロットという職業の大きな責任を問う、人の命を預かる仕事の大変さを描きだしていることで、高い評価を獲得している作品です。

USエアウェイズ1549便不時着水事故について

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ここからは、映画『ハドソン川の奇跡』が描いている”USエアウェイズ1549便不時着水事故”について紹介します。
映画では描ききれていない、事故の詳細を辿っていきましょう。

USエアウェイズ1549便

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これは国内線でした。
ニューヨーク・ラガーディア空港からノースカロライナ州へ行く国内線です。
ラガーディア空港は、マンハッタンのクイーンズに位置する空港で、主にアメリカ国内やカナダへの航行をメインとした空港。
なので、税関や検疫などの施設はない、国内線がベース。
機長はサリー・サレンバーガー、副操縦士は、ジェフリー・B・スカイルズ。
ちなみに、この2人はこの航行で、初めてコンビを組んでいた初対面だったとこのこと。
国内線ということもあり、客室乗務員も少なく、3名。
みんな50歳以上のベテラン。副操縦士のスカイルズは、一番若い乗務員でしたが、それでも49歳でした。
そんな彼らが取り仕切るUSエアウェイズ1549便は、午後3時26分にラガーディア空港から飛び立つのでした。

墜落の原因

USエアウェイズ1549便は、飛び立ってから間も無くしてバードストライクに遭います。
バードストライクとは、鳥と遭遇し、エンジンに巻き込んでしまうという事故です。
まだそこまで高度が上がり切らず、鳥が飛ぶ高さでは非常に危惧されているもの。
バードストライクで、両方のエンジンが停止し、機体は十分な高度が無いまま、ラガーディア空港へ引き返すか、その先にあるニュージャージー州の空港、テターボロ空港へ着陸するかの選択に迫られるのでした。
USエアウェイズ1549便の不運は、飛び立った直ぐにバードストライクが起きてしまったこと。
そして、状況確認する間も無く、その後の展開を予測しなくてはならなかったのです。

ハドソン川への着水

バードストライクが発生したUSエアウェイズ1549便は、十分な高度を保たぬまま、次の展開の判断が迫られます。
まず、操縦をしていたスカイルズ副操縦士から、サリー・サレンバーガー機長へと切り替わります。
両方のエンジンが止まったことにより機体の電源が落ちたので、サブ電源となるAPUを立ち上げようとします。
ちなみに、APUとは、Auxiliary Power Unitの略で正確には補助動力。
操縦を交代したスカイルズ副操縦士は、QRH(クイック・リファレンス・ハンドブック)で対応を図ります。
QRHとは、あらゆる対応の仕方が載った説明書のようなもの。
この行動に移るまで、おそらくバードストライク発生から1分も無い状況であり、この後にすぐ、管制塔へ連絡し、ラガーディア空港かティターボロへの着陸をするための判断を行おうとします。
まずは、ラガーディア空港へ引き返すために旋回。
しかし、高度が低く難しいため、高いビルが聳え立つニューヨークでの航行は非常に危険なものでした。
次なる対応は、ティターボロ空港。
現在の航行位置野崎にある空港です。
高度は低いもの、このまま進むことができれば、なんとか行ける距離にありました。
しかし、USエアウェイズ1549便はエンジンが動いていないため、ほぼ自由落下状態。
その結果、サレンバーガー機長はこのままハドソン川へと着水するという判断を決めるのでした。
担当した管制官は、当然耳を疑い大惨事になっていることを予想します。
しかし、早くからこの状況を判断したサレンバーガー機長のベテランの行動により、予想された状況よりも遥かにマシな状態でハドソン川へと着水したのでした。
これは幸運にも、旋回したことにより川の流れと同じ向きで着水できたことなどが挙げられており、もし川の流れと逆に着水してたら機体は大破していた可能性も挙げられていました。

救助

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着水は、川の流れと同じだったことに加え、サレンバーガー機長の腕によるものもありました。
着水の際に、期待を水面と同じように水平に保ったことなどから、予想していた大破を免れています。
しかし、着水後に直ぐに浸水が始まります。
この浸水は、本来ならばQRH(クイック・リファレンス・ハンドブック)にもその対応が書かれています。
もしスカイルズ副操縦士がそれに気が付いていれば、より時間が稼げていたことが明らかになりますが、そもそもこの着水の方法は、QRH(クイック・リファレンス・ハンドブック)では最後の方の項目だったため、わずかな時間しかなかったこの状況ではまず気づくことは困難であることが認められています。
事実、バードストライクから着水までの時間は、わずか208秒でした。
このわずかな時間で数百ページもあるQRH(クイック・リファレンス・ハンドブック)の最後の方の項目まで辿り着くのは不可能と言えるでしょう。
世間ではサレンバーガー機長の功績を讃えられていますが、その事実として、乗客155人全員が無事だったのは、他の乗務員、その155人の中でも勇敢に皆を助けるために動いたもの、すぐさま救助に駆けつけてくれた水上警備隊や警察、消防など彼らの尽力あってこそ。
その全ての街の人たちの助けがあったからこそである、とサレンバーガー機長は言っています。
こうして、USエアウェイズ1549便の墜落事故は、まさかの死傷者ゼロで155人全員が助かるという奇跡の出来事として、大きく讃えられているのです。
本来ならば、生きてる人がいるのも奇跡である飛行機墜落事故。
そんな事故で、死者が1人もいないという奇跡、これが2009年に発生した、USエアウェイズ1549便不時着水事故、”ハドソン川の奇跡”なのです。

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