映画『ダンシングホームレス』のあらすじ|密着したのは路上生活者のダンス集団が目指す”生きる舞”

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東京オリンピックを目前に控えた東京。数年前から街は改装され、ホームレスの追い出し政策にも俄然力が入っています。筆者は最近まで新宿に住んでおり、メキメキと綺麗になっていく街並みや減っていくホームレスの数を日々体感しながら過ごしていました。

街が綺麗になるのは、気持ちのいいものです。「街を綺麗にしよう」という試みでは、真っ先に排除される存在であるホームレス。そんな社会的に”掃除”される立場に置かれるホームレスたちによる「ダンスグループ」が存在します。

彼らの活動を追ったドキュメンタリー映画『ダンシングホームレス』が2020年3月に全国公開されることになりました。

本記事では、映画『ダンシングホームレス』のあらすじと、このドキュメンタリーの見どころについて紹介していきます!

映画『ダンシングホームレス』の概要

ホームレス経験者のみで構成されている、ダンスグループ「新人Hソケリッサ!」。日頃ホームレスを目にすることはあっても、話したことがあるという方はかなり少ないのではないでしょうか。彼らが何を考えて生きているのか、なぜホームレスをしているのかを私たちが知る機会は滅多にありません。もっと言ってしまうと「関心がない」という方も多いのでは。

しかし映画『ダンシングホームレス』は、どうやら綺麗にまとめたドキュメンタリーではない様子。ホームレスに”関心がない”方が観てこそ、心に一石が投じられる作品の予感が、プンプンしているのです……。

路上生活経験者によるダンス集団のドキュメンタリー

本作『ダンシングホームレス』では、グループのメンバーが実名、もちろん顔出しで出演しています。そして作品内では、彼らのバックグラウンド「なぜホームレスになったのか」が包み隠さず語られます。

それぞれ、家庭内DV、難病、挫折などの末にホームレスとして生きることにたどり着いた彼ら。「踊れるなら働けるでしょ」と、いま読者の半数くらいが思っているのではないでしょうか。

なにかと多様性の尊重が叫ばれる現代ですが、もっともっとシンプルに。自分が全く同じ状況に陥った経験がないのなら、その人を否定するのは一旦待った方がいいかもしれません。

実際「新人Hソケリッサ!」のメンバーたちにとっては、踊るという行為が社会と繋がるたった唯一の方法なのです。

映画『ダンシングホームレス』の作品情報

  • 公開:2020年3月7日
  • 監督:三浦渉
  • 出演:アオキ裕キ、横内真人、伊藤春夫、小磯松美、平川収一郎、渡邉芳治、西篤近、山下幸治
  • 上映時間:99分
  • 制作:東京ビデオセンター

映画『ダンシングホームレス』のあらすじ

新宿で路上生活をする西篤近さん。彼はかつてダンサーとして生計を立てたいという夢を追っていましたが、挫折した経緯があります。人間関係のトラブル、借金も膨らみ疲れ果てた先にあったのが”ホームレス生活”だったと言います。

自殺も考えていた彼が出会ったのが、路上生活経験者だけで構成されるダンスグループ「新人Hソケリッサ!」。

メンバーは、仕事からも家庭からも逃げてホームレスとなった小磯松美さん。メニエール病を患った横内真人さん。父親のDVから逃れるためにホームレスになった平川収一郎さん。

彼らの共通点は”全てを捨ててきた”ということ。

ダンス集団「新人Hソケリッサ!」とは?

「新人Hソケリッサ!」の主宰を務めているアオキ裕キさんは、過去に振付師の修行のためにアメリカに行き、そこで同時多発テロに遭遇しています。多くの人々の死を目の当たりにし、帰国後ソケリッサを立ち上げることになるのです。

ソケリッサ唯一のルールは「人に危害を加えない」こと。”生命を維持する”ことに重点を置いた、原始的な生活をするホームレスたちにしかできない肉体表現を引き出したい、そのためには彼らのあるがままを受け入れる必要があるという意図から生まれたこのルール。社会から弾かれたホームレスたちも、ソケリッサでのダンスを通じて生きがいを取り戻しつつあります。

新人Hソケリッサ!公式サイト

”持っている身を使い切る”表現に救われたホームレスたち

映画『ダンシングホームレス』では、ダンスを通して生きがいを取り戻すホームレスに密着しています。しかし彼ら生きる目的はできましたが、決して社会復帰していくわけではないんですね。そういう”イイハナシ”ではないようです。

「あと、持っているものは自分の体しかない」という状況において、どんな表現が生まれるのかという点にドキュメンタリーはフォーカスされているのです。

予告編では、あらゆることから逃げ続けたホームレスのひとりが「あと残された逃げ場は、死ぬこと」だと語っています。「その前に”持っている身を使い切る”」とも。

この言葉、理解できても”実感”できますか?筆者はできません。この状況に置かれた者からしか出てこない言葉だと思います。

映画『ダンシングホームレス』は”先入観を捨てて観る”

映画『ダンシングホームレス』は、鑑賞者の立場によって賛否が大きく分かれそうな映画だと感じます。鑑賞者が増えるほど、前述した通り「そのエネルギー、社会復帰に使うべき!」という声が聞こえてくる予感もします。

突然ですが筆者過去に、交際していた男性と街を歩いていた時、高架下に寝ているホームレスの傍を通ったことがありました。すると隣の彼は多分何も考えず「バカだからああなるんだ」と言ったんですね。
なんでしょう、身内がホームレスという訳でもないのに、ものすごく腹が立ったのを覚えています。そういう勝手なジャッジに、心臓をかきむしりたくなる方に本作は向いていると感じます。

映画『ダンシングホームレス』は、きっとジャッジしないドキュメンタリー。鑑賞後に、ソリケッサのダンサーたちから何を得られるのかを楽しみに、映画館に足を運んでみてはいかがでしょうか。

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